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第4話 孤独の淑女、再出発
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王太子侍女としての初日。
王城の朝は、静けさの中に規律と緊張が漂っていた。
長い回廊には夜明けの光が差し込み、磨き上げられた床に映るその輝きがまるで新しい道を示すようだった。
クロエ・ラングレーは深く息を吸い込み、自分の手のひらをそっと握る。
今日からここが、自分の新しい居場所になる。
城の侍女として働くことは、貴族の娘としては珍しい。
彼女の出自は周囲の話題にもなっていたが、それを恐れて立ち止まるようなクロエではなかった。
朝の支度を終えると、彼女は侍女長エリーヌの指導のもと、王太子の居住棟へと足を運んだ。
「これからのあなたの任務は、主に殿下の私室と執務室の整理、そして日々の生活補佐です。王家直属となるため、口外してはならぬ事柄も多いことを心得ておきなさい。」
エリーヌ侍女長の声は厳しくも落ち着いていた。年上の女性で、その眼差しには気品と威厳が宿っている。
「はい、承知しております。」
「また、殿下はとてもお優しい方ですが、お立場ゆえに距離を保つように。誤解を招く行動は慎みなさい。貴女の経歴は既に知られています。今こそ、誇りを持って自分を立てるのです。」
クロエは胸の奥にその言葉を刻んだ。
“誇りを持って、自分を立てる”――それは、まるで過去の傷を上塗りするように温かく響いた。
侍女長の案内で王太子の私室に入ると、初めて見るその空間に、クロエは思わず息を呑んだ。
白と藍を基調に整えられた部屋は、派手さはなくとも細部まで整っていて、主の几帳面さが感じられた。
窓辺には小さな花が活けられており、昨夜の雨露を含んだばかりのように瑞々しい香りが漂っている。
「美しい部屋……。」
思わず漏らした言葉に、背後から穏やかな声が返った。
「その言葉は褒め言葉として受け取ってよろしいでしょうか?」
驚いて振り向くと、そこに立っていたのは、藍の軍服を身にまとった王太子ノエル本人だった。
朝日の逆光を受け、彼の髪が金色に光を帯びて見える。
昨日は公務服ではなかったためか、その姿がより一層凜とした印象を与えた。
「の、殿下……。おはようございます。ご挨拶が遅れました。」
「いいや、そんなに畏まらないでください。昨日はあなたの試験官だったのだから、少し気まずいかもしれませんね。」
穏やかに微笑むその表情に、胸の奥がふわりと揺れる。
本来なら緊張すべき立場の相手なのに、どうしてだろう、彼と話すと空気が柔らかくなる。
「本日より王太子殿下の侍女として務めさせていただきます、クロエ・ラングレーです。どうぞよろしくお願いいたします。」
深く頭を下げると、ノエルはゆっくりと頷いた。
「こちらこそ頼りにしています、クロエ嬢。あの夜、あなたが見せた強さが忘れられません。どうかここでもあなたの力を惜しまず発揮してください。」
「……ありがとうございます。」
胸が熱くなる。
ほんの一言だけで、ここに立つ勇気が増す。
彼の“努力を認める言葉”は、誰よりも真実味があった。
ノエルが執務室へ向かう準備を整える間、クロエは部屋の整頓を進めた。
本棚や机上の整理、花の入れ替え、城の格式に合わせた優雅な所作。
目立たない仕事だが、ひとつひとつ丁寧に仕上げるその手つきには、伯爵令嬢として培った美的感覚がにじみ出ていた。
やがて侍女長も部屋を覗きに来て、小さく頷く。
「さすがね。王族付きとして相応しい。あなたならきっとすぐに慣れるでしょう。」
その言葉が密やかな励ましとなり、クロエは微笑んで答えた。
昼になると、城の中庭で侍女同士の顔合わせが行われた。
数名の侍女が輪を作り、談笑している。
「あなたがラーングレー家の……例の令嬢ね。」
その中の一人が、微笑を浮かべながらも探るように言った。
