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第24話 聖女認定式、開幕
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第24話 聖女認定式、開幕
王都中央大聖堂。
その日、普段は祈りの静寂に包まれている場所が、異様な熱気に満ちていた。
貴族席、聖職者席、王族席。
そして、そのすべてを見下ろす高壇。
「……まるで……
即位式みたい……」
誰かの小さな呟きが、空気に溶ける。
だが、その言葉を否定する者はいなかった。
それほどまでに、今回の「聖女認定式」は――
過剰だった。
(……やりすぎ……
ですわね……)
令嬢Cは、客席の後方、
目立たない位置に座りながら、静かに周囲を見渡していた。
(……聖女を……
“選ぶ”……
場では……
ない……)
(……“示す”……
場……
です……)
誰が、
何を、
誰に、
示したいのか。
その答えは、
一つしかなかった。
---
高壇に、
王太子ダイナスティが現れる。
豪奢な衣装。
完璧な所作。
――かつての「王子様」そのもの。
(……殿下……)
アルテッツァは、
指定された席から、
彼の姿を見上げていた。
(……変わって……
いない……)
(……何も……
分かって……
いない……)
その確信に、
胸が、
ひどく静かになった。
---
「――これより」
ダイナスティの声が、
大聖堂に響く。
「――王家主催
聖女認定式を
執り行う」
拍手が、
まばらに起きる。
だが、
その音は、
どこか遠慮がちだった。
「――聖女とは、
王国を導く光」
「――その存在は、
国家の安定に
不可欠である」
言葉は整っている。
だが、
そこに「人」がなかった。
(……また……
同じ……)
アルテッツァは、
目を伏せる。
(……誰の……
ための……
言葉……?)
---
儀式は、
形式的に進む。
祈り。
祝詞。
聖具の確認。
そして――
核心。
「――本日、
認定対象となる
聖女候補は二名」
ざわめきが、
一斉に広がる。
「……二人……?」
「……もう……
決まって……
いる……
のでは……?」
ダイナスティは、
わずかに口角を上げた。
「――一人は、
これまで
真の聖女として
王家に仕えてきた
アルテッツァ」
アルテッツァが、
静かに立ち上がる。
拍手。
だが、
それは、
以前ほどの熱を帯びていない。
「――そしてもう一人」
ここで、
ダイナスティは、
一瞬だけ、
間を置いた。
(……来る……)
令嬢Cは、
静かに息を整える。
「――身分不明、
爵位不明」
「――しかし、
学園内にて
奇跡的な力を
示した存在」
聖堂が、
ざわつく。
「……誰……?」
「……そんな……
人……?」
「――本日、
この場に
来ている」
その言葉と同時に、
ダイナスティの視線が、
客席を走る。
探す。
探す。
――“引きずり出す”ために。
(……本当に……)
(……ここで……
やる……
つもり……)
令嬢Cは、
立たなかった。
名を呼ばれていない。
呼ばれる理由も、
ない。
(……名乗らない……)
(……私は……
選ばれない……)
それが、
彼女の決意だった。
---
「……?」
ダイナスティの眉が、
僅かに動く。
(……おかしい……)
(……なぜ……
立たない……)
彼は、
事前に「根回し」をしたつもりだった。
式に出席する
呼ばれたら前に出る
それが、
暗黙の了解になると、
本気で思っていた。
(……拒否……
されている……?)
だが、
それを認めるわけにはいかない。
「――その者は」
ダイナスティは、
声を張り上げた。
「――名を隠し、
立場を隠し」
「――王家の問いにも
答えない」
「――だが、
力だけは
示している」
それは、
告発だった。
会場の空気が、
一気に冷える。
(……最悪……)
教師Aは、
内心で呟いた。
(……これでは……
聖女認定……
ではなく……
糾弾……)
---
アルテッツァは、
はっきりと理解した。
(……これは……)
(……選ぶ……
ための……
式では……
ない……)
(……支配……
する……
ための……
式……)
彼女は、
ゆっくりと、
前へ一歩出た。
「……殿下」
静かな声。
だが、
大聖堂に、
はっきりと響いた。
「……その……
言い方……」
「……聖女の……
在り方……
では……
ありません……」
ざわめきが、
一段大きくなる。
ダイナスティが、
振り向く。
「……アルテッツァ……」
「……今は……
儀式中……」
「……だから……
です……」
アルテッツァは、
一歩も引かなかった。
「……この場は……
人を……
裁く……
場所……
では……
ありません……」
沈黙。
一瞬、
時間が止まったかのようだった。
(……言った……)
令嬢Cは、
胸の奥で、
静かに思った。
(……もう……
逃げ場……
ありません……
ね……
殿下……)
---
ダイナスティは、
その視線を、
アルテッツァから、
再び客席へ向けた。
(……構わない……)
(……この場で……
決める……)
彼は、
知らなかった。
――すでに、
この式は、
彼の手を離れていることを。
王家が開いた舞台。
だが、
主役は、
もう――
王子ではなかった。
---
こうして。
聖女認定式は開幕し
王子の「糾弾」が始まり
アルテッツァは公に異を唱え
