冷遇された公爵令嬢ですが、敵国の皇太子に溺愛されています

ふわふわ

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第二章 ― 敵国の皇太子に溺愛される ―

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 フローラ・フォン・リヴェールがラグナ帝国の皇太子――クラウス・イーグレッド・ラグナと初めて対面してから、すでに数日が経過していた。
 その朝、重厚な作りの馬車に揺られながら、フローラは車窓の外に広がる風景をじっと見つめている。道なき荒野が続いていたかと思えば、いつの間にか石畳の大通りへと変わり、行き交う人々の姿が増え始めた。
 ここはラグナ帝国の首都、通称「灰銀の都」とも呼ばれる グラナート。今までは名の知れた大国の首都という程度にしか思っていなかったが、いざ目前に広がる街並みを目にすると、そのスケールと活気には圧倒されるばかりだった。

「フローラ様、まもなく帝都の中心街を抜けまして、王宮――いえ、我が帝国では『皇宮』と呼びますが、そちらへ到着いたします」
 窓の外を眺めるフローラに声をかけたのは、護衛の騎士 エドガー・レヴィン だ。初対面のときから変わらず、礼儀正しく穏やかな物腰を崩さない。彼の隣では、同じくラグナ帝国の騎士たちが馬を駆り、フローラを守るように取り囲んでいた。
「はい……ありがとうございます」
 フローラは緊張で少し硬くなった声を返す。これから向かう皇宮こそが、自分の新たな居場所になる。実感が湧かないと同時に、どこか恐ろしさのようなものも感じていた。
 だが、彼女の不安を払うように、前を進む漆黒の馬が一度こちらを振り返る。その背に乗っているのはクラウス――ラグナ帝国の皇太子であり、フローラの「婚約者」になるはずの男性だ。
 彼はほんの少し視線を向け、口元をゆるめる。それは「大丈夫だ。俺がついている」という無言のメッセージにも思えて、フローラの胸は少しだけ温かくなった。

帝都グラナートと皇宮への道

 ラグナ帝国の首都グラナートは、石造りの建築物が立ち並び、街の至る所で行商人が活気を放っている。王国の首都もそれなりに大きいと思っていたが、ここでは人口も商店の数も、その規模が一回りも二回りも大きいように見えた。
 行き交う人々は、これから皇宮へと向かう馬車の列を遠巻きに見守っている。誰もが興味津々らしく、ひそひそと会話しながらフローラたちの姿を見つめる。
 もっとも、これほどの護衛を従えた馬車が通れば、いやでも目立つ。加えて、その中心で先導しているのは皇太子クラウス本人なのだから、人々の視線が集中するのも当然だった。
 フローラは「敵国の娘」が注目を浴びることに落ち着かない思いを感じたが、クラウスは意に介さないどころか、むしろ堂々と先を進んでいく。その姿を見ていると、不思議と胸が高鳴るのだ。
(あの方は本当に何も恐れていないかのよう……)
 王国で育ったフローラには想像すらできなかった“気迫”を宿している。自分とは真逆の性格、まるで昼と夜ほどの違いがあるようにも思えるが、彼の堂々とした振る舞いは頼もしさすら感じさせた。

 やがて、壮麗な門が見えてくる。巨大な石柱と鉄の門扉、その向こうには幾重にも張り巡らされた城壁が控え、さらに奥へ続く道の先に、華やかな宮殿群がそびえ立っていた。
 フローラは馬車の窓を開けて、その威容をまざまざと見つめる。まるで細工が施された宝石箱のように、塔やドーム屋根が連なり、陽の光を受けて白銀にも似た輝きを放っている。
「ここが……ラグナ帝国の皇宮……」
 自然と呟きがこぼれる。
 王国の王城も壮麗な建物だったが、ラグナ帝国の皇宮は規模も装飾も圧倒的だった。王国で長く暮らしていたフローラにとっては、まさに見たこともないような光景が広がっている。
 門の付近では多くの衛兵が控えているが、クラウスの帰還を確認すると、一斉に敬礼をする。続いて大きな門扉が開き、馬車の行列が中へと進んでいった。

