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人質、とても働いた。

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あまりにも一生懸命に仕事へ打ち込んだため、頭が萎れそうだ。いらない動揺も落ち着いた。

半分……は終わったかな。今日中には終わりそうだ。

糸電話のようなにょろにょろした蔦を引っ張る。シャッと壁へ吸い込まれていく。お話は終了みたいだ。


「話してる内容聞いてた?」

雑談のように尋ねられる。

試されている?どんな風に?聞いてはいけなかった?それとも、話の理解度?

……うーん。まあ聞いちゃったし、私が片付けている書類もそんな感じらしい。素直に言おう。

「聞こえてるとこは……反乱軍の鎮圧みたいな話?あんまりそういう話、よくわかんないんだけど……」

「下克上ってやつ。今までは魔物主義が主流だったからね、政権奪還を狙ってるわけだ」

「その気になれば魔界くらい一捻りなんじゃないの?」

「恐怖政治はやらないし、魔力も大っぴらにはしないから舐められてるんだよ」

就任三年目の若造だし、側近も同様だ。見た目はなよっとしているので倒せそうな気がしないでもない。

「あー」と頷く。まだ話は続くらしい。

「反対派の血筋の直系で一番偉い子……が僕の同級生なんだけどね。四天王の一人なんだよ。僕の次くらいに魔力が強いかな」

む。四天王の二人目。なんか話がややこしいな……。

「今は魔界の統治を任せているんだ。だいぶ落ち着いてきたみたいだよ」

「あと二人は?」

「一人は人間界の監視、もう一人は勇者のナビゲーター」

一人はフェンリルの幼なじみのゴーレム系女子か!こういうポストに女性がいるとは。人間界より億倍進んでる。

しかし、ほぼ身内も身内……学生がそのまま会社を興したような魔王軍だなぁ……。


「聞けばなんでも喋ってくれるね」

「それで不利になることはないって信じてるからね。僕は君を信じる、君も僕を信じる。OK?」

肩口くらいの位置に、拳。

ほほう。なかなか庶民的なことをなさる。

「冗談はOK、嘘はNOで」

私は拳に拳をコツンとぶつけた。


それからブランチを挟む。

この間の無愛想なメイドさんの姿が見当たらない。まさか……とは思いながら、放っておくことにした。

フェンリルはきびきびと三人分くらい働いている。外向きのクールな表情は一切崩れないが、私の側に来たとき「ん?」という顔をして皿を下げた。

察してしまった。何も言うまい。明日からお弁当持ってこよう。

それから、フェンリルとは事務的な会話以外をせず、というかしてもらえず、再び執務室で書類を仕訳した。


電話を受けるサイファの声がやや緊急そうな相づちを打った。

いつ、被害は、相手はどれくらい、という嫌な気分になるような言葉ばかりが手短に聞こえる。

「ごめん、ちょっと外に出てくるね。今日は上がりということで」

進捗の確認か、サイファは私の横から手元を確認してきた。

もうやめとこう。膝の上に手を置く。

「ん。だいぶ終わったよー」

「偉い!正直びっくりしてる」

頭を撫でられる。誉められているというか、たまにバカにされてる気はするな。

ナデ……ナデ……ナデ……長いんだけど?

「癒し効果あるね」

「はよ行けや」

「うん。フェンに連絡しておくから、来るまで開けないでね」

「ほいほい。気を付けてー」

「うん、ありがとう!」

何気なくぎゅっとされた。

背中をトントン、と叩かれる。

「……だらだらしない!」

流石に本日二度目は慣れた。もしかして男女関わらず親しい友達にベタベタするタイプなのでは?

かったるくて甘えられているのか知らないけど、肩を叩いて急かす。

「よし。じゃあ!」

まったく。何がよしなのか。

走らず、それでも少し急いだような大股でサイファは部屋を出ていった。
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