婚約破棄されましたが、辺境公爵に溺愛されて自由まで手に入れました

ふわふわ

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第6話 自由の味と、静かに動き出す影

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午前中いっぱい読書を堪能したエレノアは、
お気に入りのレモンティーを片手に屋敷の庭をゆっくり散歩していた。

春風が頬を撫で、色とりどりの花が揺れる。

「ふふ……婚約破棄って、こんなにも世界を美しくするのですわね……」

隣のミリアが小声でつぶやく。

(お嬢様……やっぱり幸せそう……)

 エレノアの自由満喫スケジュール

ここ二日ほどで、エレノアの生活は
**「王宮勤め」から「貴族ライフ(真の姿)」**へと完全に様変わりしていた。

◇朝:自然と目が覚めるまで寝る
◇午前:読書(王宮では禁止されていた長時間読書!)
◇昼:自分の好きなメニューで軽食
◇午後:お菓子作りや散歩
◇夕方:また読書
◇夜:好きな時間に眠る

……どう見ても、完全勝利の生活である。

ミリアはついに口にしてしまう。

「……お嬢様、本当に……婚約破棄、嬉しかったんですね?」

エレノアは遠慮なく笑顔を見せた。

「嬉しかった、ではなく“最高でしたわ”。
人生で一番の贈り物ですもの」

「……あっさりすぎる……」

エレノアは首をかしげた。

「ミリア? 涙の理由は演技ですし。
あれで王都の皆さまから同情がいただけるのですから、合理的ですわよ?」

(※お嬢様の“合理”はだいぶ強めです)

 王子のほころび、さらに広がる

そこへ、別の侍女が飛び込んできた。

「エレノア様! また王子殿下の新しい噂が……!」

「まぁ、今度は何かしら?」

侍女は息を弾ませながら説明した。

「リリィ様が……殿下の資金で高価な宝飾品を買い集めているようで……
“王家の財布が軽くなっている”と貴族の間で話題に……」

(えっ……もうそんな段階? 早すぎません?)

エレノアは心の中で軽く驚きつつ、紅茶をもう一口。

「きっと殿下、恋に盲目なのでしょうね。
わたくしには関係ありませんけれど」

ミリア(※ずっと関係ない顔をしている……)

辺境公爵の“静かな反応”

その頃――
王都から離れた辺境、ノルヴィア領の公爵邸。

冷徹と名高い公爵ライナルトは、
文官が差し出した報告書を静かに読んでいた。

「……婚約破棄?」

「はい、閣下。王都では相当な騒ぎになっております」

ライナルトは淡々と続きを読み、
ふと細く眉を寄せた。

「エレノア・アルディナ……。
あの令嬢が、泣き崩れた……と?」

文官がうなずく。

「とても健気で……民衆からは“王妃にふさわしい方だった”という声が……」

ライナルトは低い声で短く言った。

「……泣くような娘ではないはずだが」

文官は息を呑む。

「閣下は……彼女をご存じなのですか?」

ライナルトは報告書を閉じた。

「少しな。
かつて一度、王都で見かけたことがある」

その瞳に、わずかな光が宿る。

「――気になる女だ」

文官は驚愕して書類を取り落としそうになる。

(閣下が、女性に興味を……!?)

ライナルトは静かに椅子を立った。

「……動向を追え。
王都で何が起きているか、詳しくな」


 夕暮れ、エレノアは気付かない

そのころエレノアは、
焼き立てのクッキーを皿に並べていた。

「ふふ……焼き加減も完璧ですわね。
わたくし、本当に才能ありますわ」

ミリアは呆れながらも嬉しそうだ。

「お嬢様……本当に日常を満喫して……」

「当たり前ですわ。
人生から“義務”が消えたら、こうなるものですの」

――そう、エレノアは知らない。

彼女の自由を楽しむ姿が、
ある男の心を刺激していることを。

そしてその男こそ、
後に彼女の運命を変える相手だということを。

夕日が屋敷を黄金色に染め、
クッキーの甘い香りが広がる中――

エレノアの日常は静かに続いていく。

だが、静かさは長く続かない。

すでに“公爵ルート”はスタートしていたから。
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