皇太子妃候補としての到着

 長い石畳の道を進み、やがて宮殿の正面にある広場へと到着すると、一同は馬車を止めた。
 クラウスは馬からすらりと降りると、フローラの乗る馬車の扉へ近づく。そして、自分の手を差し出しながら、彼女を促す。
「着いたぞ、フローラ。恐れることはない――ここが、お前の新しい居場所だ」
 その手を見つめ、フローラは一瞬戸惑う。婚約者とはいえ、まだ正式な儀式も済ませていない相手。だが、彼女は次の瞬間、意を決してその手を取った。
「……ありがとうございます」
 クラウスの掌は大きく、温もりが感じられる。王国にいた頃には、こんなふうにエスコートされたことはほとんどなかった。アルベルトが愛人を連れていた夜会の光景を思い出し、思わず苦い記憶がよみがえるが――同時に、それをかき消すような安心感があった。
 足を地面に下ろし、フローラが皇宮の正門前に立つと、衛兵や侍従らしき人々が次々に頭を下げる。どうやら、クラウスを直接出迎えるために控えていた者たちらしい。
 一人の侍従がクラウスに声をかける。
「殿下、先ほど陛下より『到着次第、謁見の間へ通すように』との指示がございました。フローラ様をお連れいただきたいとのことです」
「父上が……わかった。すぐに通させてもらう。フローラ、少しばかり急がせるがいいか?」
「はい、構いません……」
 父上――つまりは皇帝陛下が自分と会うことを希望しているという。フローラは一気に緊張感を高めた。相手は大国ラグナ帝国の頂点に立つ人物だ。下手な振る舞いがあれば、今後の身の置き所がなくなるかもしれない。
 しかし、クラウスはそんな彼女の心配を見透かしたように、そっと微笑む。
「大丈夫だ。お前は俺の客人であり、これからは皇太子妃候補でもある。多少のことがあっても、俺が責任を取る。失敗など恐れず、お前の思うままに言葉を交わしてくれればいい」
「……はい」
 その言葉は簡単なようでいて、実際にはとても難しい。王国で長年、周囲の顔色を伺いながら生きてきたフローラにとって、自分の考えをまっすぐ口にするのは苦手中の苦手だったからだ。
 それでも、クラウスの存在がどこか心強いのは事実だった。王国の王太子とは比べ物にならないほどの気概と包容力を持つ彼ならば、もしかしたら本当に「私を守ってくれるのかもしれない」――そう思わせる何かがある。

皇帝との対面

 皇宮の内部へと足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは、豪奢な廊下と天井の装飾だ。黄金や白銀だけでなく、漆黒の石材や深紅の絨毯が絶妙に組み合わされ、帝国らしい重厚な美を作り上げている。
 その廊下を、クラウスとフローラ、そして数名の侍従や騎士たちが連れ立って進んでいく。扉がいくつも並び、所々に甲冑が飾られていたり、美しい壁画が描かれていたりと、見どころは尽きない。
 そして、やや広い空間を抜けた先に、一際頑丈そうな大扉が待ち受けていた。そこには金細工で帝国の紋章が掲げられ、衛兵が二人、厳かに控えている。
「こちらが、謁見の間でございます」
 侍従の言葉に、フローラは緊張で思わず背筋を伸ばす。王国の王城にも「謁見の間」はあったが、そこに通されるときはいつも息苦しい思いをしたものだ。
 扉が開かれ、フローラはクラウスに伴われながら中へ進む。室内は広々としており、左右には華麗な柱が連なり、上部には高い天井がある。奥には玉座らしき豪奢な椅子が据えられ、そこに座していたのは……

