不遇職でVRMMO!~近接系魔法使いになってみた~(仮題)

存在感が消え過ぎた物体

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不遇職になってみた

第二話 森で実験をしまして

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俺が街を出て目にしたのはモンスターに蟻のように群がる人の大群だった。広大な草原で兎の様な見た目で角の生えたモンスターをプレイヤー達が全力追いかけている様子を見て、あぁやっぱりかと納得する。

それもそうだろう、ゲーム開始の途端に沢山の人がログインしてるんだし初めの狩場ではみんな早くレベルを上げたくて獲物の取り合いをするのは当然だ。

「ま、これなら森の方は人が少ないだろう」

俺は他のプレイヤーが争っているのを完全無視して街の壁近くに沿って歩いていく。

「確か佑の情報では壁に沿って歩けば角付近に森があるはず…」

奪い合いをしているプレイヤー達がだいぶ遠くに見えるくらいになった頃、周りに木々が増えていき、更に進んでいくと森と呼べる位密集している地帯へと辿り着いた。

「ふぅ、ここなら人目を気にせずに実験できるはずだ」

もし失敗とかしたら恥ずかしいので、周りを見渡して念入りに人が居ないか確認する。

ガサガサッ!

丁度真後ろから草を掻き分ける様な音が聞こえた。

「っ!」

即座に後ろに振り向く。すると茶色の毛並みが目の前まで飛びかかって来ていた。

「ガァ!」

「くっ!」

ギリギリで杖を前に出して爪を防ぎ、後ろに下がる。相手を見ると見た目が狼で表記されているモンスターネームはウルフ、レベルが5と記されていた。

「実験が始まってすらないのにタイミング悪いな!」

ウルフは距離をとったまま警戒しながらこちらを睨んでくる。
俺のレベルは1で相手は5、逃げようにもステータスの差であっという間に追いつかれるだろうし戦おうにも実験すらしてないので危険すぎる。でも、ここはやるしかない!

「仕方ない、ぶっつけ本番で試してやる!」

「ガァ!」

「いくぞ!」

ウルフが先程のように飛びかかってくるが、ギリギリで横に避けてカウンターとばかりに思い切り杖を叩き下ろす。
空中での回避不可の攻撃は、見事にウルフの頭へとクリーンヒットした。
弱点が頭だったのか、HPは三分の二まで一気に削れた。

「ギャ!」

「よし!」

反撃を喰らったウルフは追撃を警戒したのか即座に後ろに飛び退き体制を整える。これなら丁度いい。魔法を使って実験するつもりだったから使えるかやってみるか。

「我に力を・『ロックボール』」

不遇スキルの一つである【土魔法】の初期の魔法を唱える。この詠唱は本来は『土の精よ・我に力を・ロックボール』なのだが、俺は【詠唱短縮】のスキルを持っているので一節だけ唱えずに使う事が出来るのだ。
そして、俺の詠唱によって魔法が発動し、MPを消費して杖の先に青色の光が集まっていく。そして俺はここで一つある事をする。

【魔法付与】発動!

心の中で唱えてもスキルは発動すると聞いていたのでこれも実験してみる。
すると、杖の先に集まっていた青色の光は杖についている赤い宝石に吸収され、本来はバレーボール位の岩石を飛ばす魔法は発動されなかった。
どうやら成功のようだ。思わずニヤリと笑みを浮かべる。

「次は俺の番だ」

【跳躍】で前方への距離を詰め、ウルフを掬い上げる様に杖を振り上げる。
ウルフは一気に距離を詰められたのに驚いたままその攻撃を腹に受ける。HPは後半分程だがここまでは予想通り、ここであれを使う。

「ぶっ飛べ!」

俺は先程の【魔法付与】の効果を発動させる。

「ガァ!?」

するとウルフは杖先からにより上空にかち上げられ、HPは0になり、『overkill!』と言う表記と共にウルフは砕け散った。
すぐにポーンという効果音が二回鳴ったり、目の前に戦利品が表示されるが、今はそれどころじゃない。

「ははっ…やった」

【魔法付与】は魔法を一時的に武器に保管して好きなタイミングで発動できるスキル、これを殴った瞬間に発動する事で【魔法威力上昇】の効果によりゼロ距離での魔法威力が二倍となり強力な一撃となる。やはり俺の予想は外れてなかった。攻略サイトやジョブやスキル構成などを一つ残らず調べ尽くし、誰もしていなかった、誰も気づいてすらなかった、これこそが魔杖師の本当の戦い方。

