婚約破棄、追放された令嬢ですが、国民全員ついてきました ――国王陛下まで付いてくるのは聞いてません――

ふわふわ

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第18話 同調しないという罪

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第18話 同調しないという罪

夜明け前。

見張り台の鐘が、低く鳴った。

警告ではない。
敵襲でもない。

――通達だ。

「……掲示文が、各所に貼られています」

報告役の声は、硬かった。

「周辺三都市より、同時に」

カグラは、無言で文書を受け取る。

そこに書かれていたのは、
丁寧な言葉で包まれた、明確な線引きだった。

> 「サクラ共同体との取引は、
当面“推奨されない”」



> 「関与した商人・職人は、
各都市の裁量により
税制・入市条件の見直し対象とする」



「……露骨ですわね」

「ええ。
違反ではない。
ですが――」

「罰になる」

カグラは、紙を畳んだ。

承認を拒んだ。
条件交渉もしなかった。
理念も曲げなかった。

だから次は、これだ。

――同調しない者を、孤立させる。

朝。

市場の一角で、口論が起きた。

「取引できない!
うちの都市じゃ、目を付けられる!」

「でも、約束は――」

「約束より、生活だ!」

人々の視線が、痛いほど刺さる。

責めているわけではない。
恐れているだけだ。

その様子を、カグラは遠くから見ていた。

(怒りは、出ませんでしたわね)

それが、何よりの答えだった。

正午。

政庁に、数名の代表が集まる。

顔には、疲労と迷い。

「……抜ける者が、出ます」

補佐役が言う。

「共同体を?」

「いえ。
“関わるのをやめる者”です」

「ええ」

カグラは、静かに頷いた。

「止めません」

「……本当に?」

「同調を強いる組織に、
なった瞬間――」

視線を上げる。

「私たちは、
世界と同じ側に立ってしまいます」

その夜。

小さな焚き火の周りに、人が集まっていた。

「俺は……外の都市に戻る」

「家族がいる」

「怖いんだ」

誰も責めない。
誰も引き止めない。

カグラは、その輪の外から言った。

「行く人を、見送ります」

皆が、顔を上げる。

「戻りたくなったら――」

一瞬、間。

「その時は、
また“選んで”ください」

涙を拭う者がいた。
歯を食いしばる者もいた。

だが、怒りはなかった。

翌日。

三つの交易路が、正式に閉じられた。

物資は減る。
流通は鈍る。

だが、不思議と――
混乱は起きなかった。

「……減ったな」

「でも、残った」

職人の声が、静かに重なる。

「楽じゃないが」

「嘘は、つかなくて済む」

数日後。

一通の密書が、カグラのもとに届く。

> 「貴方方と取引を続ける商人が、
入市制限を受けました」



> 「だが、
それでも続けたい、と」



カグラは、文を閉じた。

胸の奥が、少しだけ温かくなる。

「……罪、ですか」

国王が、ぽつりと言う。

「同調しないというのは、
いつの時代もな」

「ええ」

カグラは、夜空を見上げた。

「でも――
罪にするには、
数が足りません」

星は、変わらずそこにある。

声を揃えない者たちは、
今、確かに少ない。

だが――
少ないからこそ、
消しきれない。

サクラ共同体は、
静かに、しかし確実に、
“従わない存在”として
世界に刻まれ始めていた。

次に来るのは、
説得でも、圧力でもない。

分断だった。
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