26 / 30
第26話 彼女を守るための戦い
しおりを挟む
王位継承の儀から数日後、王城は新たな息吹に満ちていた。
だが、その祝福の空気の裏で、再び不穏が静かに蠢いていることを知る者は少なかった。
宰相派の残党が完全に消滅したわけではない。彼らは表舞台から姿を消したが、王政の影に潜み、いまだ牙を研ぎ続けていた。
新王ノエルは、そのことを誰よりも理解していた。
「腐敗は一夜では癒えない。だが、この国は生まれ変わろうとしている。」
静かな執務室で、彼は報告書を閉じて目を細めた。
朝の光が机に落ち、彼の金の髪を淡く照らす。
扉の向こうから足音が聞こえた。
「陛下、お呼びとのことでしたか。」
現れたクロエは、純白の侍従服を身に纏い、凛とした面持ちで礼を取った。
以前よりも堂々としていた。その姿はもはや、かつての侍女ではなく、王の隣に立つ真の伴侶そのものだった。
「クロエ、これを見てほしい。」
ノエルが差し出したのは、南境から届いた密書だった。
「また……内乱の兆しですか?」
「残党が武装して動き始めている。民を扇動し、王政を壊そうとしている者たちだ。」
クロエは唇を引き結んだ。
「平和が訪れたと思っていましたのに……。」
「だからこそ、平和を守る戦いが必要になる。」
ノエルはゆっくりと立ち上がり、クロエの肩に手を置いた。
「君を巻き込みたくはないが、共にいてくれるか。」
「もちろんです。殿下……いえ、陛下。私は貴方の誓いを見届けた一人です。最後まで傍に。」
ノエルは微笑んだが、その瞳には決意の影が湛えられていた。
「君が私を信じてくれるなら、もう何も恐れない。」
その夜、王城の作戦室では重臣たちが集まっていた。
「反乱軍は南境の山村に拠点を築いております」と将軍の報告が続く。
「指導者の名はまだ掴めておりませんが、封蝋に残る印は……フェルナンド家に極めて近いものです。」
その名が出た瞬間、室内が僅かにざわついた。
ルシアン。
彼の行方は、内乱を鎮めたのち消息を絶っていた。
ノエルは手を止め、目を閉じた。
「彼が……。」
クロエがその名を聞いた瞬間、胸の奥が痛んだ。だが、彼を責める気にはなれない。
あの戦いで最後まで父に抗い、自らの誇りを捨てて国を選んだ男――そんな彼が、再び剣を取るとは信じたくなかった。
「陛下、我らが動くべきか?」
「……私が自ら行く。」
「なんと陛下ご自ら!?」
周囲の驚きに、ノエルの声は揺らがなかった。
「王が敵の顔を知らず何を語る。私が行けば、民への演説にも説得にも意味が生まれる。」
クロエはその言葉に、一歩前へ進み出た。
「では、私も同行させてください。」
「だめだ。」即答に、空気が止まった。
「今回は危険が大きすぎる。君を危険にさらすことはできない。」
「陛下。」
クロエの瞳は静かな炎を宿していた。
「私は侍女でした。そして陛下と共に多くを見て、学びました。矢も恐怖も超えてここに立ったのです。――『共に歩む』という約束、覚えておいででしょう。」
言葉が、ノエルの胸を突く。
沈黙ののち、ノエルは静かにうなずいた。
「分かった。ただし、必ず私の傍を離れるな。」
「はい。」
数日後。
王と彼の近衛、そしてクロエを乗せた隊が南境へ出発した。
冬の名残りが残る山を越え、村々を抜けるたび、人々が道を開けた。
「陛下、我らを見捨てぬでくださるのか……!」
民の叫びに、ノエルは馬上で静かに頭を下げた。
「民が私を信じる限り、私は王だ。」
その言葉が次々と広がり、村に希望が灯る。
やがて、霧立つ谷の向こうに反乱軍の旗が見えた。
その中央には、かつての友、ルシアンが立っていた。
彼の鎧は汚れ、疲労の滲む顔にかつての貴族の誇りの残滓が見える。
「……ノエル陛下。」
「ルシアン、なぜだ。再び剣を取る必要があったのか。」
「俺の意志ではない。この地を捨てられぬ民が、貴方の政策に怯えている。彼らは家も土地も失った。俺は……彼らを見捨てられなかった。」
ノエルは沈黙した。