「“完璧すぎて婚約者に逃げられた”って話、ちょっと有名だったものだから。」
嫌味を含んだその声音に、周りの空気が少し張り詰めた。
だがクロエは静かに目を伏せ、穏やかに答えた。
「ええ、そうです。ですが今はただの侍女です。どうぞよろしくお願いします。」
短くも dignified(気品ある)その答えに、相手はそれ以上の言葉を失った。
その会話を遠くから見ていたマリアンヌがそっと近づいてくる。
「クロエ様、気にしないでくださいね。あの人は新しく来た人を試す癖があるんです。」
「大丈夫よ。少し慣れていますから。」
そう答えたクロエは微笑み、内心で少しだけ誇らしかった。かつては打ちひしがれて泣くことしかできなかった自分が、今こうして凜としていられる。
午後、再び王太子の私室に戻ると、ノエルが執務を終えたところだった。
「仕事にもだいぶ慣れましたか?」
「はい。学ばせていただくことが多く、身が引き締まります。」
「そうですか。……それは、あなたの努力があるからでしょうね。」
その言葉に、クロエは小さく笑う。
「努力を評価していただけるのは嬉しいものですね。」
「当然のことです。努力を否定する人ほど、自分の弱さを知らないものです。」
ノエルの静かな声が耳に残る。
その瞬間、胸の奥の古い傷がほんの少し癒えた気がした。
執務机の上に置かれた書類を整えていると、突然、窓の外がざわめいた。
「殿下! 大臣がお見えです。」
兵士の声が響き、ノエルはすぐに姿勢を正した。
「クロエ嬢、少し席を外してもらえますか。」
「はい。」
クロエは軽く会釈して部屋を出る。
廊下を歩いていると、雨上がりの光が差し込み、床にきらめきを作っていた。
外の庭では、先ほどまでの雨露を受けて白い花々がまぶしく咲き誇っている。
思わず足を止めて見惚れた。
花たちは、嵐を越えてもなお真っすぐ空を見上げていた。
「――まるで、貴女のようですね。」
背後から声がして、振り返るとそこにはまたノエルがいた。
公務が終わったばかりのようで、表情には少し疲れがあるが、その笑顔は柔らかい。
「雨が降っても、決して下を向かない花。昨日見た時から思っていましたが、クロエ嬢はきっとそういう方です。」
「……私は、ただの侍女ですわ。」
「それでも、侍女の中で光るものを持つ人は少ない。」
ノエルは少し沈黙を置き、それからふと顔を上げた。
「困ったことがあれば、遠慮なく言いなさい。私はあなたを助けたいと思う。」
「恐れ多いお言葉です。ですが殿下に迷惑をおかけしたくは……」
「それは違う。――助けることは迷惑ではなく、選んでしたいことなんです。」
心臓が小さく跳ねた。
温かい言葉が、まるで掌を差し伸べられたように伸びてくる。
クロエは一瞬だけ彼を見上げ、その瞳に映る自分を見つめ返した。
過ぎ去った婚約破棄の痛みも、冷たい言葉も、消えはしない。
けれど、そのすべてが今の自分を形づくっている。
そしてその上に、新しい何か――優しさ、希望、信頼が生まれつつある。
「……ありがとうございます、殿下。」
「いいえ。あなたのその強さに、私のほうが力をもらっている。」
夕刻、日が傾き、長い影が廊下を伸ばしていた。
クロエは最後の仕事としてノエルの部屋の燭台に灯をともした。
小さな炎が揺れ、室内を柔らかく照らす。
その光が彼の横顔を浮かび上がらせる。
美しさというよりも、どこか哀しみを含んだ静かな威厳。
彼もまた、孤独を抱えているのかもしれない――ふとそんな思いがよぎる。
ノエルが軽く頷く。
「今日一日、ご苦労様でした。あなたの仕事ぶりは見事でしたよ。」
「ありがとうございます。明日も精一杯努めます。」
そう言って頭を下げると、ノエルは穏やかな声で言った。
「明日も、いい日になりますよ。信じています。」
その優しい言葉が胸に残り、クロエの瞳に小さな灯がともる。
雨のあとに咲いた花のように、心が少しずつ息を吹き返していく。
