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第15話 城の陰謀と貴族の影
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地上に戻ったとき、王城はすでに混乱の渦に飲まれていた。
宰相派の手の者が何名か潜り込み、各所で虚偽の命令書を広めているという。
「王太子殿下が謀反を企てた」「殿下は北方同盟へ王家の秘宝を流した」――。
嘘にしてはあまりに巧妙で、まるで本物のような印章が押されていた。
それこそが宰相の恐ろしさだった。
王太子の正体を知ったばかりのクロエは、その事実を心に刻みながら、息を切らせて走っていた。
手に持つ布は殴られた兵の血で赤く染まり、風がそれを乾かしていく。
「これ以上の犠牲は出せない……殿下を守らなければ。」
その一心で、彼女は王妃の部屋へ向かった。
途中ですれ違う侍女たちが不安げに囁いている。
「殿下が捕えられたって……」「まさかそんな、でも宰相府から通達が……」
その噂の速さに、クロエは歯を食いしばる。
「宰相の狙いは、殿下と王妃陛下を分断すること……」
それを防ぐためには一刻も早く王妃へ知らせるしかない。
廊下の角を曲がると、突然、鋭い声が響いた。
「止まれ! その侍女、宰相府より拘束命令が出ている!」
前方にいたのは、宰相直属の近衛兵たちだった。
十名ほど。逃げ道はない。
(やはり私まで標的に……)
クロエの胸を冷たい汗が伝う。
「王妃陛下の居所を告げよ! 貴様が王太子に与したことは分かっている!」
「……陛下に剣を向ける気ですの?」
「命令だ。」
「誇りを捨てた兵が誇りある陛下を傷つけるなど、この国の恥です。」
言葉を放った直後、兵が怒声とともに斬りかかってきた。
無意識に身をかわし、クロエは花瓶を掴んで投げる。
割れる音が響き、一瞬の隙に彼女は脇の小扉へ飛び込んだ。
そこは古い書庫だった。
棚に積み重なった文書の匂い。乾いた埃。
クロエはゆっくり息を整えるが、背中の壁を伝う足音が止まらない。
「……捕まれば終わりだ。」
奥へ進むと、壁の隙間に古い鉄扉が見える。
鍵穴の形が特殊だ。
学生時代、父が言っていた。「王城の南廊下には、かつての書簡保管庫があり、そこは外と地下道でつながっている」
――ここだ。
懐から小さな簪を取り出し、器用に鍵穴を回す。
金属が鈍く音を立て、扉が開く。
中は薄暗く、冷たい空気が流れ込んでいた。階段が地下へ伸びている。
「殿下もこの先へ――」
そう思った瞬間、扉の向こうで人影が動いた。
「誰だ!」
声が反射的に出た。が、相手も驚いたように顔を上げる。
そこにいたのは、リディアだった。
「お嬢様!」
「リディア……! どうしてあなたがこんな――」
「クロエ様、急がなければ! 宰相は陛下のお部屋にも向かわせています! 王妃陛下が捕らえられたら、本当にすべて終わりです!」
リディアの瞳には恐怖が浮かんでいた。
だがその握った拳には、震えの中に覚悟の光もあった。
「分かったわ。あなたは後ろを固めて。」
二人は短く頷き合い、階段を駆け下りた。
地下へ進むたびに、潮のような湿った空気が濃くなる。
耳の奥で、遠くの地鳴りのような音が響いていた。
「これは……戦い?」
クロエが呟くと、リディアが頷く。
「外では殿下が……宰相派の兵と対峙していると聞きました。」
「一人では危険すぎるわ。」
「けれど、あの方はきっと退かない。王家も、あなたも、守るために。」
階段を降り切ると、扉の向こうにわずかな明かりが見えた。
古い兵糧庫の奥、その隙間に小さな通路があり、外へと続いていた。
空気が動いている。出口は近い。
その時、背後から金属が鳴る。
「見つけたぞ!」
兵が入り口に現れたのだ。数にして五人。
リディアが身を挺して立ちはだかる。
「クロエ様、行ってください!」
「駄目です、あなたまで失えません!」