令嬢Cは名乗らず、立たず
会場全体が違和感に包まれる
物語は、
破局の瞬間へ向かう。
王都中央大聖堂。
その日、普段は祈りの静寂に包まれている場所が、異様な熱気に満ちていた。
貴族席、聖職者席、王族席。
そして、そのすべてを見下ろす高壇。
「……まるで……
即位式みたい……」
誰かの小さな呟きが、空気に溶ける。
だが、その言葉を否定する者はいなかった。
それほどまでに、今回の「聖女認定式」は――
過剰だった。
(……やりすぎ……
ですわね……)
令嬢Cは、客席の後方、
目立たない位置に座りながら、静かに周囲を見渡していた。
(……聖女を……
“選ぶ”……
場では……
ない……)
(……“示す”……
場……
です……)
誰が、
何を、
誰に、
示したいのか。
その答えは、
一つしかなかった。
---
高壇に、
王太子ダイナスティが現れる。
豪奢な衣装。
完璧な所作。
――かつての「王子様」そのもの。
(……殿下……)
アルテッツァは、
指定された席から、
彼の姿を見上げていた。
(……変わって……
いない……)
(……何も……
分かって……
いない……)
その確信に、
胸が、
ひどく静かになった。
---
「――これより」
ダイナスティの声が、
大聖堂に響く。
「――王家主催
聖女認定式を
執り行う」
拍手が、
まばらに起きる。
だが、
その音は、
どこか遠慮がちだった。
「――聖女とは、
王国を導く光」
「――その存在は、
国家の安定に
不可欠である」
言葉は整っている。
だが、
そこに「人」がなかった。
(……また……
同じ……)
アルテッツァは、
目を伏せる。
(……誰の……
ための……
言葉……?)
---
儀式は、
形式的に進む。
祈り。
祝詞。
聖具の確認。
そして――
核心。
「――本日、
認定対象となる
聖女候補は二名」
ざわめきが、
一斉に広がる。
「……二人……?」
「……もう……
決まって……
いる……
のでは……?」
ダイナスティは、
わずかに口角を上げた。
「――一人は、
これまで
真の聖女として
王家に仕えてきた
アルテッツァ」
アルテッツァが、
静かに立ち上がる。
拍手。
だが、
それは、
以前ほどの熱を帯びていない。
「――そしてもう一人」
ここで、
ダイナスティは、
一瞬だけ、
間を置いた。
(……来る……)
令嬢Cは、
静かに息を整える。
「――身分不明、
爵位不明」
「――しかし、
学園内にて
奇跡的な力を
示した存在」
聖堂が、
ざわつく。
「……誰……?」
「……そんな……
人……?」
「――本日、
この場に
来ている」
その言葉と同時に、
ダイナスティの視線が、
客席を走る。
探す。
探す。
――“引きずり出す”ために。
(……本当に……)
(……ここで……
やる……
つもり……)
令嬢Cは、
立たなかった。
名を呼ばれていない。
呼ばれる理由も、
ない。
(……名乗らない……)
(……私は……
選ばれない……)
それが、
彼女の決意だった。
---
「……?」
ダイナスティの眉が、
僅かに動く。
(……おかしい……)
(……なぜ……
立たない……)
彼は、
事前に「根回し」をしたつもりだった。
式に出席する
呼ばれたら前に出る
それが、
暗黙の了解になると、
本気で思っていた。
(……拒否……
されている……?)
だが、
それを認めるわけにはいかない。
「――その者は」
ダイナスティは、
声を張り上げた。
「――名を隠し、
立場を隠し」
「――王家の問いにも
答えない」
「――だが、
力だけは
示している」
それは、
告発だった。
会場の空気が、
一気に冷える。
(……最悪……)
教師Aは、
内心で呟いた。
(……これでは……
聖女認定……
ではなく……
糾弾……)
---
アルテッツァは、
はっきりと理解した。
(……これは……)
(……選ぶ……
ための……
式では……
ない……)
(……支配……
する……
ための……
式……)
彼女は、
ゆっくりと、
前へ一歩出た。
「……殿下」
静かな声。
だが、
大聖堂に、
はっきりと響いた。
「……その……
言い方……」
「……聖女の……
在り方……
では……
ありません……」
ざわめきが、
一段大きくなる。
ダイナスティが、
振り向く。
「……アルテッツァ……」
「……今は……
儀式中……」
「……だから……
です……」
アルテッツァは、
一歩も引かなかった。
「……この場は……
人を……
裁く……
場所……
では……
ありません……」
沈黙。
一瞬、
時間が止まったかのようだった。
(……言った……)
令嬢Cは、
胸の奥で、
静かに思った。
(……もう……
逃げ場……
ありません……
ね……
殿下……)
---
ダイナスティは、
その視線を、
アルテッツァから、
再び客席へ向けた。
(……構わない……)
(……この場で……
決める……)
彼は、
知らなかった。
――すでに、
この式は、
彼の手を離れていることを。
王家が開いた舞台。
だが、
主役は、
もう――
王子ではなかった。
---
こうして。
聖女認定式は開幕し
王子の「糾弾」が始まり
アルテッツァは公に異を唱え
令嬢Cは名乗らず、立たず
会場全体が違和感に包まれる
物語は、
破局の瞬間へ向かう。
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