「――よく来たな、クラウス。隣にいるのが、例の王国から来た令嬢か」
 玉座の少し手前で立ち上がった男性――壮年の域に入っていると思しきその人物は、鋭い眼光と堂々たる体躯を持ち、まさしく皇帝の威厳を体現していた。
 クラウスは軽く頭を下げる。
「父上。先ほど帰還した。こちらが、王国より迎え入れることとなったフローラ・フォン・リヴェールだ」
 名を呼ばれ、フローラは慌てて礼を取った。
「は、初めまして……フローラ・フォン・リヴェールと申します。皇帝陛下にこうしてお目にかかれること、大変光栄に存じます」
 おそるおそる顔を上げると、皇帝陛下――クラウスの父が、じっとフローラを見つめているのがわかる。その眼差しは厳格ではあるが、敵意や嫌悪は感じられない。むしろ冷静に「どんな人物なのか」を評価しようとしているようだ。
「……なるほど。見たところ、まだ若く、か弱そうな娘だな。だが、王国の王太子を蹴ってでも手に入れる価値があると、我が息子は判断したわけか?」
 フローラが返答に詰まっていると、クラウスが口を開く。
「いや。俺が欲しくなったから、こっちに来てもらっただけだ。それに、そもそも王国の王太子がフローラを放り出したんだ。だったら遠慮なく迎え入れればいいだろう」
 なんとも率直な言い方に、フローラは一瞬ドキリとする。皇帝の前でも、変わらずはっきりした物言いをするあたり、クラウスらしいと言うべきか。
 皇帝は苦笑ともつかない微妙な表情を浮かべるが、その目は息子を頼もしげに見ているようでもある。
「……ふむ、クラウスらしいな。まったく。だが、私は構わん。お前がどう判断しようと、この帝国の後継者はお前だ。花嫁の一人や二人、好きにすればいい」
「父上、数が多いのは勘弁だ。俺にはフローラがいればいい」
 さらりとそう言い放つクラウスの隣で、フローラは恥ずかしさのあまり顔が熱くなる。こんな公の場で、しかも皇帝相手に何を言っているのだろう……と思わず俯きそうになるが、それこそが彼の自然体なのだろう。
 しかし皇帝は、そのやり取りを面白がるかのように微笑を浮かべ、フローラに向き直った。
「フローラ・フォン・リヴェールとやら、歓迎しよう。このラグナ帝国で不自由があれば、遠慮なく言うがいい。ここではお前も、立派な『皇太子妃候補』だ。自分の身を安んじてもらわねばならんからな」
「……あ、ありがとうございます。恐れながら、私など至らぬ点ばかりですが……」
「知らん。至らぬならば学べばいい。学びたければ、うちの息子を使えばいい。お前らの好きにやれば、自然と周りもついてくるだろう」
 実に豪胆な言葉だ。王国での王太子や貴族たちの態度とは大違いだ。ふと、フローラは「本来なら、皇帝陛下はもっと威厳を全面に押し出すような方では?」と思ってしまうが、どうやら彼は必要以上に威圧するつもりはないらしい。
 もちろん内心はどうか分からない。しかし少なくとも、この場ではフローラを敵視していないことは確かだ。それが、彼女にとっては救いだった。

皇宮での暮らしの始まり

 皇帝から直接の「歓迎」を受けたフローラは、その後、皇宮内の一角にある客殿へ案内された。ここは、正式に皇太子妃として迎え入れるまでの間に滞在する場所だという。
 半ば強引に送られてきた王国の荷物――といってもわずかではあったが――は、すでに部屋へ運び込まれていた。彼女専用の侍女や世話役も数名ついており、フローラは早くも戸惑いを隠せない。
(まさか、こんなに広い部屋を与えられるなんて……)
 天井が高く、窓からは中庭が望める。ベッドはフローラが今まで見たことのないようなふかふかな仕様で、調度品も高価そうなものばかり。王国の公爵家でも、ここまで贅沢な部屋はそうそうなかっただろう。
「フローラ様、本日からはこちらに滞在していただきます。ご不便がありましたら、どうぞお申し付けくださいませ」
 そう言って頭を下げるのは、侍女長のような女性だ。やや年配ながら凛とした雰囲気を持ち、初対面のフローラにも丁重に接してくれる。
「は、はい。ありがとうございます。私、こんな立派な部屋……本当に、よろしいのでしょうか」
「もちろんでございます。あなた様は皇太子妃となられる方です。私どもにとっても、大切なお客さまですから」
 それはエドガーと同じような言い方――「大切なお方」という響きが、フローラの胸をじんと温かくする。王国では決して得られなかった扱いだ。
 侍女長は続けて、明日の予定について簡単に説明してくれた。まずは宮廷内の簡単な案内、そして衣装や礼法などの確認があり、その後はクラウスと共に正式な「仮祝宴」へ出席することになるという。
「仮祝宴……ですか?」
「はい。皇太子妃を迎えるにあたって、いきなり大規模な式典を行うのは双方にとって負担が大きいと、殿下がお考えのようでして。まずは身内やごく近しい重臣だけをお招きし、簡単な披露をされるとのことです」
 フローラはその言葉に、正直なところホッと安堵する。王国で催される夜会など、彼女にとっては心が休まるものではなかった。大人数を前に緊張するのはもちろん、何よりアルベルトが他の女性と堂々と踊り、フローラを邪魔者扱いしていた記憶が強く残っているからだ。
(……でも、今回は違う。ここでは、私が……私を歓迎してくれる人がいるかもしれない……)
 期待と不安が入り混じった複雑な気持ちだったが、それでも「邪魔者扱い」されるよりははるかにマシだろう。