クロエが叫ぶその声を遮るように、リディアが微笑んだ。
「大丈夫。お嬢様は、あの方の隣に行く運命の人です。なら、守る価値があります。」
「リディア……お願い、死んではだめ。」
「生き抜きます。この国が正すべき場所に戻れるように。」
涙を堪え、クロエは走り出した。
耳の後ろで金属音と叫び声が混ざり、遠ざかる。
光の先へ飛び出すと、そこには荒れ果てた中庭が広がっていた。
地上の空は曇り、煙が立ち上る。
南門の方角からは黒い旗が掲げられている。宰相派の印。
「……王都を囲んでいる?」
信じがたい光景に目を見開く。
その時、背後から別の声が響いた。
「そこにいたか。」
ルシアンだった。
「クロエ、もう逃げられない。」
その言葉は、脅しではなく嘆きのように弱々しかった。
「どうして……あなたがここにいるの。」
「僕は宰相に呼ばれた。“クロエ・ラングレーを王家の間者として捕えよ”と命じられた。」
「つまり、あなたは宰相の手先になったのね。」
「違う! 僕は、君を救いたいんだ!」
クロエのまなざしが冷たく光る。
「その言葉、何度目かしら。救いたいなら、手を離すことから始めて。」
「君は分かっていない。宰相は、露見したら君を罪人に仕立て上げて処刑するつもりなんだ!」
「処刑?」
「すでに偽の証拠を作っている。殿下を誘惑して王権を奪おうとした“逆臣の女”として。」
クロエは息を飲んだ。
思い浮かぶのは、塔で見たノエルの瞳。
あの真摯な光がこんな虚言で汚されようとしている。
「私は殿下に仕えて、殿下を守る。それだけです。」
「わかっている! ……だからこそ君を助けたいんだ!」
ルシアンが手を伸ばす。だがクロエはその手を払いのけた。
「私に向けたときと違う、“本当の勇気”をあなたが持てたら、その時に話をしましょう。」
冷たい声が突き刺さる。ルシアンは何も言えず、その場に立ち尽くした。
クロエは背を向け、再び走り出す。
――殿下のもとへ。
王妃も、城も、すべてが揺らいでいる今、信じるべき道はひとつしかなかった。
そのころ、王城の前庭ではノエルが宰相派の兵を前に立っていた。
鎧越しに睨む宰相の目が、氷のように冷たい。
「殿下。貴方は王家の名のもとに、この国を危うくしておられる。」
「私ではない。お前たちが国を堕とそうとしているのだ。」
「道理など問わぬ。王命に背いた罪をここで問う。」
「王命? それを捏造した者の言葉をどうして信じられよう。」
ノエルの剣が光る。
兵が進み、風が巻き上がる。金属と叫びの音が混ざる中、
ノエルの背後から息を切らせた声が響いた。
「殿下!」
クロエだった。
「来たら駄目だと言ったろう!」
「置いて行かれるのが嫌でした!」
ノエルが思わず苦笑する。
「本当に君は……。」
だがその笑みの次の瞬間、宰相の指が上がった。
「撃て。」
放たれた矢が空を切る。
ノエルの腕が広がり、クロエを抱き込む。
風が鳴り、光が一瞬炸裂する。
矢が彼の肩を貫いた。
返り血がクロエの頬を染める。
「殿下ッ!」
ノエルは軽く笑った。
「大丈夫だ、掠っただけ……君が無事ならそれでいい。」
「そんなこと言わないでください!」
彼の血に染まった指を握る。
宰相はその様子を見て冷笑した。
「王太子の威厳も地に堕ちたな。女ひとり守るために、自ら王位を捨てるとは。」
ノエルは痛みに耐えながら顔を上げた。
「王位に価値があるのなら、それは守る者のために使うものだ。」
「美辞麗句を並べるな。」
宰相の合図で兵が再び構える。
クロエは叫んだ。
「やめて! 殿下を殺したら、この国は終わります!」
「黙れ、逆臣の女め。」
宰相が吐き捨てる。
ノエルが彼女の前に立ち、静かに言う。
「クロエ、君は逃げろ。」
「嫌です、殿下。」
「いいか、君まで傷つけさせない。」
「私も同じです。殿下に傷ついてほしくない。」
風の中で視線が絡み合う。その一瞬だけ、世界が静止した。
ノエルは微笑し、剣を構える。
「ならば――守りあう約束を果たそう。」