「やっぱり、攻略サイトなんかクソだ」

これで俺はスタート地点に立てた。

「さぁ、不遇職でこの世界を楽しもう!」

ステータスを確認するとレベルは3になっていて、SPが10になっていた。ウルフを倒した事によってレベルが上がったのかそれならSPは前と同じように分配してと。


【ステータス】

ジョブ:魔杖師
レベル:3

HP   110/110
MP   310/310

STR   21
VIT     5
DEX   5
AGI    13
INT    21
MND 10

【スキル】
【杖Lv1】【魔力操作Lv1】【魔法威力上昇Lv1】【魔法付与Lv1】【詠唱短縮Lv1】【土魔法Lv1】【無魔法Lv1】【格闘Lv1】【投擲Lv1】【跳躍Lv1】【一撃回避Lv1】【生産の心得Lv1】

ふむ、HPとMPはレベルが上がるとそれぞれ上がりやすさは違うが上昇するんだな。

振り分けが終わったので次はウルフのドロップ品の確認をする。

「お、牙と皮か」

確か牙はアクセサリーを作るのに使え、皮は防具を作るのに使えるんだったか。でもまだ生産には手を出せないから集めて金策にするとしよう。

「よし、狩りの始まりだ!」

そして俺は森の更に奥へと走り出した。




◆◆◆◆◆◆◆


それから2時間、俺はプレイヤーが殆どいないほど奥へと足を踏み入れていた。敵も今ではレベルが10位のモンスターがうじゃうじゃと出てくるようになったが、俺のステータスもそれに負けないくらい強くなった。

【ステータス】

ジョブ:魔杖師
レベル:11

HP   150/150
MP   790/790

STR   37
VIT     5
DEX   5
AGI    21
INT    37
MND 10

【スキル】
【杖Lv5】【魔力操作Lv5】【魔法威力上昇Lv5】【魔法付与Lv5】【詠唱短縮Lv4】【土魔法Lv5】【無魔法Lv5】【格闘Lv3】【投擲Lv1】【跳躍Lv2】【一撃回避Lv1】【生産の心得Lv1】


初日なのに強くなりすぎた気もしなくないがまあいいだろう。そんなことより、実は【杖】と魔法スキル二つの三種で、新しくアーツというプログラムによって身体が勝手に動いて技を放つモノと、土魔法は『ロックランス』、無魔法は『ノックバック』という魔法を習得したのだ。

一つずつ説明するとまずは杖のアーツ。これは単純に『刺突』という、相手を突き刺すだけだった。
二つ目は『ロックランス』だが、槍の形をした岩を飛ばす魔法だったが、これは良かった。相手を上から叩きつけ、そこに槍をぶっ刺して止めをさせるのはスムーズに敵を倒せて処理の効率が上がった。
最後は『ノックバック』なのだが…これは一言で言うと神だった。何故かというと、この魔法は衝撃を前方に放って敵を吹き飛ばすというものなのだが、実はこれ、吹っ飛ばすだけでダメージは無いのだ。これを聞けば普通は距離を取るくらいにしか使えないと思うだろうけど俺は違った。使ってみるとこれは敵を軽々とマンションの5階程度まで吹き飛ばしたが、これを自分に向けて撃てばどうだろう?という訳で実験したのだが…

「はははっ!最・高!」

俺、空飛べる様になりました。え?初日から何やらかしてんだって?知るか!

「見ろ、人がゴミの様だ!」

今では豆粒位にしかみえないプレイヤーの大群を見ながら某大佐の真似をする。

「いや~、魔杖師万能すぎだろ!なんで不遇なんて言われるんだよこんちきしょー!」

『ノックバック』の魔法を詠唱しながら間間で愚痴を零す。

「吹き飛ばせ・『ノックバック』!」

ギュンと加速して更に高くまで飛んでいく。

「お、もう少しで雲に届くぞ!」

いつ間にかここまで来てたのかーと思いながら雲を超える為にもう一度魔法を発動する。

「吹き飛ばせ・『ノックバック』!」

シーン

「あ、あれ?」

なんで発動しない?

「もしや…」

MPゲージを見る。そこにはいつもなら青色のゲージが、魔力が無いという意味の黒色へと変わっていた。

「やべっ、うばばばばっ!?」

加速が無くなった事で俺は地面に向かって落下していく。

「あばばばっ、そうだっMPポーションだ!」

インベントリを開いてポーションを取り出そうとするがそこは殆どがドロップアイテムで埋まっていて、HPポーションはあるがMPポーションはなかった。

「あ、そういや使い切ったんだった」

これは死んだな。

「うごぉぉぉ!?」

高速で地面に近づいていき、思わず目を瞑る。そして、地面へと衝突し…

ドンッ!