クラウスの溺愛と小さな戸惑い

 荷解きを簡単に終え、侍女たちと明日の打ち合わせをした後、フローラは少し部屋で休んでいた。長旅の疲れと、初めて見る皇宮に心が落ち着かないのとで、体がぐったりとしている。
 すると、ふと部屋の外で人の気配がした。どうやら侍女長がドアの向こうで誰かと言葉を交わしているらしい。しばらくして、控えめなノックの音が聞こえてきた。
「フローラ様、失礼いたします。殿下がこちらにいらっしゃいましたが、いかがなさいますか?」
「えっ、クラウス様が……?」
 まさかこんなに早く姿を見せるとは思っていなかった。フローラは慌てて髪や服装を整えようとするが、さほど乱れていないはずなのに心はバタバタと落ち着かない。
「……その……もちろん、お通しください」
 戸惑いつつ返事をすると、扉が開いてクラウスが入ってくる。今日は騎乗用の装備から軽装に着替えているらしく、先ほどまでの武骨な雰囲気はなく、皇太子としての洗練が際立っている。
「よ。部屋の様子はどうだ? 気に入らなかったら、すぐに言えよ」
「い、いえ、とても……とても素敵な部屋です。ありがとうございます」
 フローラは思わず深々と頭を下げる。すると、クラウスはその仕草を苦々しく思ったのか、眉をひそめた。
「そんなに畏まるな。俺はお前の主人でも支配者でもない。……『殿下』呼びも、慣れないなら止めてもいいんだぞ?」
「で、でも……」
 王国では、王太子に対して正しく敬称を使わなければ厳しく叱責されるのが当然だった。だからこそ、クラウスの言うように「呼び捨て」など考えられない。
 彼の気遣いは嬉しい反面、王国で培われた常識が染みついているフローラには、なかなか実践できないのが本音だ。
 そんな彼女の葛藤を察したのか、クラウスは軽く肩をすくめた。
「まあ、無理に呼び方を変えろとは言わないさ。そのうち慣れたら呼び方を変えればいい。――それより、体調はどうだ? 旅の疲れもあるだろうし、何か不便はないか?」
「ご心配ありがとうございます。疲れは少し残っていますが、部屋でゆっくり休めたので、だいぶ楽になりました」
 フローラの答えを聞いて、クラウスは満足げにうなずく。
「そうか。ならよかった。……そうだ、夕食の時間になったら、俺が迎えに来る。せっかくだから、皇宮の食堂まで一緒に歩こうと思ってな。お前も少しは宮殿の様子を知っておいたほうがいいだろう?」
「あ……ありがとうございます」
 そこまで気遣われると思っていなかったフローラは、恐縮しつつも嬉しさがこみ上げる。皇宮は広大で迷いやすそうだし、何よりクラウスの隣を歩いていると、なぜか安心できるのだ。
 しかし、その感情にふと戸惑いが生まれる。王国では、アルベルトに会うたびに憂鬱な気分になったものだが、今こうしている自分は明らかに違う。
(私……クラウス様といると、こんなにも落ち着くんだわ……)
 まるで、長年の孤独を少しずつ癒やしてもらえるような、不思議な感覚。敵国の皇太子なのに――と自分を戒めても、心のどこかで安堵しているのがわかる。
 クラウスはそんなフローラの表情をじっと見つめ、くつくつと小さく笑った。
「何だ、変な顔して。ほら、もう少し肩の力を抜け。ここはお前を虐げるような場所じゃない。むしろ、歓迎する者ばかりだと思うぞ?」
「……はい。ありがとうございます」
 答える声が少し震えるのは、嬉しさと戸惑いが混ざっているからだ。けれど、その震えを上回るほどの安らぎを、フローラは感じ始めていた。