戦火が再び爆ぜ、王城の石畳が鳴り響く。
宰相との戦いは、今まさに始まった。
続く
宰相派の手の者が何名か潜り込み、各所で虚偽の命令書を広めているという。
「王太子殿下が謀反を企てた」「殿下は北方同盟へ王家の秘宝を流した」――。
嘘にしてはあまりに巧妙で、まるで本物のような印章が押されていた。
それこそが宰相の恐ろしさだった。
王太子の正体を知ったばかりのクロエは、その事実を心に刻みながら、息を切らせて走っていた。
手に持つ布は殴られた兵の血で赤く染まり、風がそれを乾かしていく。
「これ以上の犠牲は出せない……殿下を守らなければ。」
その一心で、彼女は王妃の部屋へ向かった。
途中ですれ違う侍女たちが不安げに囁いている。
「殿下が捕えられたって……」「まさかそんな、でも宰相府から通達が……」
その噂の速さに、クロエは歯を食いしばる。
「宰相の狙いは、殿下と王妃陛下を分断すること……」
それを防ぐためには一刻も早く王妃へ知らせるしかない。
廊下の角を曲がると、突然、鋭い声が響いた。
「止まれ! その侍女、宰相府より拘束命令が出ている!」
前方にいたのは、宰相直属の近衛兵たちだった。
十名ほど。逃げ道はない。
(やはり私まで標的に……)
クロエの胸を冷たい汗が伝う。
「王妃陛下の居所を告げよ! 貴様が王太子に与したことは分かっている!」
「……陛下に剣を向ける気ですの?」
「命令だ。」
「誇りを捨てた兵が誇りある陛下を傷つけるなど、この国の恥です。」
言葉を放った直後、兵が怒声とともに斬りかかってきた。
無意識に身をかわし、クロエは花瓶を掴んで投げる。
割れる音が響き、一瞬の隙に彼女は脇の小扉へ飛び込んだ。
そこは古い書庫だった。
棚に積み重なった文書の匂い。乾いた埃。
クロエはゆっくり息を整えるが、背中の壁を伝う足音が止まらない。
「……捕まれば終わりだ。」
奥へ進むと、壁の隙間に古い鉄扉が見える。
鍵穴の形が特殊だ。
学生時代、父が言っていた。「王城の南廊下には、かつての書簡保管庫があり、そこは外と地下道でつながっている」
――ここだ。
懐から小さな簪を取り出し、器用に鍵穴を回す。
金属が鈍く音を立て、扉が開く。
中は薄暗く、冷たい空気が流れ込んでいた。階段が地下へ伸びている。
「殿下もこの先へ――」
そう思った瞬間、扉の向こうで人影が動いた。
「誰だ!」
声が反射的に出た。が、相手も驚いたように顔を上げる。
そこにいたのは、リディアだった。
「お嬢様!」
「リディア……! どうしてあなたがこんな――」
「クロエ様、急がなければ! 宰相は陛下のお部屋にも向かわせています! 王妃陛下が捕らえられたら、本当にすべて終わりです!」
リディアの瞳には恐怖が浮かんでいた。
だがその握った拳には、震えの中に覚悟の光もあった。
「分かったわ。あなたは後ろを固めて。」
二人は短く頷き合い、階段を駆け下りた。
地下へ進むたびに、潮のような湿った空気が濃くなる。
耳の奥で、遠くの地鳴りのような音が響いていた。
「これは……戦い?」
クロエが呟くと、リディアが頷く。
「外では殿下が……宰相派の兵と対峙していると聞きました。」
「一人では危険すぎるわ。」
「けれど、あの方はきっと退かない。王家も、あなたも、守るために。」
階段を降り切ると、扉の向こうにわずかな明かりが見えた。
古い兵糧庫の奥、その隙間に小さな通路があり、外へと続いていた。
空気が動いている。出口は近い。
その時、背後から金属が鳴る。
「見つけたぞ!」
兵が入り口に現れたのだ。数にして五人。
リディアが身を挺して立ちはだかる。
「クロエ様、行ってください!」
「駄目です、あなたまで失えません!」
クロエが叫ぶその声を遮るように、リディアが微笑んだ。
「大丈夫。お嬢様は、あの方の隣に行く運命の人です。なら、守る価値があります。」
「リディア……お願い、死んではだめ。」
「生き抜きます。この国が正すべき場所に戻れるように。」
