婚約破棄されましたが、辺境公爵に溺愛されて自由まで手に入れました

ふわふわ

文字の大きさ
24 / 39

第25話 王子の“復縁願望”と、エレノアの完璧な拒絶

しおりを挟む


 リリィ逃亡の翌日。
 アレクシオン王子は、深夜まで一睡もできなかった。

(……エレノア……)

 失った婚約者の価値が、今さら胸に重くのしかかる。

(私は……なんて愚かな選択を……)

 王子はついに決意し、王宮を抜け出した。
 向かう先は――辺境公爵領。

「エレノアに謝らなければ……!
 そして……戻ってきてもらわなければ……!」

 その必死さは、かつてエレノアを捨てたときの傲慢さとは別人のようだった。

 

◆ 辺境公爵邸の門前

 アレクシオンが馬車を降りた瞬間、門番が威圧するように立ちはだかった。

「第一王子殿下、本日はどのようなご用件で?」

「エレノアに会いたい。すぐに通してくれ!」

「申し訳ございませんが、事前の連絡がない来訪はお断りしております」

「私は王子だぞ!? 門を開けろ!!」

 しかし門番は眉ひとつ動かない。

「ここは“公爵領”でございます。王宮の常識は通用しません」

 王子は顔を赤くする。

「で、では……伝えてくれ!
 “アレクシオンが会いたがっている”と……!」

「確認してまいります」

 門番は淡々と屋敷へ戻り、そして十分後――

「エレノア様よりお返事をお持ちしました」

「お、おお……! で、ではエレノアは……!」

 アレクシオンは希望に満ちた顔で身を乗り出した。

「――『必要ではありません』とのことです」

「…………………………は?」

 王子の脳が一瞬止まった。

 

◆ エレノアの返答

 門番は淡々と続けた。

「『私の人生に王太子殿下は必要ございません。
 どうか二度と私の前にお姿を現されませんように』――以上です」

「そ、そんな……! エレノアは……本気で……?」

「はい。本気でございます」

「な、なぜだ!?
 私は間違っていた! 取り返したい! やり直したいんだ!!」

 門番はぴしゃりと言い切った。

「殿下。
 やり直したいのは“殿下だけ”なのでは?」

「……っ!」

 

◆ 王子の懇願

 それでも王子は諦めなかった。

「エレノアは……今、幸せなのか……?
 もし不幸なら……私は――」

「エレノア様は大変お幸せです」

「……!」

「毎日、自由に過ごされ、書物を読み、庭でお茶を楽しみ、
 公爵様からも大変大切に扱われております」

 アレクシオンの胸がずきんと痛む。

(……俺が、捨てた……
 そのエレノアを、公爵が……大切に……?)

 痛みは罪悪感と後悔でじわじわと広がっていった。

 

◆ 公爵からの“追撃”

 その直後、門の奥から冷たい声が響いた。

「帰れ、アレクシオン」

 ライナルト公爵が歩み出てくる。
 王子の顔が引きつる。

「ら、ライナルト公爵……!」

「ここにエレノアはいない。彼女は今日も平穏に過ごしている。
 その日常に、お前を入れるつもりはない」

「お、お願いだ……! 一度だけでいい、会わせてくれ……!」

「断る」

 公爵の声は氷の刃のように鋭かった。

「王都で彼女を追い詰め、傷つけ、見捨てたのはお前だ。
 今さら取り戻せると思うな。――エレノアは“解放された”のだ」

「……っ!!」

「そして、二度とその自由を奪わせはしない」

 王子は膝から崩れ落ちた。

「俺は……俺は……どうすれば……」

「知らん。
 だがひとつ言えるのは――
 “エレノアにはお前の居場所はもうない”ということだ」

 その言葉は、王子の胸に深く突き刺さる。

 

◆ 王子、絶望の撤退

 馬車に戻ったアレクシオンの顔は死人のように青かった。

「……エレノア……」

 かつて見下していた婚約者の名前を、
 今は泣きそうな声で呼ぶしかできなかった。

 こうして――
 王子の復縁願望は、門前で“一刀両断ざまぁ”となって終わった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

阿里
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています

ゆっこ
恋愛
 「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」  王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。  「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」  本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。  王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。  「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

貧乏人とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の英雄と結婚しました

ゆっこ
恋愛
 ――あの日、私は確かに笑われた。 「貧乏人とでも結婚すれば? 君にはそれくらいがお似合いだ」  王太子であるエドワード殿下の冷たい言葉が、まるで氷の刃のように胸に突き刺さった。  その場には取り巻きの貴族令嬢たちがいて、皆そろって私を見下ろし、くすくすと笑っていた。  ――婚約破棄。

平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」  その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。  王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。  ――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。  学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。 「殿下、どういうことでしょう?」  私の声は驚くほど落ち着いていた。 「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」

【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、 隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。 だが私は知っている。 原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、 私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。 優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。 私は転生者としての知識を武器に、 聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、 王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。 「婚約は……こちらから願い下げです」 土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。 私は新しい未来を選ぶ。

「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。 広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。 「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」 震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。 「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」 「無……属性?」

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

処理中です...