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第25話 王子の“復縁願望”と、エレノアの完璧な拒絶
しおりを挟むリリィ逃亡の翌日。
アレクシオン王子は、深夜まで一睡もできなかった。
(……エレノア……)
失った婚約者の価値が、今さら胸に重くのしかかる。
(私は……なんて愚かな選択を……)
王子はついに決意し、王宮を抜け出した。
向かう先は――辺境公爵領。
「エレノアに謝らなければ……!
そして……戻ってきてもらわなければ……!」
その必死さは、かつてエレノアを捨てたときの傲慢さとは別人のようだった。
◆ 辺境公爵邸の門前
アレクシオンが馬車を降りた瞬間、門番が威圧するように立ちはだかった。
「第一王子殿下、本日はどのようなご用件で?」
「エレノアに会いたい。すぐに通してくれ!」
「申し訳ございませんが、事前の連絡がない来訪はお断りしております」
「私は王子だぞ!? 門を開けろ!!」
しかし門番は眉ひとつ動かない。
「ここは“公爵領”でございます。王宮の常識は通用しません」
王子は顔を赤くする。
「で、では……伝えてくれ!
“アレクシオンが会いたがっている”と……!」
「確認してまいります」
門番は淡々と屋敷へ戻り、そして十分後――
「エレノア様よりお返事をお持ちしました」
「お、おお……! で、ではエレノアは……!」
アレクシオンは希望に満ちた顔で身を乗り出した。
「――『必要ではありません』とのことです」
「…………………………は?」
王子の脳が一瞬止まった。
◆ エレノアの返答
門番は淡々と続けた。
「『私の人生に王太子殿下は必要ございません。
どうか二度と私の前にお姿を現されませんように』――以上です」
「そ、そんな……! エレノアは……本気で……?」
「はい。本気でございます」
「な、なぜだ!?
私は間違っていた! 取り返したい! やり直したいんだ!!」
門番はぴしゃりと言い切った。
「殿下。
やり直したいのは“殿下だけ”なのでは?」
「……っ!」
◆ 王子の懇願
それでも王子は諦めなかった。
「エレノアは……今、幸せなのか……?
もし不幸なら……私は――」
「エレノア様は大変お幸せです」
「……!」
「毎日、自由に過ごされ、書物を読み、庭でお茶を楽しみ、
公爵様からも大変大切に扱われております」
アレクシオンの胸がずきんと痛む。
(……俺が、捨てた……
そのエレノアを、公爵が……大切に……?)
痛みは罪悪感と後悔でじわじわと広がっていった。
◆ 公爵からの“追撃”
その直後、門の奥から冷たい声が響いた。
「帰れ、アレクシオン」
ライナルト公爵が歩み出てくる。
王子の顔が引きつる。
「ら、ライナルト公爵……!」
「ここにエレノアはいない。彼女は今日も平穏に過ごしている。
その日常に、お前を入れるつもりはない」
「お、お願いだ……! 一度だけでいい、会わせてくれ……!」
「断る」
公爵の声は氷の刃のように鋭かった。
「王都で彼女を追い詰め、傷つけ、見捨てたのはお前だ。
今さら取り戻せると思うな。――エレノアは“解放された”のだ」
「……っ!!」
「そして、二度とその自由を奪わせはしない」
王子は膝から崩れ落ちた。
「俺は……俺は……どうすれば……」
「知らん。
だがひとつ言えるのは――
“エレノアにはお前の居場所はもうない”ということだ」
その言葉は、王子の胸に深く突き刺さる。
◆ 王子、絶望の撤退
馬車に戻ったアレクシオンの顔は死人のように青かった。
「……エレノア……」
かつて見下していた婚約者の名前を、
今は泣きそうな声で呼ぶしかできなかった。
こうして――
王子の復縁願望は、門前で“一刀両断ざまぁ”となって終わった。
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