部屋を出て静かな廊下を歩く彼女の足どりは昨日よりも確かで、軽かった。
孤独の淑女は、ついに自分の足で新しい朝を歩き始めていた。
続く
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長い回廊には夜明けの光が差し込み、磨き上げられた床に映るその輝きがまるで新しい道を示すようだった。
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今日からここが、自分の新しい居場所になる。
城の侍女として働くことは、貴族の娘としては珍しい。
彼女の出自は周囲の話題にもなっていたが、それを恐れて立ち止まるようなクロエではなかった。
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エリーヌ侍女長の声は厳しくも落ち着いていた。年上の女性で、その眼差しには気品と威厳が宿っている。
「はい、承知しております。」
「また、殿下はとてもお優しい方ですが、お立場ゆえに距離を保つように。誤解を招く行動は慎みなさい。貴女の経歴は既に知られています。今こそ、誇りを持って自分を立てるのです。」
クロエは胸の奥にその言葉を刻んだ。
“誇りを持って、自分を立てる”――それは、まるで過去の傷を上塗りするように温かく響いた。
侍女長の案内で王太子の私室に入ると、初めて見るその空間に、クロエは思わず息を呑んだ。
白と藍を基調に整えられた部屋は、派手さはなくとも細部まで整っていて、主の几帳面さが感じられた。
窓辺には小さな花が活けられており、昨夜の雨露を含んだばかりのように瑞々しい香りが漂っている。
「美しい部屋……。」
思わず漏らした言葉に、背後から穏やかな声が返った。
「その言葉は褒め言葉として受け取ってよろしいでしょうか?」
驚いて振り向くと、そこに立っていたのは、藍の軍服を身にまとった王太子ノエル本人だった。
朝日の逆光を受け、彼の髪が金色に光を帯びて見える。
昨日は公務服ではなかったためか、その姿がより一層凜とした印象を与えた。
「の、殿下……。おはようございます。ご挨拶が遅れました。」
「いいや、そんなに畏まらないでください。昨日はあなたの試験官だったのだから、少し気まずいかもしれませんね。」
穏やかに微笑むその表情に、胸の奥がふわりと揺れる。
本来なら緊張すべき立場の相手なのに、どうしてだろう、彼と話すと空気が柔らかくなる。
「本日より王太子殿下の侍女として務めさせていただきます、クロエ・ラングレーです。どうぞよろしくお願いいたします。」
深く頭を下げると、ノエルはゆっくりと頷いた。
「こちらこそ頼りにしています、クロエ嬢。あの夜、あなたが見せた強さが忘れられません。どうかここでもあなたの力を惜しまず発揮してください。」
「……ありがとうございます。」
胸が熱くなる。
ほんの一言だけで、ここに立つ勇気が増す。
彼の“努力を認める言葉”は、誰よりも真実味があった。
ノエルが執務室へ向かう準備を整える間、クロエは部屋の整頓を進めた。
本棚や机上の整理、花の入れ替え、城の格式に合わせた優雅な所作。
目立たない仕事だが、ひとつひとつ丁寧に仕上げるその手つきには、伯爵令嬢として培った美的感覚がにじみ出ていた。
やがて侍女長も部屋を覗きに来て、小さく頷く。
「さすがね。王族付きとして相応しい。あなたならきっとすぐに慣れるでしょう。」
その言葉が密やかな励ましとなり、クロエは微笑んで答えた。
昼になると、城の中庭で侍女同士の顔合わせが行われた。
数名の侍女が輪を作り、談笑している。
「あなたがラーングレー家の……例の令嬢ね。」
その中の一人が、微笑を浮かべながらも探るように言った。
「“完璧すぎて婚約者に逃げられた”って話、ちょっと有名だったものだから。」
嫌味を含んだその声音に、周りの空気が少し張り詰めた。
だがクロエは静かに目を伏せ、穏やかに答えた。