新たな生活の予感

 翌日、フローラは侍女たちの案内のもと、皇宮のあちらこちらを見て回った。大理石の回廊や噴水のある中庭、格式高い書庫や音楽室など、その豊かさと広さには圧倒されるばかりだ。
 さらに驚くべきは、そこにいる人々のほとんどがフローラに対し、温かい言葉や態度を見せることだった。もちろん中には、敵国の娘に対して懐疑的な視線を向ける者もいるが、露骨に冷遇されることはない。
 侍女長曰く、「殿下がすでに『フローラを粗略に扱うことは許さない』ときっぱり宣言している」らしい。それだけでなく、皇帝もフローラを『大事な客人』と位置づけているのだという。
 そのため、周囲からは「さすがは皇太子が見初めただけある」「思っていたよりずっと可憐な方だ」などの囁きさえ聞こえてくる。フローラは戸惑いながらも、「こんなに優しくされるなんて……」と感謝の気持ちを抱かずにはいられない。
(私、王国では何もしてもらえなかったのに……)
 思い出すのは王宮での日々。アルベルトをはじめ、多くの貴族がフローラを見向きもせず、むしろ興味を持たれたのは揚げ足を取られるときや、蔑むようなときだけだった。
 だが、ここでは違う。自分にきちんと話しかけ、必要なら手を貸してくれる。もちろん、すべてがフローラ個人の魅力や力量を認められての行動ではなく、「皇太子が溺愛しているから」「皇帝が目をかけているから」という要因が大きいのだろう。
 それでも、今までの冷遇に比べれば、どれほど救われるだろう。フローラはその好意を素直に受け止めつつ、少しずつ宮廷での生活に慣れていこうと決意した。

仮祝宴へ向けての準備

 そんな中、フローラには近々行われる「仮祝宴」のために、ドレスやアクセサリーを準備するという大切な役目が課せられた。といっても、ほとんどは宮廷の仕立て屋や宝石商が手配してくれるのだが、最終的にどの衣装を選ぶか、どんなデザインを好むかはフローラの意思が尊重される。
 王国にいた頃は、継母や異母妹に好き勝手に決められ、フローラの好みが反映されることなどほとんどなかった。それを思うと、こうして自由に選べる環境は嬉しくもあり、同時にまごついてしまう。
「えっと……この生地、とても綺麗ですね。でも、こちらの淡い色合いも素敵ですし……どうしましょう」
 サロンのような部屋で、侍女や仕立て屋たちに囲まれながら、フローラは目移りしていた。クラウスが「好きなものを選べばいい」と言っていたが、あまり派手過ぎても……と考えると迷いが尽きない。
 すると、そこへ軽やかな足音が響いたかと思うと、聞き慣れた低い声がかかる。
「どれがいいか決まったか?」
「……クラウス様?」
 意外なことに、本人がひょっこりと現れたのだ。騎士団の制服姿のまま、どうやら何か用事の合間に様子を見に来たらしい。周囲の者たちが慌てて一礼するのをよそに、クラウスはさらりとフローラの隣に立って布を手に取った。
「ふむ……こっちの色の方が、お前の髪や瞳には合うんじゃないか? それに、こっちは派手すぎるだろう」
「え……でも、私みたいな地味な人間が、あまり淡い色を着ても映えないんじゃ……」
 自分の容姿に自信がないフローラは、そう遠慮がちに返す。しかしクラウスは、まるで否定するように首を横に振った。
「そんなことはない。お前は姿形が繊細だから、やたらと鮮烈な色より、淡い色の方が魅力が生きると思うぞ。それに、もし華やかさが足りないなら、宝石で飾ればいい」
 ストンと落ちるような、確信をもった口調。フローラは思わず顔が熱くなる。
「私のこと、そんなに見て……いや、あの、すみません。私なんかが……」
「謝るな。俺がお前を見て何が悪い。――それより、仮祝宴ではお前が主役だ。目立ってこそ意味があるだろう? 遠慮などいらんさ」
 まるで「もっと堂々としていろ」と言わんばかりの言葉に、フローラは恥ずかしさと嬉しさを同時に味わう。
 仕立て屋や侍女たちも、「殿下がお勧めになるなら、ぜひそうなさいませ」と押してくる。結果的に、フローラは淡いラベンダー色の生地に繊細な銀糸を織り込み、胸元や袖口に控えめなレースをあしらったドレスを選ぶことに決めた。
 宝石は、ラベンダーや銀との相性を考え、ほんのり紫がかったアメジストと透明感のある水晶を中心に飾ることで、気品ある輝きを演出できるらしい。まるでクラウスが言うように「フローラの雰囲気に合わせた」仕上がりになるとのことだ。