確かに改革の渦中で、税の見直しと再分配が混乱を招いたのは事実だった。
「それでも、戦で救える命ではない。」
「分かっている、陛下! だが、民は剣でしか聞き入れてもらえぬと怯えているんだ!」
両者の間を風が吹き抜けた。
クロエが前に出ようとした瞬間、ノエルは手で制した。
そして、一歩ずつ進み、ルシアンに近づいた。
「ならば、私が剣を下ろす。民に示すのは暴力ではなく、赦しであるべきだ。」
ノエルは剣を鞘に納め、両手を広げて見せた。
ルシアンの目が揺れる。
「……民を信じる勇気、か。あいかわらず君らしい。」
「君もまた、信じたからこそここにいるのだろう。ならば、この国を共に再建してくれ。」
沈黙の果て、ルシアンはやがて膝をついた。
「……陛下、その言葉を、待っていた。」
その瞬間、どこからか矢が放たれた。
「陛下ッ!」
クロエが駆け出し、ノエルの前に立つ。
矢は彼女の肩に当たる寸前、ノエルが彼女を庇って受けた。
「ノエル!」
「大丈夫だ……浅い。」
だが血が滲み出るのを見て、クロエの胸が締めつけられた。
反乱軍の残党が背後の崖から下りてくる。
「貴様ら、陛下を狙うとは!」ルシアンが叫ぶ。
ノエルは傷を押さえながら立ち上がる。
「争うな!! これ以上血を流すな!」
その叫びに、兵たちの動きが止まる。
ノエルの流す血と、その瞳に宿る覚悟が、言葉を超えて伝わった。
「民を守るために戦う。それが王の責務だ。しかし王のために流す血など一滴も要らぬ!」
震えた兵が次々に膝をつく。
クロエはノエルの手を握り、叫んだ。
「殿下、もう十分です! 皆、貴方の“心”に従っています!」
ノエルの視界が少し滲む。それが涙か痛みか、自分でも分からなかった。
戦いが終わった後、夕陽が赤く山を染めた。
ルシアンは再びノエルの前に跪き、剣を差し出す。
「この命、今度こそ正義に捧げます。あなたが信じ続ける“誇り”を、俺も見たい。」
「顔を上げろ。君の心が既にこの国を救っている。」
ノエルは手を伸ばし、彼を立たせた。そして振り返り、クロエに微笑んだ。
「君がいたから、私は戦わずして勝てた。君が信じる力が、私の剣だ。」
クロエはゆっくり頷き、目に涙を浮かべた。
「私は――陛下を守るために生きてきました。でも、陛下が私を守ってくださった。」
陽光が沈み、夜の帳が降りる頃、ノエルは彼女の手を取った。
「これからも、共に戦おう。力ではなく、心で。」
「はい、陛下。」
二人の指が絡み合う。
その手のぬくもりこそ、この国を未来へ導く力だった。
憎しみも裏切りも越えて、新しい時代がまた始まろうとしている。
続く
だが、その祝福の空気の裏で、再び不穏が静かに蠢いていることを知る者は少なかった。
宰相派の残党が完全に消滅したわけではない。彼らは表舞台から姿を消したが、王政の影に潜み、いまだ牙を研ぎ続けていた。
新王ノエルは、そのことを誰よりも理解していた。
「腐敗は一夜では癒えない。だが、この国は生まれ変わろうとしている。」
静かな執務室で、彼は報告書を閉じて目を細めた。
朝の光が机に落ち、彼の金の髪を淡く照らす。
扉の向こうから足音が聞こえた。
「陛下、お呼びとのことでしたか。」
現れたクロエは、純白の侍従服を身に纏い、凛とした面持ちで礼を取った。
以前よりも堂々としていた。その姿はもはや、かつての侍女ではなく、王の隣に立つ真の伴侶そのものだった。
「クロエ、これを見てほしい。」
ノエルが差し出したのは、南境から届いた密書だった。
「また……内乱の兆しですか?」
「残党が武装して動き始めている。民を扇動し、王政を壊そうとしている者たちだ。」
クロエは唇を引き結んだ。
「平和が訪れたと思っていましたのに……。」
「だからこそ、平和を守る戦いが必要になる。」
ノエルはゆっくりと立ち上がり、クロエの肩に手を置いた。
「君を巻き込みたくはないが、共にいてくれるか。」
「もちろんです。殿下……いえ、陛下。私は貴方の誓いを見届けた一人です。最後まで傍に。」