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!?」

激痛に悲鳴を上げた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

「そうだ【一撃回避】のスキル取ってるんだったあぁぁぁぁ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!」

不意にガサゴソと音が聞こえる。痛いに悶える中目を向けると先程まで蹂躙していた触手が生えた花のモンスターがそこにはいた。いつもならただの経験値か脅威なのだが今の俺には救いに見えた。

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、殺してくれあぁ痛い痛い痛い!」

そして花のモンスターは俺に向かって触手を叩きつけて止めをさせた。


そして俺はイェロの街へと帰還した。

「はぁ、はぁ、はぁ…」

痛みは消えたのでとにかく息を整える。

「はぁ、やばい、あれはやばい」

このゲームにはある程度の痛覚があるって聞いてたこれは洒落にならん。【一撃回避】は確かに便利だ。でも耐えた時の痛さは半端じゃないからこそ、不遇スキルとなっているのだ。もう二度とあんな事にならない様に飛ぶ時はMP管理に気をつけないと。

「あちゃー、死んじまったからデスペナ入ってるなぁ」

HPとMPのゲージの方を見ると、HPゲージの横には骸骨マークのデスペナルティを表す状態異常表示があった。

「えーと、デスペナの効果は…うげっステータス低下50%が1時間か、後は1時間内のドロップアイテムが確率ロストか」

インベントリを開いて確認してみると、確かに100個位あった花のモンスターのドロップが80個位まで減っていた。ウルフのドロップは1時間以上前だったのでロストは無しだった。

「ま、別いいか、さっさと売って金にするか」

「おい待て」

いきなり肩を掴まれて歩き出そうとするのを無理矢理止められる。
嫌な予感しかしないが渋々と振り返る。
そこには男が3人、ニヤニヤとこちらをみていた。

「なんですか?」

「お前さぁ~、その装備って魔杖師とかいうクソジョブの初期装備だよなぁ?」

「それが何か?」

そういうと男達は突然大爆笑しだした。

「ぶはははっ、こいつ馬鹿だろ!」

「くくっ、そんなクソジョブで、他人迷惑になるって分かってねぇのか?」

「あんな初めの狩場で死に戻りしてるとか雑魚すぎんだろ!」

多少絡まれるのは覚悟してたがここまでとは…もういいや行こ。

「では、俺は行くとこがあるのでさようなら」

「おいおい、ちょっと待てよ」

また肩を掴んで止めてくる。流石にイライラしてきたぞ。

「はあ、要件があるならさっさと言ってくれませんかね?」

「あ?なんだその態度?」

「それを言いたいのはこっちなんですけど」

「なんだとぉ!?雑魚が調子に乗りやがって!」

そういうとチンピラ1(仮)はメニュー開いたかと思えば俺の目の前にウインドウが現れた。何々…PVPねぇ。

「これでてめぇにきっちり礼儀ってもんを教えてやるよ!」

「はぁ…」

こいつ馬鹿だ。ポチッとNOのボタンを押す。

「んなっ!てめぇなにしてやがる!」

「いや、俺行くとこがあるって言ってたのにPVPとか…馬鹿ですか?」

「それでも逃げるなんて卑怯だぞ!」

「卑怯ってそれ今デスペナ受けてる俺に言いますかね、普通」

周りを見ると、チンピラ1がぎゃーぎゃー騒いでた所為でいつの間にか人が集まっていた。

「うわー、デスペナ受けてる奴に卑怯とかブーメランだろww」

「これだから馬鹿は…」

「全部正論で返されててワロタ」

多くの人が俺の味方をしているのを見たチンピラ1は、どうやら諦めた様子でチッと舌打ちをして逃げ出した。

「てめー、次あったら覚悟しとけよ!」

「次絡んできたら迷惑行為で通報しますね」

にこやかにそう告げて俺も素早く人混みに紛れてその場から離脱した。
その後、ふらふらと街を歩き周りNPC達にモンスターの素材を売却出来る場所と防具や服が売っている場所はないかと聞くと、簡単に場所を教えてもらうことが出来た。

