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一章
俺とリアムの仲良し大作戦
しおりを挟む「兄上、兄上! 見てください!」
俺がこの家族の潤滑油になろうと決意してはや二週間。俺がリアムのハートを掴むことが一番手っ取り早いのではと考え、時間を見てはリアムにだる絡みしに行く日々を過ごしていた。
シャノンがリアムと仲良くなれば、自動的に家族の物理的な距離も近づくのではと思ったのだ。
「シャノン、走らない」
「ごめんなさい!」
休憩しているリアムを見かけたので背後からタックルしに行く。
「? その服……」
「はい! 兄上の昔の服を僕用に少し直してもらいました! 似合いますか?」
父上と母上(と呼んで欲しいと伯爵、夫人に言われた)に欲しいものはあるかと聞かれたので、リアムの昔の服はないかと聞いた。
リアムに絡みに行く口実になればと思って言い出したことだったが、どうやら二人の目には俺が服を買ってもらうことに遠慮しているように映っているらしく、良い子だと言われた。
服なんて正直猥褻罪にならない程度に着れればなんでも良いので、そんなつもりは一切ない。曖昧に微笑んでおいた。
「新しいものを仕立てなかったのか?」
「僕は家族に憧れがあったので……兄のおさがりを着るっていうのをやってみたかったんです! えへ」
にこーっと笑う。食らえ! シャノン君のハイパーウルトラプリティースマイル!
リアムはじっと俺を見ると、きゅっと眉を寄せ口を引き結んだ。
ちょっと驚いた。リアムを観察しまくって気付いたが、この人はクールというよりは表情が滅多に動かないらしい。誰と話している時も表情筋が仕事をしていない。
そんな彼が少しとはいえ顔の筋肉を動かしている。でもなんだその反応は! 不愉快なのか?
「……兄上? ごめんなさい、勝手でしたね……」
「待て、違う。着てもらって構わない。俺には当たり前だがもう着れないものだし、全て君にあげよう。……シャノン、この後時間があるなら俺の部屋においで。確か小さくなった服がまだ何着かあるはずだ」
ぽっと出の義弟にここまで馴れ馴れしくされたらイラッとくるのかもしれない、と思い少ししゅんとしていたらリアムが被せ気味に話し出した。
彼の表情が動くのもそうだし三行以上喋っているのも初めて見た。びっくりだ。
「僕が兄上の部屋にお邪魔して良いんですか? 嬉しいです! 僕と一緒に休憩しましょうね」
「……あぁ」
リアムはまたすぐにスン……とした顔に戻ったが、俺とリアムの仲良し大作戦は順調に進んでいるらしい。このまま押せ押せでいいっぽいな!
リアムと段々仲良くなれている(多分)ことが嬉しくて、にこにこしながら彼の後を追った。
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