義兄のものをなんでも欲しがる義弟に転生したので清く正しく媚びていくことにしようと思う

縫(ぬい)

文字の大きさ
30 / 53
二章

食われる(物理)

しおりを挟む





 にっこにこのエドモンドに引き攣った顔で別れを告げ、帰路につく。疲れた気持ちでソファに雪崩れ込んだ。
 嵐みたいな人だった。あの眩しいくらい輝いてた殿下の側近が、ショタコン芸術肌の男か……。

「ふ、シャノンちゃん、モデルって……。良い人生経験だなあ?」

(う、うるさいなあ!)

 俺ら以外に姿が見えないことをいいことに、ケラケラと笑いながら揶揄ってくるテディの言葉に羞恥心が募った。

 リアムが慰めるみたいにそっと肩を撫でた。それで機嫌がなおる俺も大概である。

「すまない、シャノンとその……。二人で並んでいる絵を、と思うと揺らいでしまって」

「いえ……うう、恥ずかしいですけど兄上が喜ぶなら……。あ、それより! 誕生日……」

 そうだ、絵よりも俺には大事な案件がある。
 義兄は直接俺にプレゼントをリクエストしてくれると言っていた。欲しいものをあげるのが一番だ。なんでも言って欲しい。俺にできることなら!

 じーっと彼の目を見つめていると、ふと口元を柔らげて俺の手を取った。

「ああ、欲しいものがある。シャノンにしか用意できないんだ」

「!! 遠慮なさらずに言ってくださいっ」

 しばらく黙って視線を絡めていたけど、不意に手に取った俺の指を唇に寄せる。

(……え!?)

 まるで物語の王子様みたいに、俺の手のひらに口付けを落とした。
 何!? なんだ!?
 当たり前にドキドキが止まらない。こんなキザな仕草も様になっている。
 まさか欲しいのは君だとか言われるんだろうか。そんな台詞現実で言うやるがおるかと思ってしまうけど正直リアムに言われるなら満更でもないかもしれない。

「……いっ……? たくはない……」

 頭の中が残念な子になっている俺だったが、突如薬指に走ったちくっとした感覚で現実に戻ってきた。
 違和感に目を向けると、リアムが俺の左手の薬指を軽く噛んでいる。
 状況が飲み込めなくて視線が泳いだ。

「……欲しい」

「え?」

「これが欲しい。……お願いだ」

 口付けを交わしていたあの日みたいに、義兄の熱のこもった目が俺を射抜く。
 あの甘さを思い出して、段々と身体の体温が上がってきた。
 黙ったままの俺をどう思ったのか、すごくうっすらと噛み跡のついたそこに再度唇が触れて、思わず情けない声が出る。

 甘ったるい空気に毒されて、彼の言葉をまともに理解しようとする脳が停止してしまう。脳死で頷きそうになるところをギリギリで耐えた。

 どういうことだ? リアムにカニバの趣味があるなんて聞いたことがない。漫画でも現実でも、この人は真っ当な青年だったはずだが。それに俺も痛いのはちょっと勘弁だ。

「え、えと、僕痛いのはちょっと苦手かなあ….。でも兄上がどうしてもって言うなら……うーん……」

「……? 痛い? ……あ、い、いや、それは後々……今すぐ強いるつもりはないよ。流石にシャノンが十六、成人するまで待つさ」

「後々!?」

 成長したら食われるのか?!
 成長した俺が頭からガブリと義兄に食われている想像をして何エンドだよと困惑する。

 リアムはなぜか頬を染めて視線を逸らしていた。かわいい。

 ……というか、リアムにカニバ疑惑が絶賛かかっているのに変わらずこの人が好きだと思う俺はおかしいのかもしれない! それ以前に積んでいる好感度が高すぎる。
 この人が快楽殺人とかしない限りもしかしたらずっと好きかもしれない。いや、快楽殺人してもメロっちゃうかもしれない。そうなったらもう俺は終わりだ!

 あ、ていうか、光魔法があるんだから痛くせずになんか……うまいことできるんじゃないか? 痛覚消すとかなんか……それもちょっとグロいか。

 頭の中がぐるぐるする。まともな思考ができていない自覚はあるけどどこがまともじゃないのかわからない。
 この人にこういう目で見つめられると、俺は脳が爆発して何もわからなくなってしまう!
 我ながらリアムに弱すぎる!

「あの……痛くしないって約束してくれますか? その、光魔法とかでなんとか……ならないですかね。……約束してくれるなら、いいですよ。これを差し上げます」

「!」

 もう何もわからん! 何もわからんけど俺だって男だ! 腹を括ろう。リアムが欲しいなら指の一本や二本持ってけ!

 指がなくなるなんて普通に考えて嫌だが!

 でもなんか、今後俺が魔道具作りの道に進めたら義手や義足とかを作って世に出したりしてもいいかもしれない。見てる限りこの世界にそういう技術は無いみたいだし。指のない俺がその道の第一人者になろう。

 光魔法は欠損を治せるんだからそれでやればいいんだろうけど、光魔法は世に出せるものじゃないからなあ。リアムが王宮に囲われて会えないとかなったら泣いてしまうし。


 思考が飛びに飛んで余計に頭がぐるぐるした。

 ん? あれ、なんか身体が熱……。


 視界がぐらぐらと揺れる。口の中に籠る息がすごく熱くて不快で眉を寄せると、何故か涙まで滲んできた。太もものあたりがぞわっとしていて気持ち悪い。

 あ、これ、倒れるかも。

 意識が飛ぶ寸前に見たのは、慌てて俺の額に手を当てる麗しい義兄の姿だった。
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...