ノエルは微笑んだが、その瞳には決意の影が湛えられていた。
「君が私を信じてくれるなら、もう何も恐れない。」
その夜、王城の作戦室では重臣たちが集まっていた。
「反乱軍は南境の山村に拠点を築いております」と将軍の報告が続く。
「指導者の名はまだ掴めておりませんが、封蝋に残る印は……フェルナンド家に極めて近いものです。」
その名が出た瞬間、室内が僅かにざわついた。
ルシアン。
彼の行方は、内乱を鎮めたのち消息を絶っていた。
ノエルは手を止め、目を閉じた。
「彼が……。」
クロエがその名を聞いた瞬間、胸の奥が痛んだ。だが、彼を責める気にはなれない。
あの戦いで最後まで父に抗い、自らの誇りを捨てて国を選んだ男――そんな彼が、再び剣を取るとは信じたくなかった。
「陛下、我らが動くべきか?」
「……私が自ら行く。」
「なんと陛下ご自ら!?」
周囲の驚きに、ノエルの声は揺らがなかった。
「王が敵の顔を知らず何を語る。私が行けば、民への演説にも説得にも意味が生まれる。」
クロエはその言葉に、一歩前へ進み出た。
「では、私も同行させてください。」
「だめだ。」即答に、空気が止まった。
「今回は危険が大きすぎる。君を危険にさらすことはできない。」
「陛下。」
クロエの瞳は静かな炎を宿していた。
「私は侍女でした。そして陛下と共に多くを見て、学びました。矢も恐怖も超えてここに立ったのです。――『共に歩む』という約束、覚えておいででしょう。」
言葉が、ノエルの胸を突く。
沈黙ののち、ノエルは静かにうなずいた。
「分かった。ただし、必ず私の傍を離れるな。」
「はい。」
数日後。
王と彼の近衛、そしてクロエを乗せた隊が南境へ出発した。
冬の名残りが残る山を越え、村々を抜けるたび、人々が道を開けた。
「陛下、我らを見捨てぬでくださるのか……!」
民の叫びに、ノエルは馬上で静かに頭を下げた。
「民が私を信じる限り、私は王だ。」
その言葉が次々と広がり、村に希望が灯る。
やがて、霧立つ谷の向こうに反乱軍の旗が見えた。
その中央には、かつての友、ルシアンが立っていた。
彼の鎧は汚れ、疲労の滲む顔にかつての貴族の誇りの残滓が見える。
「……ノエル陛下。」
「ルシアン、なぜだ。再び剣を取る必要があったのか。」
「俺の意志ではない。この地を捨てられぬ民が、貴方の政策に怯えている。彼らは家も土地も失った。俺は……彼らを見捨てられなかった。」
ノエルは沈黙した。
確かに改革の渦中で、税の見直しと再分配が混乱を招いたのは事実だった。
「それでも、戦で救える命ではない。」
「分かっている、陛下! だが、民は剣でしか聞き入れてもらえぬと怯えているんだ!」
両者の間を風が吹き抜けた。
クロエが前に出ようとした瞬間、ノエルは手で制した。
そして、一歩ずつ進み、ルシアンに近づいた。
「ならば、私が剣を下ろす。民に示すのは暴力ではなく、赦しであるべきだ。」
ノエルは剣を鞘に納め、両手を広げて見せた。
ルシアンの目が揺れる。
「……民を信じる勇気、か。あいかわらず君らしい。」
「君もまた、信じたからこそここにいるのだろう。ならば、この国を共に再建してくれ。」
沈黙の果て、ルシアンはやがて膝をついた。
「……陛下、その言葉を、待っていた。」
その瞬間、どこからか矢が放たれた。
「陛下ッ!」
クロエが駆け出し、ノエルの前に立つ。
矢は彼女の肩に当たる寸前、ノエルが彼女を庇って受けた。
「ノエル!」
「大丈夫だ……浅い。」
だが血が滲み出るのを見て、クロエの胸が締めつけられた。
反乱軍の残党が背後の崖から下りてくる。
「貴様ら、陛下を狙うとは!」ルシアンが叫ぶ。
ノエルは傷を押さえながら立ち上がる。
「争うな!! これ以上血を流すな!」
その叫びに、兵たちの動きが止まる。
ノエルの流す血と、その瞳に宿る覚悟が、言葉を超えて伝わった。
「民を守るために戦う。それが王の責務だ。しかし王のために流す血など一滴も要らぬ!」