 それらの相談を終えると、いつの間にか夕暮れの時間が近づいていた。クラウスは他の用事もあるらしく、途中で部屋を出て行ったが、去り際に「よく似合いそうだな。楽しみにしてる」と微笑んで言い残す。
(楽しみにしてる――ですって……)
 その言葉がずっと耳に残り、フローラの胸をどこか甘酸っぱい気持ちが満たしていく。敵国の皇太子でありながら、自分をここまで大切に思ってくれる人がいるなんて、かつては想像もできなかった。
 一方で、自分が彼にふさわしい存在なのかという不安は消えない。だが、ここで弱音を吐いてばかりでは申し訳ない――ほんの少しでも、自分にできる努力をしよう。そう思い、フローラはドレス選びで感じた喜びを心の支えに、明日以降の準備に身を引き締めた。

ざわめく宮廷、そして仮祝宴の幕開け

 準備期間はあっという間に過ぎ、仮祝宴が行われる日がやってきた。会場となるのは皇宮の大広間ではなく、やや小規模な舞踏の間。とはいえ、その装飾や雰囲気は十分に華やかで、遠慮なく豪奢なシャンデリアや高級な絨毯が敷かれている。
 招かれたのは皇帝や皇帝の側近、そしてクラウスに近しい重臣や貴族たち、さらにフローラが正式に「皇太子妃候補」として紹介されるための少数の家族連れなど。総勢はそこまで多くないと言っても、王国の夜会と同じかそれ以上の賑わいだ。
 フローラは侍女たちにドレスを着せてもらい、髪を結い上げ、控えめではあるが煌びやかな装いに仕上げてもらった。鏡に映った自分の姿が、あまりにもいつもの自分と違いすぎて、思わず戸惑ってしまう。
「これ……本当に私……?」
「とてもお似合いでございますわ、フローラ様。まるでラベンダーの花がふわりと咲いたようで、とても優美です」
 侍女たちも興奮気味に褒めてくれる。フローラは緊張と嬉しさで胸がいっぱいになりそうだった。もしこれを王国の人々が見たら、どんな顔をするだろう――そんな考えがちらりと脳裏をよぎるが、急いで追い払う。
 今のフローラは、もう王国の誰かに評価されるために着飾っているわけではない。クラウスや、彼ら帝国の人々に向けて、自分なりに最善を尽くしているのだ。

「フローラ、入るぞ」
 控室の扉の外から聞こえる低い声。その瞬間、フローラは心臓が跳ねるのを感じた。
「は、はい……お入りください」
 扉が開き、そこに現れたクラウスは、シンプルながらも高級感のある紺色の正装を纏っていた。普段の騎士団の制服とは違って、身体のラインがすっきりと見える仕立てであり、彼の凜とした雰囲気をより際立たせている。
 一目見て、フローラは「とても格好良い」と素直に思った。王国の夜会で見ていたアルベルトの華美な装いとは異なり、洗練されていながらも主張しすぎない。それが、クラウス自身の魅力をさらに引き立たせていた。
 そしてクラウスの視線がフローラに移る。一瞬、言葉を失ったように見えたのは気のせいだろうか。
「……なるほど。予想通り、いや、それ以上に似合ってるな」
「そ、そんな……ありがとうございます……」
 頬が熱くなる。まるで見つめられているだけで心拍数が上がっていくような感覚。王国でのつらい夜会の思い出が塗り替えられていくようで、少し怖いほどだ。
 クラウスはフローラの手を取ると、ゆっくりと口づけを落とした。宮廷での正しいエスコートの仕方だが、王国ではアルベルトからそんな扱いを受けたことはほとんどない。
「行こうか。お前を紹介したい連中がいっぱいいる。堂々と胸を張って、俺の隣を歩け」
「はい……」
 フローラは深呼吸し、クラウスの腕にそっと手を添える。今日は間違いなく、彼女にとって大きな節目になるだろう――そう思いながら、二人は並んで舞踏の間へと向かった。