「えーと、ここか」

初めの位置から少し離れた場所にある二階位の大きさの木製の建物で、確かここはギルドと言ってクエストを受ける事も出来るって佑が言ってたな。
扉を開けると、まず最初にクエストカウンターと書かれている場所に長蛇の列を作ってるプレイヤーが目に入った。
周りを軽く見渡すと、プレイヤーが群がるカウンターと壁に貼り付けられたクエストボードという、クエストを見たり依頼すると受付NPCが勝手にはっつけておいて募集してくれる便利な板しかなかった。

設備は少ないけど俺が気にしなくてもいいか。
さっさと売って武器や身体を隠せるローブを買わないと。そう考えて10人程度しか並んでいない売却カウンターという売却専用のカウンターに並ぶ。たまに武器に視線を向けられるが気にせずに待ち続ける。

「次の方、どうぞー」

おっ、俺だな。受付のNPCを見ると、やはりここはファンタジーらしく金髪碧眼の美人さんだった。

「これを買い取って貰いたい」

そういってインベントリから選択した一気に物を出現させる。

「これはこれは…今日一番の量ですね」

「結構篭って頑張ったので」

「触手が厄介な事で有名なフラワーイーターの実もありますしお強いんですね、では少し時間がかかりますのでお待ち下さい」

「分かりました」

受付さんが奥へと大量の素材を持って行き戻ってくるのをのんびりと待つ。
それにしても、今日はなんか目立ってばっかな気がするな、今もあんな量の素材だして注目されてるし。

「お待たせしました」

「いえ、大丈夫です」

案外早かったけど助かった、長々とこんな視線を浴びるのは勘弁したいからな。

「では売却金額に移ります、まずウルフの素材ですが牙と皮がそれぞれ80個と100個、そしてフラワーイーターの実は40個でしたので合計4600エルとなりました」

そう言ってお金が入っているであろう袋を渡され、受け取ると自動でインベントリの所持金の欄に4600エルが加算されて5600エルとなった。

「ありがとうございます」

「またのご利用お待ちしております」

俺はここでも視線から逃れる為にさっさと外に出て、次の目的であるローブを買う為に服屋へと向かった。

「おぉ!」

俺は、普段着るようなお洒落な服から、戦闘に使うようなゴツい鎧まで取り揃えられた服屋さんを見て驚いた。
これならローブもあるはずだろう。

「おっ、あったあった」

ローブコーナーを見つけたので良さそうな物がないか端から端までじっくり探していく。

「うーん…」

全て見て見たが、俺が気になるようなローブはなかった。

「あれ、どうしましたー?」

「えっ!?」

後ろから突然声をかけられてびっくりしてしまった。
そこには、栗色の髪を後ろで纏めた眼鏡をつけた女性がいて、クスクスと笑ってこちらを見ていた。

「いきなり話しかけてすみません」

「いや、別にいいですけど…何か用ですか?」

「なにやら悩んでいる様子だったので気になっただけですよー、私はここの店主なので要望を言って頂いたら合いそうな物を探す事も出来ると思いますよ?」

「えっ、店主なんですか!?」

「そうですよー」

つまりこの人NPCか…全く分からなかった。

「じゃあ、それなら…」

取り敢えず、全身を隠せて動きやすいローブが欲しいと伝えると「ふむふむ、それなら少しお待ちを~」という言葉と共に店の奥へと入っていき、すぐに戻ってきた。

「はい、これはどうかな?」

そう言って俺にローブを渡してくれた。
それは紺色でなんの装飾もなく地味で、俺の要望通り全身を隠せてローブ自体も軽くて動きやすく、更にはステータスを上昇させる効果も付いていた。

名前  影のローブ
効果
【AGI+5】【認識阻害】

「これは…」

「どう、見た目は地味だけど私の自信作なんだよー」

「これの値段は?」

「今なら特別4000エル!」

これは恐らく、いや絶対お買い得だろうし気に入ったから買うしかない!

「買います!」

「まいどありー♪」

お金を渡して早速装備してみる。うん、サイズも自動で調整されるようでピッタリだ。

「うんうん、似合ってるよ!」

「こんな良い物買わせてもらってありがとうございます!」

「そういえば自己紹介がまだだったね、私はエリー、修理とかも出来るからまた来てね!」

「俺はシンっていいます、ボロボロになった時はまた来ますねエリーさん」

そう言って俺は服屋さんを後にした。
目的は全部達成したし、時間もいつの間にか6時になってるし今日はここまでかな。
俺はログアウトして、現実へと戻っていった。
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