涙を堪え、クロエは走り出した。
耳の後ろで金属音と叫び声が混ざり、遠ざかる。
光の先へ飛び出すと、そこには荒れ果てた中庭が広がっていた。
地上の空は曇り、煙が立ち上る。
南門の方角からは黒い旗が掲げられている。宰相派の印。
「……王都を囲んでいる?」
信じがたい光景に目を見開く。
その時、背後から別の声が響いた。
「そこにいたか。」
ルシアンだった。
「クロエ、もう逃げられない。」
その言葉は、脅しではなく嘆きのように弱々しかった。
「どうして……あなたがここにいるの。」
「僕は宰相に呼ばれた。“クロエ・ラングレーを王家の間者として捕えよ”と命じられた。」
「つまり、あなたは宰相の手先になったのね。」
「違う! 僕は、君を救いたいんだ!」
クロエのまなざしが冷たく光る。
「その言葉、何度目かしら。救いたいなら、手を離すことから始めて。」
「君は分かっていない。宰相は、露見したら君を罪人に仕立て上げて処刑するつもりなんだ!」
「処刑?」
「すでに偽の証拠を作っている。殿下を誘惑して王権を奪おうとした“逆臣の女”として。」
クロエは息を飲んだ。
思い浮かぶのは、塔で見たノエルの瞳。
あの真摯な光がこんな虚言で汚されようとしている。
「私は殿下に仕えて、殿下を守る。それだけです。」
「わかっている! ……だからこそ君を助けたいんだ!」
ルシアンが手を伸ばす。だがクロエはその手を払いのけた。
「私に向けたときと違う、“本当の勇気”をあなたが持てたら、その時に話をしましょう。」
冷たい声が突き刺さる。ルシアンは何も言えず、その場に立ち尽くした。
クロエは背を向け、再び走り出す。
――殿下のもとへ。
王妃も、城も、すべてが揺らいでいる今、信じるべき道はひとつしかなかった。
そのころ、王城の前庭ではノエルが宰相派の兵を前に立っていた。
鎧越しに睨む宰相の目が、氷のように冷たい。
「殿下。貴方は王家の名のもとに、この国を危うくしておられる。」
「私ではない。お前たちが国を堕とそうとしているのだ。」
「道理など問わぬ。王命に背いた罪をここで問う。」
「王命? それを捏造した者の言葉をどうして信じられよう。」
ノエルの剣が光る。
兵が進み、風が巻き上がる。金属と叫びの音が混ざる中、
ノエルの背後から息を切らせた声が響いた。
「殿下!」
クロエだった。
「来たら駄目だと言ったろう!」
「置いて行かれるのが嫌でした!」
ノエルが思わず苦笑する。
「本当に君は……。」
だがその笑みの次の瞬間、宰相の指が上がった。
「撃て。」
放たれた矢が空を切る。
ノエルの腕が広がり、クロエを抱き込む。
風が鳴り、光が一瞬炸裂する。
矢が彼の肩を貫いた。
返り血がクロエの頬を染める。
「殿下ッ!」
ノエルは軽く笑った。
「大丈夫だ、掠っただけ……君が無事ならそれでいい。」
「そんなこと言わないでください!」
彼の血に染まった指を握る。
宰相はその様子を見て冷笑した。
「王太子の威厳も地に堕ちたな。女ひとり守るために、自ら王位を捨てるとは。」
ノエルは痛みに耐えながら顔を上げた。
「王位に価値があるのなら、それは守る者のために使うものだ。」
「美辞麗句を並べるな。」
宰相の合図で兵が再び構える。
クロエは叫んだ。
「やめて! 殿下を殺したら、この国は終わります!」
「黙れ、逆臣の女め。」
宰相が吐き捨てる。
ノエルが彼女の前に立ち、静かに言う。
「クロエ、君は逃げろ。」
「嫌です、殿下。」
「いいか、君まで傷つけさせない。」
「私も同じです。殿下に傷ついてほしくない。」
風の中で視線が絡み合う。その一瞬だけ、世界が静止した。
ノエルは微笑し、剣を構える。
「ならば――守りあう約束を果たそう。」
戦火が再び爆ぜ、王城の石畳が鳴り響く。
宰相との戦いは、今まさに始まった。
続く
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