再び踊る円舞、そして感じる幸せ

 舞踏の間へ足を踏み入れると、すでに集まっていた貴族たちや重臣たちの視線が、一気にフローラへと集中する。緊張で体がこわばりそうになるが、クラウスの腕の温もりが支えになる。
 まずは皇帝が簡単な挨拶を述べ、続いてクラウスが「フローラ・フォン・リヴェールこそ、これより我が妃となる娘だ」と紹介した。その言葉に、周囲はざわめきながらも拍手を送り、フローラは少し安心する。
 その後は立食の形で、軽く飲食を交えながら談笑する場が設けられた。フローラのところへも、様々な人が挨拶に来る。
「殿下のお心に留まるとは、さぞかし素晴らしい才をお持ちなのですね」
「遠慮なく、ラグナ帝国を第二の故郷と思っていただければ」
 一方で、「王国の人間など信用ならない」と言わんばかりの鋭い視線を投げる者も、ちらほら見受けられる。フローラは苦笑しながらも、心中で「それも当然かもしれない」と納得した。
(そもそも王国とラグナ帝国は、長年にわたり対立関係にあったのだもの。簡単に打ち解けられるわけがない……)
 だが、そういった厳しい反応は予想よりずっと少ない。おそらく、皇帝やクラウスの後押しが大きいのだろう。
 やがて音楽隊が演奏を始め、貴族たちがダンスの輪を作り始めた。クラウスはすかさずフローラの手を取り、にやりと笑ってみせる。
「踊ろうか、フローラ。お前のステップ、まだ見たことがないからな」
「え……あの……わたし、それほど上手くは……」
 王国では、夜会で踊る機会はあったが、アルベルトは常にカトリーナを選び、フローラを誘わなかった。だからこそ、実際に男性とペアを組んで踊る場面は少なく、得意かどうかすら分からないのだ。
 しかしクラウスは、「ならちょうどいい。俺がリードしてやる」と言わんばかりの勢いで、フローラをダンスフロアへと導いた。
 曲が始まり、クラウスが手を軽く添えてくる。その指先から伝わる熱量に、フローラは思わず息が詰まる。
「大丈夫。俺に任せろ」
 クラウスの声とともに足を踏み出すと、思いのほか自然に体が動き始める。王国で習ったステップは形式的なものだったが、相手のリードがしっかりしているおかげで、スムーズに流れに乗ることができた。
 初めは固さがあったものの、次第に緊張が解けていく。耳に響く優雅な旋律、クラウスの腕の中で回転する感覚――まるで自分が空を舞う小鳥になったかのように、心地よい浮遊感がフローラを包む。
 王国での辛い夜会の記憶が鮮明に蘇る。アルベルトはカトリーナと踊り、フローラは孤独を抱えて見守るしかなかった。だが、今は違う。踊っているのは自分だし、隣にいるのは誰よりも頼もしい皇太子。
 ふと、フローラの瞳から熱いものがこぼれそうになる。苦しかった過去と、今ここにある幸せの対比が、あまりにも強烈だからだ。
「フローラ……?」
 クラウスが怪訝そうに呼びかけるが、フローラは必死に微笑を作る。ここで涙を流すわけにはいかない。
「す、すみません……踊っていて、なんだか胸がいっぱいになって……」
 それを聞いたクラウスは、一瞬驚いたような表情を浮かべ、すぐに柔らかな笑みを返す。
「そうか。ならいい。――これからは、お前が望むだけ何度でも踊れるぞ。俺がその相手をしてやる」
 その言葉が、どれほどフローラの心を救っただろう。彼女はわずかに唇を噛み、必死で泣きそうになるのをこらえながら頷いた。

 やがて曲が終わり、二人は息を整える。周囲からは拍手が起こり、フローラは照れながらクラウスの肩から手を外した。
「ありがとう……ございました。とても……嬉しかったです」
「俺もな。お前の踊り、もっと見たいと思った。近いうちにまた別の舞曲も踊ろう」
 視線を絡ませたまま微笑み合う二人の様子は、まさに「溺愛される皇太子妃候補」と「その相手に惚れ込んでいる皇太子」そのものだった。

王国への複雑な想い

 楽しい時間はあっという間に過ぎ、仮祝宴も無事に終わりを迎える。フローラは何度となく貴族たちから挨拶を受け、クラウスとのダンスを披露し、名実ともに「皇太子妃候補」としての第一歩を踏み出した。
 その夜、部屋に戻って侍女たちがドレスを脱がせてくれる最中、フローラはふと考え込む。
(私、こんなにも幸せでいいのかしら……)
 王国での日々を思い返すと、悔しさや悲しみが込み上げてくる一方で、ほんの少しの「ざまあみろ」という気持ちも湧いてしまう。あれほど虐げられてきた自分が、いまや敵国の皇太子から溺愛されているのだから。
 アルベルトはどうしているだろう。公爵家の父や継母、異母妹は……。自分がラグナ帝国でこうして歓迎され、大切に扱われていることを知ったら、どんな反応をするだろうか。
 きっと、「そんなはずはない」と嘲笑するかもしれない。あるいは、いつか後悔する日が来るかもしれない。それでも、それはもうフローラの知るところではない。
 深くため息をつき、フローラは夜着に着替える。鏡の前に立つと、先ほどまでの華やかな装いから一変、ただの少女に戻った自分が映っていた。
(私は、ただ……クラウス様に応えられるようになりたい。そんな気持ちが日に日に強くなっている……)
 まだ正式に「皇太子妃」として認められたわけではない。結婚の儀はこれからだし、帝国の人々がすべて快く受け入れてくれるとは限らない。
 それでも、フローラは前を向こうと心に決める。もう誰かの陰で縮こまっているだけの人生には戻りたくない――そう強く願うのだった。