「ええ、そうです。ですが今はただの侍女です。どうぞよろしくお願いします。」
短くも dignified(気品ある)その答えに、相手はそれ以上の言葉を失った。
その会話を遠くから見ていたマリアンヌがそっと近づいてくる。
「クロエ様、気にしないでくださいね。あの人は新しく来た人を試す癖があるんです。」
「大丈夫よ。少し慣れていますから。」
そう答えたクロエは微笑み、内心で少しだけ誇らしかった。かつては打ちひしがれて泣くことしかできなかった自分が、今こうして凜としていられる。
午後、再び王太子の私室に戻ると、ノエルが執務を終えたところだった。
「仕事にもだいぶ慣れましたか?」
「はい。学ばせていただくことが多く、身が引き締まります。」
「そうですか。……それは、あなたの努力があるからでしょうね。」
その言葉に、クロエは小さく笑う。
「努力を評価していただけるのは嬉しいものですね。」
「当然のことです。努力を否定する人ほど、自分の弱さを知らないものです。」
ノエルの静かな声が耳に残る。
その瞬間、胸の奥の古い傷がほんの少し癒えた気がした。
執務机の上に置かれた書類を整えていると、突然、窓の外がざわめいた。
「殿下! 大臣がお見えです。」
兵士の声が響き、ノエルはすぐに姿勢を正した。
「クロエ嬢、少し席を外してもらえますか。」
「はい。」
クロエは軽く会釈して部屋を出る。
廊下を歩いていると、雨上がりの光が差し込み、床にきらめきを作っていた。
外の庭では、先ほどまでの雨露を受けて白い花々がまぶしく咲き誇っている。
思わず足を止めて見惚れた。
花たちは、嵐を越えてもなお真っすぐ空を見上げていた。
「――まるで、貴女のようですね。」
背後から声がして、振り返るとそこにはまたノエルがいた。
公務が終わったばかりのようで、表情には少し疲れがあるが、その笑顔は柔らかい。
「雨が降っても、決して下を向かない花。昨日見た時から思っていましたが、クロエ嬢はきっとそういう方です。」
「……私は、ただの侍女ですわ。」
「それでも、侍女の中で光るものを持つ人は少ない。」
ノエルは少し沈黙を置き、それからふと顔を上げた。
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「それは違う。――助けることは迷惑ではなく、選んでしたいことなんです。」
心臓が小さく跳ねた。
温かい言葉が、まるで掌を差し伸べられたように伸びてくる。
クロエは一瞬だけ彼を見上げ、その瞳に映る自分を見つめ返した。
過ぎ去った婚約破棄の痛みも、冷たい言葉も、消えはしない。
けれど、そのすべてが今の自分を形づくっている。
そしてその上に、新しい何か――優しさ、希望、信頼が生まれつつある。
「……ありがとうございます、殿下。」
「いいえ。あなたのその強さに、私のほうが力をもらっている。」
夕刻、日が傾き、長い影が廊下を伸ばしていた。
クロエは最後の仕事としてノエルの部屋の燭台に灯をともした。
小さな炎が揺れ、室内を柔らかく照らす。
その光が彼の横顔を浮かび上がらせる。
美しさというよりも、どこか哀しみを含んだ静かな威厳。
彼もまた、孤独を抱えているのかもしれない――ふとそんな思いがよぎる。
ノエルが軽く頷く。
「今日一日、ご苦労様でした。あなたの仕事ぶりは見事でしたよ。」
「ありがとうございます。明日も精一杯努めます。」
そう言って頭を下げると、ノエルは穏やかな声で言った。
「明日も、いい日になりますよ。信じています。」
その優しい言葉が胸に残り、クロエの瞳に小さな灯がともる。
雨のあとに咲いた花のように、心が少しずつ息を吹き返していく。
部屋を出て静かな廊下を歩く彼女の足どりは昨日よりも確かで、軽かった。
孤独の淑女は、ついに自分の足で新しい朝を歩き始めていた。
続く
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