改造空母機動艦隊

蒼 飛雲

文字の大きさ
6 / 67
マーシャル沖海戦

第6話 太平洋艦隊来襲

しおりを挟む
 「太平洋艦隊、真珠湾ヨリ出撃セリ」

 オアフ島沖で哨戒任務にあたっている伊号潜水艦からの一報に、第一艦隊と第一航空艦隊はただちに抜錨、舳先を南東に向けて進撃を開始した。
 陣形は第一艦隊を先頭とし、その後方五〇浬に一航艦が位置している。
 機動部隊の前に水上打撃部隊を置く、一般的な配置だ。

 第一艦隊は六隻の戦艦を主力とし、それらに八隻の巡洋艦と一六隻の駆逐艦が付き従う。
 第一艦隊には「龍驤」ならびに「龍鳳」からなる第四航空戦隊があった。
 しかし、この二隻だけでは太平洋艦隊の空母に対抗することは困難だ。
 そこで、南方作戦に従事している第二艦隊から「千歳」と「千代田」それに「瑞穂」からなる第五航空戦隊を臨時編入することで航空戦力の厚みを増している。

 一航艦のほうは三個航空戦隊、合わせて六隻の空母を基幹としている。
 第一航空戦隊は「赤城」と「加賀」、第二航空戦隊は「蒼龍」と「飛龍」、そして第三航空戦隊は「瑞鳳」と「祥鳳」から成る。
 また、これら空母を守るための戦力として、三隻の巡洋艦とそれに一二隻の駆逐艦が配備されている。

 そして、それら空母に搭載される艦上機は零戦か九九艦爆、あるいは九七艦攻のいずれかであり、九六艦戦や九六艦爆それに九六艦攻といった旧式機は完全にその姿を消していた。
 艦上機のそのすべてを新鋭機で固めることが出来たのは飛行機屋の要望が通ったからだ。

 「空母は中古の改造艦で我慢するから、せめて艦上機だけでも新しいものにしてくれ」

 いかに飛行機屋に冷淡な鉄砲屋や水雷屋も、さすがにこの要求については無下にすることが出来なかった。
 中古艦に旧式機というのは、あまりにも哀れ過ぎたからだ。





 「太平洋艦隊はどこに現れるだろうか」

 「まずマーシャルとみて間違いないでしょう」

 一航艦司令長官を務める南雲中将の小さなつぶやきに、参謀長の草鹿少将が律儀に返答する。
 マーシャルは大艦隊の泊地として好適であり、さらに飛行場適地がいくつもある。
 フィリピン救援の足がかりとするには絶好のロケーションだ。

 「敵の戦力構成について、何か続報は入っているか」

 自身のつぶやきを聞かれてしまった羞恥の念を振り切るために、南雲長官は話題を少しばかり旋回させる。

 「今のところ、新しい情報は入ってきておりません」

 南雲長官の問いかけに、首席参謀の大石中佐が打てば響くかのごとく即答する。
 大石中佐に向けて小さく頷きつつ、南雲長官は出撃時点においてレクチャーを受けた敵の戦力予想の記憶を脳裏から引っ張り出す。
 太平洋艦隊の戦力は戦艦が八乃至九隻それに空母が四乃至五隻で、他に十数隻の巡洋艦と三〇乃至四〇隻程度の駆逐艦がこれらに付き従っているものとみられていた。
 戦艦と巡洋艦それに駆逐艦といった水上打撃艦艇は太平洋艦隊が明らかに優勢と言えた。

 しかし、一方で空母のほうは日本側が勝っている。
 敵が最大で五隻なのに対して、こちらは一一隻もある。
 ただ、敵がすべて正規空母で固めているのに対し、こちらは一一隻のうちの七隻までが小型空母だ。
 それゆえに、艦上機の数については二倍ということはなく、せいぜい三割増し程度に考えておくべきだった。

 (それでも、空母が一一隻もあるというのは心強い。仮に洋上航空戦で半数余を無力化されたとしても、それでもなお五隻が残っている計算だ)

 これまでの図上演習において、空母は真っ先狙われる存在であり続け、そのことで撃破されるものが相次いだ。
 実戦でもそこは変わらないはずだ。
 そう考えている南雲長官の元に、通信参謀の小野少佐が息せき切って駆け寄ってくる。
 読み上げろとの意を込めた南雲長官の首肯に、小野少佐が居住まいを正し口を開く。

 「マーシャルの第六根拠地隊より緊急電です。我レ艦上機ノ空襲ヲ受ク。被害甚大、至急来援ヲ乞フ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

電子の帝国

Flight_kj
歴史・時代
少しだけ電子技術が早く技術が進歩した帝国はどのように戦うか 明治期の工業化が少し早く進展したおかげで、日本の電子技術や精密機械工業は順調に進歩した。世界規模の戦争に巻き込まれた日本は、そんな技術をもとにしてどんな戦いを繰り広げるのか? わずかに早くレーダーやコンピューターなどの電子機器が登場することにより、戦場の様相は大きく変わってゆく。

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

日英同盟不滅なり

竹本田重朗
歴史・時代
世界は二度目の世界大戦に突入した。ヒトラー率いるナチス・ドイツがフランス侵攻を開始する。同時にスターリン率いるコミンテルン・ソビエトは満州に侵入した。ヨーロッパから極東まで世界を炎に包まれる。悪逆非道のファシストと共産主義者に正義の鉄槌を下せ。今こそ日英同盟が島国の底力を見せつける時だ。 ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 以上をご理解の上でお読みください

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

処理中です...