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人質、魔王様の秘書。2
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「いつまでも馬鹿な事言ってないで、お仕事お仕事!」
「自覚があるならやめなよ……」
「ふざけないと死んじゃう体質なんだ、僕」
へらへら~とサイファの口の端に締まりのない笑みが浮かんだ。
世界を三回滅ぼすことができる魔力を持った魔王の弱点:おふざけ禁止
は?
馬鹿馬鹿しすぎて二の句が継げなくなる。もう少し自分の立場というものをわかって欲しい。威厳プリーズ?
しなやかに片手を肩口まで上げると、サイファはパチンと指を鳴らした。
「≪姿を現せ≫」
背筋がゾゾゾッ……と泡立つ。墓地の横を通るときのような、第六感を逆撫でするような鳥肌だ。思わず震えて背中を丸めてしまう。
「やだ、なになに?」
「ご覧あれ!」
やたらと明るい声に顔をあげる。
役場のような棚がずらりと並んでいる。だだっ広いと思っていた部屋だが、書類がごっそり詰まった背の高い棚に囲まれていると、ちょっと息苦しい。
何が起こっているかわからずに放心。口が開いたまま、閉じない。
「じゃじゃーん。機密書類が多いから魔力で隠してるんだ。びっくりした?ふふふ、びっくりしたって顔してる」
「うん、びっくりした……すごーい!魔法!隠し扉とかじゃないんだ!」
久しぶりの魔法に思わずテンションが上がる。こういう文化ギャップはもっと見てみたい。
サイファは席を立ち、私の肩に手を置いた。
気安く触れるなよ……と睨みつけたが、ニコリと笑って横長の机に出来上がった書類の山を示された。紙の束がグラムじゃなくてキロくらいありそうな山だ。
「じゃ、我が麗しの秘書・レミィちゃんには、ここにある書類の仕分けお願いしようかな?」
「えっ?これっ?」
「四日分くらいかな。いつもはフェンに頼んでたんだけどね」
待って……!
フェンリルって、四天王第一側近で、執事で、その上秘書の仕事まで兼任していたのか?就任してから三年ずっと?
そりゃ本を読む時間もないし彼女もできないよ!自炊の気力もなくなりそうだし部屋も小ざっぱりするって!
わ、私が助けてあげないと……丈夫で要領がいいからなんとかなっているかもしれないけど、このまま酷使したら魔王様に過労で殺されちゃう……!
「一応聞くけど……魔王様は自分でやろうとは思わないの?」
「終わった書類の編纂は僕の仕事じゃないよ」
さも当然という顔。
私にはわかる。これは自分の仕事以外をやらないという意味ではない。もっと大きくて必要な仕事をやっているから、そういうことに時間や気力を割く必要はないと言っているのだ。進学のために村から都会へ出て行った町医者の長男がそういう調子で喋るやつだったからよくわかる。
王者としての教育を受けている……なんでも自分でやらなくちゃいけない庶民とは根本的に考え方が違う。生活観が違いすぎるから結婚は絶対に無理だな……。
「説明するね。端のマークと色ごとで地区が分かれてるんだ。その日ごとに横長のほうをステープラーでとめて、日付が若いほうを下にして順番に紙の箱に入れとくの。簡単でしょ?」
簡単だけど量が量。しかも区別されてる感じゼロ。マークと地区の説明はないから、自分で気がつけということだろう。
でも、私がここでやらねば!この山が全部フェンリルの負担になる!やってやろうじゃないか!
「余裕!」
「心強いね~。期待してるよ。ちゃんとできたらご褒美をあげようか」
「やらしい気がするからいらねぇ!」
サイファの「あはは」というおかしそうな笑いを聞き流し、私は書類の山と向かい合った。
「自覚があるならやめなよ……」
「ふざけないと死んじゃう体質なんだ、僕」
へらへら~とサイファの口の端に締まりのない笑みが浮かんだ。
世界を三回滅ぼすことができる魔力を持った魔王の弱点:おふざけ禁止
は?
馬鹿馬鹿しすぎて二の句が継げなくなる。もう少し自分の立場というものをわかって欲しい。威厳プリーズ?
しなやかに片手を肩口まで上げると、サイファはパチンと指を鳴らした。
「≪姿を現せ≫」
背筋がゾゾゾッ……と泡立つ。墓地の横を通るときのような、第六感を逆撫でするような鳥肌だ。思わず震えて背中を丸めてしまう。
「やだ、なになに?」
「ご覧あれ!」
やたらと明るい声に顔をあげる。
役場のような棚がずらりと並んでいる。だだっ広いと思っていた部屋だが、書類がごっそり詰まった背の高い棚に囲まれていると、ちょっと息苦しい。
何が起こっているかわからずに放心。口が開いたまま、閉じない。
「じゃじゃーん。機密書類が多いから魔力で隠してるんだ。びっくりした?ふふふ、びっくりしたって顔してる」
「うん、びっくりした……すごーい!魔法!隠し扉とかじゃないんだ!」
久しぶりの魔法に思わずテンションが上がる。こういう文化ギャップはもっと見てみたい。
サイファは席を立ち、私の肩に手を置いた。
気安く触れるなよ……と睨みつけたが、ニコリと笑って横長の机に出来上がった書類の山を示された。紙の束がグラムじゃなくてキロくらいありそうな山だ。
「じゃ、我が麗しの秘書・レミィちゃんには、ここにある書類の仕分けお願いしようかな?」
「えっ?これっ?」
「四日分くらいかな。いつもはフェンに頼んでたんだけどね」
待って……!
フェンリルって、四天王第一側近で、執事で、その上秘書の仕事まで兼任していたのか?就任してから三年ずっと?
そりゃ本を読む時間もないし彼女もできないよ!自炊の気力もなくなりそうだし部屋も小ざっぱりするって!
わ、私が助けてあげないと……丈夫で要領がいいからなんとかなっているかもしれないけど、このまま酷使したら魔王様に過労で殺されちゃう……!
「一応聞くけど……魔王様は自分でやろうとは思わないの?」
「終わった書類の編纂は僕の仕事じゃないよ」
さも当然という顔。
私にはわかる。これは自分の仕事以外をやらないという意味ではない。もっと大きくて必要な仕事をやっているから、そういうことに時間や気力を割く必要はないと言っているのだ。進学のために村から都会へ出て行った町医者の長男がそういう調子で喋るやつだったからよくわかる。
王者としての教育を受けている……なんでも自分でやらなくちゃいけない庶民とは根本的に考え方が違う。生活観が違いすぎるから結婚は絶対に無理だな……。
「説明するね。端のマークと色ごとで地区が分かれてるんだ。その日ごとに横長のほうをステープラーでとめて、日付が若いほうを下にして順番に紙の箱に入れとくの。簡単でしょ?」
簡単だけど量が量。しかも区別されてる感じゼロ。マークと地区の説明はないから、自分で気がつけということだろう。
でも、私がここでやらねば!この山が全部フェンリルの負担になる!やってやろうじゃないか!
「余裕!」
「心強いね~。期待してるよ。ちゃんとできたらご褒美をあげようか」
「やらしい気がするからいらねぇ!」
サイファの「あはは」というおかしそうな笑いを聞き流し、私は書類の山と向かい合った。
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