クラウスからの贈り物

 翌朝、フローラが起きて身支度を整えようとすると、侍女が少し興奮した面持ちで入ってきた。
「フローラ様、殿下から贈り物が届いております!」
「え……私に、贈り物……?」
 まだ仮祝宴を終えたばかりなのに、早速何を贈るというのだろう。怪訝に思いつつも応接室に行ってみると、そこには美しい花束と、小さな箱が置かれていた。
 花束は、淡い紫から白、そして青みがかったグラデーションの花でまとめられており、仄かに甘い香りが漂う。箱を開けてみると、そこには繊細な銀細工のブレスレットが収められていた。アメジストと水晶が散りばめられ、まるで先日のドレスに合わせて作られたようなデザインだ。
 ――それどころか、ドレスに使われた銀糸や宝石の色合いとぴったり合致している。
「これ……クラウス様が? こんな素敵なもの、いただけません……」
「いいえ、殿下から『フローラにぜひ身に着けてほしい』との伝言がありましたよ。どうぞ受け取って差し上げてくださいな」
 侍女に促され、フローラはおそるおそるブレスレットを手に取る。光に照らされてキラキラと輝くそれは、今まで一度も身にしたことのないほどの高価で洗練された装飾品だった。
(こんなもの……私でいいの?)
 正直、恐れ多くて心が落ち着かない。だが、クラウスの気持ちを踏みにじるわけにもいかず、感謝の念が湧いてくる。
 花束には小さなカードも添えられており、そこにはクラウスの名前と短い言葉だけが書かれていた。
「――“きっと似合う。次の機会に見せてくれ”」
 それを読んだ瞬間、フローラの頬は赤く染まり、胸が締めつけられるような感覚に包まれる。
(まるで恋文みたい……クラウス様、こういう演出もなさるのね……)
 王国で過ごしたときには経験したことのない甘い気持ちが、フローラの心を占領していく。

新たな一歩、そして始まる物語

 こうして、フローラはラグナ帝国での日々を本格的に始動させることになった。
 王太子としての務めに忙しいクラウスとは、四六時中一緒にいられるわけではないが、彼は必ずといっていいほどフローラを気遣い、時間を見つけては声をかけに来る。
 そのたびに、フローラは自分が「捨てられた公爵令嬢」だった過去を忘れてしまいそうになる――あるいは、それを乗り越えるためにこそ、クラウスがそばにいてくれるのだと感じる。
 一方で、王国ではアルベルトと愛人カトリーナの体たらくが早くも表面化し始めているという噂が流れ始めていた。だが、その詳細はまだフローラの耳には届かない。
 今はただ、彼女にとって「新たな生活」を軌道に乗せることが最優先だ。帝国の礼法、貴族との交流、そして皇太子妃としての公務――覚えることは山積みだが、クラウスという大きな支えを得たフローラには、これまでにない前向きな気力が芽生えつつある。
(私にできることがあるなら、少しずつでいいから力になりたい。クラウス様に守られてばかりでは、申し訳ないから……)
 そんな決意を心に抱きながら、フローラはまた一歩、階段を上るように成長していく。
 捨てられた公爵令嬢として、かつては何もかも諦めていた――けれど、今の彼女は違う。ラグナ帝国の皇太子妃となる未来を手繰り寄せ、温かな愛に包まれながら、自分自身の価値を見いだそうとしていた。

 ――こうして、「捨てられた公爵令嬢」だったフローラは、ラグナ帝国にて本当の意味での「溺愛生活」をスタートさせることになる。
 王国から忘れられた存在としてではなく、新たにラグナ帝国の皇太子妃候補として、人々に受け入れられ、クラウスからの熱い想いを受け止めながら……。
 まだ道半ばではあるが、彼女の物語は確かに動き始めたのだ。過去の苦しみを乗り越え、真の幸せを掴むために――。


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