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一章
お迎……おむ……お迎えだー!
しおりを挟むそこから半年。周囲に魔法について探りを入れつつ、夜中にこっそり指先に炎を灯したり洗浄魔法が使えるか試したりしていたら普通にシスターにバレた。二度見された。
そうしたらトントン拍子で俺に会ってみたいという申し入れが来た。良い子に待つのではなく俺から魔法の才の噂を流さなければならなかったらしい。
「あぁ、君がシャノン君?」
「はじっ……お、お初にお目にかかります……? し、シャノンと申します」
シスターに案内されて部屋まで向かうと、身なりの良い、一見冷たそうな雰囲気の美丈夫が俺を待っていた。
お迎えだぜ! と意気揚々と来たが、良く考えなくても俺は貴族の礼儀なんて知らないということにこの場で初めて気づく。心なしか背中に変な汗も流れている。
失礼の……失礼の無い挨拶ってなんだ? 頭の中がぐるぐると回っているが、とにかくガバッと頭を下げる。
ぷるぷるしている俺をどう思ったのか、美丈夫は一瞬目を見開いた後「ふむ?」と顎に手を当てた。
「魔法の才がある孤児がいるとだけ聞いていたが……これはなかなか。ああ、そう畏まらなくて良い。私はガルシア伯爵位を賜っている、ディーン・ガルシアだ」
「ガルシア…伯爵」
伯爵様だったのか。どうりで綺麗な格好をしているわけだ。
俺の勘が原作でシャノンを引き取る家はここだと告げているのでいそいそと猫を三匹くらい肩に乗せ少しだけ頬を緩めてみせる。
「そう、君の噂を聞いてね。誰もまともに魔法を教えていないのに、ひとりで魔力循環を済ませて簡易魔法を使ってみせたのだろう? 私には少しだけ魔法の覚えがあるが……。君はおそらく魔力の量も多いだろう」
知ってます! と言いそうになり慌てて片手で口を塞いだ。おしゃべりなお口め!
「魔法が上手く使えるのは君の、そして国の財産になる。うちは嫡子もいるし、財力もある。君にのびのびとした環境を提供してあげられると思うけど……。どうだい?」
ガルシア伯爵が目を細めて俺を見る。おそらく俺に合わせて貴族の回りくどい言い方はよしてくれている。
うーん! 普通に良い人の気配がするけど……。
やっぱり俺が暴れなければ断罪なんて起きないのだろうか。シャノン、疫病神すぎるな。
「お……僕で良いのでしょうか。僕は貴族のマナーどころか親も知りません。勿論魔法のことも分かりません」
慎重に、慎重に、下手に……。
俺の顔としては一人称は僕のほうが似合いそうだな、と急ブレーキをかけたがちょっと雑すぎた気もする。
俺は清く正しく媚びるために多少のあざとさも学ばなければならないのだ。背負っている猫も増やしておこう。
「知識は今からでも覚えられる。あとはシャノン君の気持ち次第だ。……私はこんな可愛い息子が増えるなら歓迎する」
ガルシア伯爵が俺の目の前に片手を差し出す。一度ちらりと伯爵の顔を伺い、視線を逸らしてから彼の手に俺の手を重ねた。最後にぱっと顔を上げる。笑顔も忘れない!
「……よろしくお願いします!」
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