震えた兵が次々に膝をつく。
クロエはノエルの手を握り、叫んだ。
「殿下、もう十分です! 皆、貴方の“心”に従っています!」
ノエルの視界が少し滲む。それが涙か痛みか、自分でも分からなかった。
戦いが終わった後、夕陽が赤く山を染めた。
ルシアンは再びノエルの前に跪き、剣を差し出す。
「この命、今度こそ正義に捧げます。あなたが信じ続ける“誇り”を、俺も見たい。」
「顔を上げろ。君の心が既にこの国を救っている。」
ノエルは手を伸ばし、彼を立たせた。そして振り返り、クロエに微笑んだ。
「君がいたから、私は戦わずして勝てた。君が信じる力が、私の剣だ。」
クロエはゆっくり頷き、目に涙を浮かべた。
「私は――陛下を守るために生きてきました。でも、陛下が私を守ってくださった。」
陽光が沈み、夜の帳が降りる頃、ノエルは彼女の手を取った。
「これからも、共に戦おう。力ではなく、心で。」
「はい、陛下。」
二人の指が絡み合う。
その手のぬくもりこそ、この国を未来へ導く力だった。
憎しみも裏切りも越えて、新しい時代がまた始まろうとしている。
続く
15
あなたにおすすめの小説
手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです
珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。
でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。
加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。
『婚約破棄?結構ですわ。わたくしは何もしないで生きていきます』
鷹 綾
恋愛
内容紹介
王太子ユリウスの婚約者だった伯爵令嬢リュシエンヌは、公衆の面前で一方的に婚約を破棄される。
だが彼女は泣かず、怒らず、復讐も選ばなかった。
「働かないと、決めましたの」
婚約者として担ってきた政務補佐、調整、裏方の仕事をすべて手放し、彼女は“何もしない”生活を始める。
すると王宮は静かに軋み、これまで彼女が支えていた日常だけが浮き彫りになっていく。
新たな婚約者を得た王太子。
外から王宮を支える女性。
そして、何もせず距離を保つ元婚約者。
誰も声高に責めず、誰も派手なざまぁをしない。
それでも、関係は変わり、立場は入れ替わり、真実だけが残っていく。
これは、頑張らないことで人生を取り戻した令嬢の物語。
婚約破棄のその先で、“何もしない”という最強の選択をした女性が、静かに自由を手に入れるまでの40話。
【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない
あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。
王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。
だがある日、
誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。
奇跡は、止まった。
城は動揺し、事実を隠し、
責任を聖女ひとりに押しつけようとする。
民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。
一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、
奇跡が失われる“その日”に備え、
治癒に頼らない世界を着々と整えていた。
聖女は象徴となり、城は主導権を失う。
奇跡に縋った者たちは、
何も奪われず、ただ立場を失った。
選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。
――これは、
聖女でも、英雄でもない
