改造空母機動艦隊

蒼 飛雲

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マーシャル沖海戦

第7話 マーシャル奇襲

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 部下たちの手際の良さにハルゼー提督はご機嫌だった。
 この日早朝、機動部隊を指揮するハルゼー提督は第一六任務部隊の空母「エンタープライズ」と「サラトガ」、それに第一七任務部隊の「ヨークタウン」ならびに「レキシントン」から第一次攻撃隊として三六機のF4Fワイルドキャット戦闘機とそれに七二機のSBDドーントレス急降下爆撃機を出撃させた。
 目的はマーシャルにある日本軍の航空基地を叩くことだった。

 奇襲は拍子抜けするほどに、それこそあっけなく成功した。
 日本側の警戒態勢は杜撰の一言だった。
 太平洋艦隊が来寇することは十分に予想できたはずだ。
 それにもかかわらず、上空警戒にあったのはわずかな数の固定脚の旧式戦闘機だけだった。
 しかし、それらも三六機のF4Fに袋叩きにされ、あっという間に全滅した。

 邪魔者がいなくなった後はSBDの独擅場だった。
 飛行場で翼を休めていた単発戦闘機や双発爆撃機などに爆弾を叩き込み、それらをことごとく粉砕していった。
 併せて滑走路や付帯施設にも深刻なダメージを与えている。

 一方で、こちらの被害はといえば、敵の旧式戦闘機との空中戦で二機のF4Fが被弾したほか、三機のSBDが地上からの対空砲火によって損傷しただけだ。
 しかし、幸いなことに全機が帰投に成功している。
 被弾した機体だが、二機のF4Fのほうは〇・三インチクラスと思われる非力な小口径機銃弾を食らっただけだったので、両機ともに修理を施したうえですぐに戦列復帰することが出来た。
 また、三機のSBDも再使用不能の判定を受けたものは一機だけで、残りの二機は修理を施したうえで使用が可能だった。

 味方の損害が僅少だったのはなによりだった。
 しかし、それゆえに疑問が残る。

 「ひょっとして、日本軍は我々がマーシャルに向かうとは考えていなかったのか?」

 「あるいは日本軍はレーダーを持っていなかったのかもしれません。それで我々の攻撃に対する対応が遅れた」

 ハルゼー提督の疑問に、航空参謀もまた困惑の色を隠せない。

 「近代戦をレーダー無しで戦おうって軍隊が存在するのか? それではどうやって敵機の来襲を察知すればいいんだ? 日本人はやたらと遠目でも利くのか? まあ未開の猿どもだから、そのようなことはあり得るのかもしれんが」

 「あるいは、提督のおっしゃる通りかもしれません。彼らはいまだに見張り所や聴音機、それに将兵らの目視に頼っていた。そう考えれば辻褄は合います」

 日本人を猿呼ばわりするハルゼー提督に対し、呆れにも似た感情を抱きながらも、しかしそのことはおくびにも出さず航空参謀は自身の考えを開陳する。

 「それでも人間の目や耳だけに頼りきるのは無謀だろう。昔と違って今は空の戦いも海の戦いも展開が早い」

 「だとすれば、敵のレーダーに何らかのトラブルがあったのかもしれません。我々のそれも故障は多いと聞きますから」

 レーダーは最新の技術であり、それゆえに思わぬ不具合もまた続出している。
 安定稼働を望めるといった段階にはまだ達していない。

 「まあ、そう考えるのが妥当か。いくら日本軍といえども、現代の海戦や航空戦をレーダー無しで戦えると思っているようなアホなど居ないはずだからな」

 そう言ってハルゼー提督は第二次攻撃隊の出撃を命令する。

 「すでに日本軍の飛行場は撃破しましたが」

 暗に他にどこを攻撃するつもりなのかという意を込めて航空参謀が疑問を呈する。

 「滑走路なんぞは建設重機があればあっという間に修復できる。念には念を入れておくべきだろう。それにせっかくの機会だ。ここですべての搭乗員に実戦を経験させておきたい。たとえ弱敵であったとしてもな。それより日本の艦隊の動きはどうなっている」

 「最新情報によれば早ければ明日の深夜、遅くとも明後日の早朝にはこの海域に到達するものとみられております」

 「それでは、今日は第二次攻撃で終わりだ。搭乗員以外も休める者は全員休ませろ。英気を養ったうえで日本艦隊との決戦に臨む」

 航空参謀に成すべきことを伝えたうえでハルゼー提督は己に気合を入れる。
 胸中で不適切極まりない言葉を叫ぶ。

 「キル・ジャップス!」
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