「悪役令嬢」が勝ち残る物語。
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
満場一致で削除されましたが、世界は問題なく回っております』
鷹 綾
恋愛
王太子アルベルトは、ある日、貴族全会の満場一致によって廃嫡された。
断罪もなければ、処刑もない。
血も流れず、罪状も曖昧。
ただ「順序を飛ばした」という一点だけで、彼は王位継承の座から静かに削除される。
婚約者だった公爵令嬢エリシアは、婚約破棄の時点で王都の構造から距離を取り、隣国との長期協定を進めていく。
彼女の世界は合理で動き、感情に振り回されることはない。
一方、王太子が選んだ“新たな聖女”は、どこまでも従順で、どこまでも寄り添う存在だった。
「殿下に従わない者は、私が処理しておきます」
その甘い囁きの裏で、王都では“偶然”が重なり始める。
だが真実は語られない。
急病も、辞任も、転任も、すべては記録上の出来事。
証拠はない。
ただ王太子だけが、血に濡れた笑顔の悪夢を見る。
そして気づく。
自分のざまあは、罰ではない。
「中心ではなくなること」だと。
王都は安定し、新王は即位し、歴史は何事もなかったかのように進む。
旧王太子の名は、ただ一行の記録として残るのみ。
婚約破棄のその後に始まる、静かな因果応報。
激情ではなく“構造”が裁く、最強レベルの心理ざまあ。
これは――
満場一致で削除された男と、最初から無関係な位置に立っていた令嬢の物語。
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。
初恋を諦めたあなたが、幸せでありますように
ぽんちゃん
恋愛
『あなたのヒーローをお返しします。末永くお幸せに』
運命の日。
ルキナは婚約者候補のロミオに、早く帰ってきてほしいとお願いしていた。
(私がどんなに足掻いても、この先の未来はわかってる。でも……)
今頃、ロミオは思い出の小屋で、初恋の人と偶然の再会を果たしているだろう。
ロミオが夕刻までに帰ってくれば、サプライズでルキナとの婚約発表をする。
もし帰ってこなければ、ある程度のお金と文を渡し、お別れするつもりだ。
そしてルキナは、両親が決めた相手と婚姻することになる。
ただ、ルキナとロミオは、友人以上、恋人未満のような関係。
ルキナは、ロミオの言葉を信じて帰りを待っていた。
でも、帰ってきたのは護衛のみ。
その後に知らされたのは、ロミオは初恋の相手であるブリトニーと、一夜を共にしたという報告だった――。
《登場人物》
☆ルキナ(16) 公爵令嬢。
☆ジークレイン(24) ルキナの兄。
☆ロミオ(18) 男爵子息、公爵家で保護中。
★ブリトニー(18) パン屋の娘。
白い結婚は終わりました。――崩れない家を築くまで
しおしお
恋愛
「干渉しないでくださいませ。その代わり、私も干渉いたしません」
崩れかけた侯爵家に嫁いだ私は、夫と“白い結婚”を結んだ。
助けない。口を出さない。責任は当主が負う――それが条件。
焦りと慢心から無謀な契約を重ね、家を傾かせていく夫。
私は隣に立ちながら、ただ見ているだけ。
放置された結果、彼は初めて自分の判断と向き合うことになる。
そして――
一度崩れかけた侯爵家は、「選び直す力」を手に入れた。
無理な拡張はしない。
甘い条件には飛びつかない。
不利な契約は、きっぱり拒絶する。
やがてその姿勢は王宮にも波及し、
高利契約に歪められた制度そのものを立て直すことに――。
ざまあは派手ではない。
けれど確実。
焦らせた者も、慢心した者も、
気づけば“選ばれない側”になっている。
これは、干渉しない約束から始まる静かな逆転劇。
そして、白い結婚を終え、信頼で立つ家へと変わっていく物語。
隣に立つという選択こそが、最大のざまあでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる