「元婚約?最初からあなたなんか蚊帳の外ですのに、婚約破棄ですか?」

ふわふわ

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6章

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 ニーノ王子がセブン王子に怒りをぶつけた日のあと、王宮内はさらに慌ただしさを増していた。これまでは「次期国王は、第一王子のファストか、それとも第二王子のニーノか」という二択が当然視されていたが、近頃では「第七王子のセブンが本命ではないか」という意見が、ささやきから確信めいた噂へ変わりつつある。
 そんな空気の中、公爵令嬢フォウ・シックスは、いつものようにセブンのもとを訪れようとしていた。ところが、王宮に到着すると、彼女に声をかけてきたのは意外な人物――第一王子のファストだった。彼は長身を活かして人ごみを抜け、フォウの前で穏やかな笑みを浮かべる。

「おはよう、フォウ。ちょうど探していたところだ。……セブンと話す前に、少し私の話を聞いてもらえないだろうか?」

「ファスト殿下。もちろん構いませんわ。何かご用件が?」

 フォウが恐縮しながら答えると、ファストは軽く頷いて彼女を回廊の奥へ案内する。そこで扉を開けた小部屋は、王族の打ち合わせや小会議に使われるプライベートスペースらしく、適度な広さに整った調度品が配置されていた。
 ファストが椅子を勧めるので、フォウはスカートの裾を揃えながら腰を下ろす。すると、彼は真剣な表情のまま、ゆっくりと口を開いた。

「まずは、セブンのことで礼を言いたい。君が学問を見てくれているおかげで、彼は前にも増して知識や視野を広げている。私も助かっているんだ」

「いえ、私こそ、あの子の知性に触れられるのは何よりの光栄ですわ。セブン様は、まだ七歳とは思えないほど優秀でいらっしゃいますもの」

 フォウが微笑むと、ファストも小さく笑みを返した。だが、すぐにその表情が曇る。

「ただ……近頃、ニーノの苛立ちは日増しに高まっている。フォウも知ってのとおり、セブンに対する嫉妬だけではなく、“自分が王となる可能性が下がっている”と感じているようだ。婚約者のアミリアまでもが、あからさまにセブンに傾倒しているとなれば、心穏やかではいられないだろう」

「はい、私もセブン様から話をうかがっております。ニーノ様の態度が、日に日に攻撃的になっていると……」

 ファストは深く息を吐き、視線をテーブルへ落とす。その横顔には、王子でありながら弟たちをまとめ切れていないという自責の念がにじんでいた。

「ニーノをどうにか説得できればいいのだが……あいつは自尊心が高すぎる。父上は『実力主義』と宣言こそしていないものの、実際にはセブンを王位候補に入れるつもりがあるようでね。ニーノには、その事実がどれほど耐え難いかわからない」

「私としては、セブン様の将来がどうなろうと、お支えしたい気持ちでおります。ですが、ニーノ様がそれを妨げようとするなら……」

「……フォウ。もし、セブンがこの国の王となる未来が訪れたら、そのとき君はどうする?」

 ファストの問いに、フォウは一瞬まばたきをした。まるで心の奥を見透かすような質問だ。彼女は可能な限り落ち着いた声を保ちつつ、答えを紡ぐ。

「私は、セブン様が何を選ばれようとも、そばでお助けしたい。それだけです。……たとえ公には理解されないかもしれませんが、私のこの想いは揺るぎません」

 それを聞いたファストは、小さくうなずいて椅子から立ち上がる。その瞳には、どこかフォウに対する信頼が垣間見えた。

「わかった。セブンには、これから一層の重圧がのしかかると思う。ニーノばかりでなく、重臣やほかの王子たちとの衝突もあるだろう。君のような知恵と胆力を持つ者がそばにいてくれるのは、ありがたいことだ」

「ファスト殿下……」

 フォウが立ち上がろうとしたとき、ファストは軽く手を挙げて制止する。

「すまない、まだ話がある。実は近く“大規模な国政会議”が開かれる予定でね。そこでは、今後の国政方針――特に地方開発や財政再建について具体的な提案が募られるだろう。セブンも、私とともにその場で意見を述べることになる。君にも、ぜひ協力してもらいたいんだ」

「大規模な国政会議……ですか。セブン様のお考えを、正式に発表する場が与えられるのですね」

「そういうことになる。だが、ニーノにとっては、“セブンの優秀さが世間に知れ渡る”機会になるのは面白くないはず。激しい反発や妨害があるかもしれない。それだけに、事前にしっかり準備しておきたい」

 ファストはそこで言葉を切り、フォウの目をまっすぐ見据えた。

「フォウ、君はセブンに学問を教えるだけでなく、彼の意見をまとめるサポートもできるだろう? もし彼がうまくプレゼンテーションできれば、国王や重臣たちに対しても説得力が増す。これは、セブンの将来を左右する大きな転機になるはずだ」

「……わかりました。私にできることがあれば、全力を尽くします。セブン様の力になれるなら、こんなに光栄なことはありません」

 フォウが力強く答えると、ファストは満足げに微笑み、部屋を後にした。彼の背中には、弟を支えたいという純粋な願いと、王族としての責務を背負う重苦しさが入り混じっているように見えた。
 ファストが去った後、フォウはしばし黙考した。――セブンが国政会議で自分の意見を述べるとき、それは同時に“彼の評価が一気に高まる瞬間”でもある。王位への道が一気に開ければ、ニーノは一層苛立ち、アミリアはそれに拍車をかける形になるかもしれない。とはいえ、フォウはもう揺るぎない。セブンが王道を歩むなら、どこまでも付いていくまでだ。

 やがて思いを振り切るように廊下へ戻ると、今度はアミリア・グレイスが待ち構えたかのようにフォウの前に立ちふさがった。相変わらず華やかなドレスに身を包んでおり、その瞳には強い光が宿っている。

「フォウ様、お急ぎのところ失礼。……もしや、ファスト殿下と今後の国政会議についてお話しされていたのではありませんこと?」

 フォウは驚きつつも、あくまで上品に微笑んで答える。

「ええ、少し。セブン様があの場でどのような発言をされるか、準備をする必要がありますから」

「でしょうね。私のほうも、セブン王子が王家や重臣たちにしっかり評価されるよう、いくつかお手伝いをしようと思っていましたの。……何せ、ニーノ様があの様子では、国の未来も心許ないですものね」

 アミリアの語気には、ニーノに対する見切りがはっきりと滲んでいた。彼女は今や“セブンとともに未来を築く”ことを念頭に置いているのだろう。フォウは胸の奥でちくりとするものを感じながらも、平静を装った。

「アミリア様も本気でセブン様を推しているのですね。ニーノ様の婚約者という肩書きは、どうなさるおつもりなのかしら」

「ふふ、婚約破棄はそう難しいことではありませんわ。むしろ、あの人が私に未練を見せているのが煩わしくて……。早々に正式な破談にしたいところです。そうすれば私も堂々とセブン王子をお支えできますし」

 フォウは一瞬、アミリアの強かな姿勢に言葉を失った。しかし同時に、自分と同じく“ショタコン”である彼女の覚悟を感じ取り、どこかで納得もしている。目の前の令嬢は決して中途半端な気持ちではない。まさにライバルに相応しい存在だ。

「そう。でしたら、いよいよ私たちの“勝負”が本格化しますわね。……セブン様が“何も知らない少年”でいられるのも、そう長くはないのでしょう。大人びた知性を持つあの子が、いつか私たちの気持ちに気づくときが来るかもしれません」

「ええ、そのときにはどちらを選ぶのか――いえ、もしかすると、王妃になるのはもっと別の立場の方かもしれない。けれど、少なくとも私は、セブン王子にとって“欠かせない存在”になりたい。その気持ちはフォウ様も同じでしょう?」

 互いに微笑み合いながら、研ぎ澄まされた闘志がぶつかり合う。もはや、アミリアとフォウにとって“ニーノ王子”など眼中にない。目的はただ一つ――セブンの隣に立つこと。そこに至るまでの道のりは困難を極めるかもしれないが、諦めるつもりはこれっぽっちもない。
 そんな火花を散らす二人を、回廊の遠くから見つめる視線があった。ニーノ本人だ。彼は壁の陰で二人のやり取りを盗み聞きしながら、唇を噛み締めている。その表情は怒りと悔しさに歪んでいた。もしかすると、アミリアが完全に自分から離れてセブンへ向かっていることを、こうして目の当たりにするのは初めてかもしれない。

(あの二人だけでなく、ファストまでもがセブンの味方をするだなんて……!)

 ニーノの胸中には、焦りと嫉妬が渦巻く。だが、真綿で首を絞められるような状況を打破する具体的な策は思いつかない。父王がセブンを評価しているらしいことも知っている以上、力ずくでどうにかなるものでもない。
 その一方、フォウとアミリアの会話は続いていた。大きな国政会議に向け、どんな議題が取り上げられそうか、セブンがどんな資料を準備すればいいか――まるで姉が弟の勉強を手伝うかのように、微に入り細にわたって議論している。

「私たちが協力することもやぶさかではありませんわ。ニーノ様がどう出ようとも、セブン様が自信を持って意見を述べられるように、一緒に資料を整えましょう」

「ええ、面白いですわね。私も鉱山開発の件でセブン様のお力を借りたいですし、それをまとめる形で国政会議に提案してみようと思うの。フォウ様もぜひ一緒に」

 フォウはすぐに頷いた。セブンの“才能を最大限に引き出す”ためには、アミリアの持つ家柄や鉱山の情報も必要不可欠だ。彼女への対抗心は絶えず燃えているが、それは“セブンを支える”という目的の前には障害にはならない。

「ええ、喜んで。アミリア様のお力なら、セブン様も心強いでしょうし」

 そう言い合う二人は、まるで仲の良い親友のように見えるだろう。しかし胸の内では互いに譲る気などさらさらない――しかもニーノの動揺は確実に増し、国政会議の準備期間という限られた時間で、何らかの攪乱策を打つかもしれない。
 まさに嵐の前の静けさを思わせる王宮の回廊。フォウは一瞬、壁の陰に人影を見た気がしたが、何も言わずに歩み去る。もしニーノが見ていたとしても関係ない。いずれ堂々と、セブンが真の実力を示す場がやってくるのだから。
 こうして、第二王子が嫉妬と不安に苛まれる一方、第一王子ファストは冷静に舞台を用意し、フォウとアミリアという“ショタコン令嬢”は協力ともライバルとも言えぬ関係で、セブンを後押しする――そんな奇妙な構図が固まり始めた。
 すべては近々行われる国政会議に向けた前哨戦。そこでセブンがどれほどの知恵と度胸を示すかで、この国の未来が大きく変わる可能性がある。何より、まだ七歳の少年が王族を相手に堂々と提案を行うなど、かつてない光景だろう。
 フォウは深まる覚悟を噛みしめながら、セブンの笑顔を思い描く。あの慈愛にも似た温かい瞳こそ、自分が守り抜くべき存在。年下どころか“ショタ”だと笑われようと関係ない。まもなく迎える大舞台に備えて、彼女は秘めた炎をさらに燃やすのだった。

 それから数日後、フォウ・シックスは王宮の一角にある控え室でセブン王子の到着を待っていた。ここは本来、王族や重臣が集まる会議の前後に休憩を取るための場所であり、普段なら公爵令嬢である彼女がそうそう立ち入ることはない。だが、今回は事情が違う。近く開催される“大規模な国政会議”に向けて、セブンとファスト王子が準備を行う場として特別に使用を許可されているのだ。
 薄いカーテン越しに差し込む午前の光をぼんやりと眺めながら、フォウは少し胸を弾ませていた。セブンが堂々と“国の未来”について意見を表明する日が近い。加えて、ファストが「フォウにもぜひ準備の場に来てほしい」と直接頼んでくれたことで、彼女は堂々とセブンのサポートをする立場を得られたのだ。
 一方、アミリア・グレイスも、侯爵令嬢の立場を活かして鉱山開発や財政案をまとめる手助けをしている。先日、フォウとアミリアは“セブンを支える”ために協力する旨を交わしたばかりで、実際に情報をやり取りし合っているが、それと同時に“絶対に譲れない”ライバル意識も消えてはいない。
 そんな思案を巡らせていると、控え室のドアが軽くノックされた。入ってきたのはセブン本人だった。まだ身長も子どもらしいままなのに、その雰囲気は日に日に落ち着きを増しているように感じる。

「フォウお姉様、お待たせしました。ファスト兄上は先に重臣と話をしているので、少し遅れるそうです」

「いえ、お気になさらず。セブン様こそ、今朝はずいぶんお忙しそうでしたが、大丈夫ですか?」

 フォウが問いかけると、セブンは少しだけ困ったように笑う。

「ええ、いろいろと。ニーノ兄上が相変わらず怒鳴り込んできたり、学者先生たちと打ち合わせをしたり……でも、もう慣れました」

 そこには、あの少年らしい無邪気さよりも、どこか達観した大人びた雰囲気が漂う。フォウは胸が締め付けられるような思いを抱きつつ、そっと机の上に並べた資料を指し示した。

「実は、アミリア様から届いた鉱山計画に関する追加データをまとめてみました。輸送のルートと必要経費の試算も少し入れてあります。よろしければ、ご確認くださいませ」

「ありがとうございます。あの方も精力的に動いてくださっているんですね」

 セブンが受け取った資料をめくりながら感心する。アミリアはニーノとの婚約破棄がまだ正式に決まっていないにもかかわらず、どんどんセブンのために行動しているのだ。表立って恋心を宣言するわけではないが、“年上のお姉様”が全力で彼を支える様子は否が応でも周囲の目を引く。
 もっとも、フォウも似たような立場である。下手をすれば世間から「年下の王子に取り入ろうとしている」と噂されかねないが、セブンへの想いの前には些末な問題だと思っていた。

「アミリア様は鉱山開発を軸にして、セブン様の才能を引き出したいのでしょうね。私も、都市計画の面でできる限り助力したいと思っていますわ」

「二人とも、本当にありがとうございます。僕はまだ力不足かもしれませんが、ファスト兄上と皆さんの協力でいい形にできれば……」

 セブンが声を落として言いかけたそのとき、ノックもなく勢いよくドアが開かれた。入ってきたのは、やはりニーノ王子だ。険しい表情をしていて、フォウの存在を認めると一瞬だけ舌打ちしたようにも見えた。

「セブン、ここにいたのか。……お前、最近あちこちで“次期国王候補”なんて言われているらしいじゃないか。調子に乗るなよ」

 低い声で警告するニーノに対し、セブンは面食らった様子を見せながらも毅然と言い返す。

「調子に乗っているつもりはありません。今度の国政会議で、国のために必要なことを提案するだけです。兄上だって、何か意見がおありなら、堂々と発言すればいいのでは?」

「俺に説教する気か? ずいぶん偉くなったものだな……」

 ニーノは鋭い目つきでフォウのほうへ振り返る。そのまなざしには忌々しさが混ざっていて、吐き捨てるように言った。

「フォウ、お前がセブンを甘やかしているんだろう? ニーノの婚約者を蹴っておきながら、今度は第七王子に鞍替えとはさすがだな。どちらにせよ、お前みたいな女に王妃の座など与えられるはずがないが」

 露骨な侮蔑に、フォウは血が逆流するのを感じた。だが、すぐに冷静さを取り戻し、淡々と返す。

「婚約を破棄したのはニーノ様のほうですわ。それに、私がセブン様をお助けするのは個人的な意思でして、あなたにとやかく言われる筋合いはありません」

「……っ!」

 ニーノは悔しそうに拳を握りしめた。どうやら、彼の中では“自分が捨てたように見えたが、実はフォウが最初から相手にしていなかった”という事実がいまだに尾を引いているらしい。それに加え、アミリアの行動も彼を無意識に傷つけている。

(ニーノ様は、自分が被害者だと思っているのかしら。セブン様はそんなこと求めていないのに……)

 フォウがため息をつきかけたとき、さらに追い打ちをかけるようにアミリアが姿を現した。どうやら、先ほどフォウからセブンに渡した資料を追加で説明するために来たらしい。彼女は扉を開けた瞬間、ニーノの存在に気づき、ほんの少し表情をこわばらせる。

「……ニーノ様。まだいらしたのですね」

 その言葉に、ニーノはまるで火に油を注がれたように苛立ちをあらわにする。

「お前もか、アミリア……俺という婚約者がいながら、セブンに色目を使うとは。いい度胸だな。お前もフォウと同じで、どうせ王妃の座を狙っているんだろう?」

「何とでも。少なくとも、あなたを支えるより、セブン王子のお力になるほうが国のためになると確信しておりますわ。ご不満なら、正式に婚約を解消なされば?」

 アミリアの返しは刺がありながらも一切の動揺を見せない。ニーノは追い詰められたように唇を噛み、「くそっ……!」と罵声を吐くと、足早に部屋を出て行った。重い沈黙が残される中、セブンは申し訳なさそうに視線を落とす。

「皆さんを巻き込んでしまって、すみません……。僕のせいでニーノ兄上も苦しんでいるのかと考えると、心が痛いんです」

 アミリアはそっと息を吐き、セブンの肩に手を置いた。

「いいのです、セブン王子。あなたはなにも悪くありません。彼が自分の浅はかさを認めずに、ただ嫉妬しているだけですわ」

 フォウも同意を示すように小さく頷き、セブンの手にふれる。

「そうですよ。セブン様は堂々と正しいと思うことをなさってください。私たちはその背中を支えますわ」

 おそらく、この控え室での光景は外から見れば奇妙に映るだろう。7歳の王子を、年上の令嬢たちが挟んで励ましているのだから。しかし、フォウもアミリアも本気でセブンを守りたい一心なのだ。ニーノの毒づきなど気にも留めないほど、セブンへの愛情と敬意は揺るぎない。

「ありがとうございます。……ファスト兄上が来たら、国政会議の事前打ち合わせを始めましょう。お二人も一緒にお願いしますね」

 セブンがそう告げた矢先、タイミングを計ったかのようにファスト王子が姿を見せた。先ほどニーノとすれ違ったのか、少しだけ不穏な空気を感じさせながらも、彼は笑顔を保っている。

「どうやら波乱があったようだな。……セブン、大丈夫か?」

「はい、兄上。ニーノ兄上の件は気になりますが、今は会議に集中します」

「よし。では、早速始めよう。フォウ、アミリア、二人も来てくれてありがとう」

 こうして、国政会議に向けた最終の打ち合わせが始まった。ファストとセブンを中心に、フォウが都市部や交通の資料を補足し、アミリアが鉱山や地方経済のデータを提供する。二人の令嬢が相互に情報をすり合わせ、セブンがそこから最適な提案を組み立てていく――まさに“理想のチーム”とも言える流れだ。
 その一方で、ニーノは孤立しつつあった。重臣たちの多くは、新しい風を求める者が多く、ニーノの保守的かつ自尊心の強い態度に辟易している。かといって、彼を完全に見限るには、王族としての序列や政治的なリスクがあるため、誰も本気で彼を排除しようとはしない。結果、“空気を読まずに暴走する困った王子”として扱われているのが現状だ。
 やがて打ち合わせが進むうち、ファストは満足げに頷きながら資料を揃えていく。

「いい感じだな。セブン、お前がここまでしっかりまとめてくれたおかげで、国政会議の場で具体的なプランを提示できそうだ。鉱山開発も含めて、地方活性の道筋を示せるだろう」

「ファスト兄上のおかげです。フォウお姉様とアミリア様も、丁寧に資料を整理してくださったので助かりました」

 セブンの言葉に、フォウとアミリアは互いを意識し合いながらも微笑を浮かべる。協力して成し遂げた達成感は確かにあるが、同時に“どちらがセブンのそばに相応しいか”という競争心は消えていない。
 国政会議が成功すれば、セブンの名声はますます高まるだろう。それはつまり、彼を王として支持する声が強まる可能性を意味している。時代の流れが彼を“次期国王”のレールへと導くかもしれない。それを一番近くで見守るのは――自分でありたい。
 フォウはそう願い、アミリアも同じことを考えている。その火花がまるで静電気のように空気を揺らし、しかしセブンとファストには気づかれないまま、打ち合わせはスムーズに進んでいった。

 ――そうして数時間後、国政会議に備えた準備はほぼ完了する。ファストは息をつき、明るい口調でみんなをねぎらった。

「よし、今日はここまでだ。セブン、よくがんばったな。フォウ、アミリア、君たちのおかげでもある。国政会議は三日後だ。それまでに細かい調整をして、万全の態勢で臨もう」

「はい、兄上。よろしくお願いします」

 セブンが素直に頭を下げると、フォウとアミリアも深く礼をする。充実感が部屋を満たす一方、誰もが内心で“ニーノがどう動くか”に警戒心を抱いていた。あれほど敵意をむき出しにしている彼が、このまま黙っているとは思えない。
 もっとも、どんな妨害工作をしてきたところで、“セブンの才覚”と“ファストのサポート”、そして“年上令嬢たち”の支援によって乗り越えられるはずだ。フォウは自らに言い聞かせるように心を奮い立たせた。
 三日後、王城に多くの貴族や重臣が集まる中、セブンは国政会議の場に登壇する。そこで彼がどんな姿を見せ、どのように言葉を尽くすのか――いずれにせよ、それはこの国の歴史に新たなページを刻む瞬間になりうる。
 そして、フォウの心にはもう一つの燃えるような願いがある。
 ――いつか、セブンが大人になったとき、誰よりも近い場所でその日々を見守り、一緒に未来を築いていきたい。今はまだ7歳の少年だが、いつか彼が青年となる日に、自分の存在が必要だと言ってくれたら――。
 そんな淡い夢と激しい情熱を胸に秘め、フォウはアミリアの横顔に視線をやる。彼女もまた、似た思いでセブンを見つめているのだろう。二人は表向き協力し合いながらも、心の奥では絶対に譲れない競争相手である。
 こうして、新たな幕開けが迫る王宮の一室で、“ショタ王子”をめぐる攻防はさらに熱を帯びていく。ニーノの嫉妬を乗り越え、ファストの期待に応え、国政会議を成功へ導けば、セブンは一躍“王の器”として認められるかもしれない――それはまさに、フォウとアミリアが望む未来への第一歩。
 すべてが、あと三日後の本番にかかっている。フォウはセブンの笑顔を胸に刻み込みながら、冷静に、しかし燃えるような決意を抱いていた。たとえこの恋が異端であろうと、年の差や世間の常識に囚われはしない。愛は常に自由であり、その情熱がある限り、どんな障害も乗り越えられるのだ――。

 セブン王子が堂々と国政会議の場に登場するまで、残り三日。王宮では静かに、しかし着実に、その日は近づいていた。公爵令嬢フォウ・シックスは、昼下がりの薄曇りの空を見上げながら、書類の束を抱えて王宮の廊下を進む。彼女の足取りには迷いがなかった。
 三日前の打ち合わせで、セブンとファスト王子、そしてフォウやアミリアが協力してまとめあげた“地方開発案”と“鉱山開発計画”は、すでに精査を終えている。あとは、当日どのようにプレゼンテーションをするか。セブンが堂々と話せば、それだけで周囲は納得するだろう。もはや、その段階に来ているのだ。
 だが、問題はニーノ王子だ。彼はここ数日、王宮中をうろつきながら、誰彼かまわずセブンの悪口を言い散らしていると聞く。公言はしなくとも、ニーノの家臣や取り巻きの中には“第二王子の地位を守る”ための裏工作を行う者もいるかもしれない。フォウはその可能性を踏まえ、極力セブンから目を離さないようにしていた。

「フォウ様、少しよろしいでしょうか?」

 急ぎ足で歩いていたところに、やわらかな声がかかった。振り向けば、そこにいたのはアミリア・グレイスだ。蜂蜜色の髪を上品にまとめた姿は、いつも通りに美しい。しかし、ニーノの婚約者とは思えぬほど“晴れやかな表情”をしている。

「アミリア様。ちょうど私もお話を伺いたいと思っていましたの。……例の資料、精査はうまくいきましたか?」

「ええ。私の家で管理している鉱山周辺の調査結果が追加で届きましたから、それをセブン王子が確認してくださる段取りになりました。ファスト殿下も『いいタイミングだ』とおっしゃっていましたわ」

 アミリアはフォウに歩み寄り、書類を差し出す。そこには地質学者の意見や、現地住民の要望などが細かく記載されていた。どれも、国政会議で提示すれば十分な裏付けとなる貴重なデータだ。フォウは軽く目を通し、安堵の息をつく。

「素晴らしいですわね。これならセブン様も、自信を持ってプレゼンできます。お疲れさまでした、アミリア様」

「いいえ。私とて、セブン王子に感謝こそすれ、疲れなど感じていませんわ。むしろ、こうしてお役に立てるのが嬉しいくらい」

 微笑むアミリア。その瞳には“ショタ王子”への一途な思いが滲んでいる。フォウもまた、まったく同じ気持ちでいるのだから、皮肉にも二人の心は通じ合っているといえる。
 しかし、そこに横槍を入れるように、いかにも急ぎ足で近づいてくる足音が聞こえた。見ると、ニーノ王子が廊下の向こうから鋭い視線でこちらを睨んでいる。彼は相変わらず落ち着きのない表情をしており、周囲の侍女や近衛兵が困惑して視線を逸らすほど荒れた雰囲気を放っていた。

「アミリア、フォウ……こんなところで何を企んでいる?」

 ニーノは鼻で息を吐き、二人の令嬢を見下ろすように問い詰める。アミリアは視線をそらさず、きっぱりと答えた。

「なにも“企んで”などおりませんわ。セブン王子のために準備をしているだけです。ニーノ様には関係のないことかと」

「……おまえ、いつからそんなに強気になった? 俺の婚約者の分際で――」

「ご存じでしょう。私には、あなたを慕う気持ちはもうありませんの。今さら『分際』などとおっしゃられても、不愉快なだけですわ」

 毒舌ともいえるアミリアの返しに、ニーノは悔しそうに唇を噛む。一方、フォウは静かにそのやりとりを眺めつつ、ニーノがさらに荒れるのではないかと一抹の不安を覚える。
 だが、ニーノはアミリアへ攻撃するような言葉を吐き捨てる代わりに、フォウのほうへ向き直った。

「フォウ、お前こそセブンに取り入るとは見下げた根性だな。かつての“冷たい公爵令嬢”がお前の正体だったというわけか?」

 明らかに挑発的な言葉だが、フォウは微塵も表情を揺るがせず、淡々と返す。

「お好きに解釈されればよろしいですわ。私は私の信じる道を進んでいるだけ。その道がセブン様をお支えする形だとしても、あなたにとやかく言われる筋合いはありません」

「ぬかせっ……!」

 ニーノの声が震える。彼にしてみれば、フォウもアミリアも“自分を捨てて”セブンへ流れたとしか映らないのだろう。もともと自尊心が高く、周囲からの称賛を当然と考えていた彼にとって、これは耐え難い屈辱に違いない。
 フォウはあえて口を閉ざし、ニーノの暴走が収まるのを待つ。アミリアも同じく沈黙を保ち、ただ鋭いまなざしで彼を見返す。やがてニーノはその緊張感に耐えかねたように、一つ息を荒げると踵を返して立ち去っていった。

(このまま、国政会議の日まで荒れ狂うのかしら……下手をすれば、当日なにか妨害でもしかねない。要注意ですわね)

 フォウは胸中でそう警戒しながら、アミリアに声をかける。

「失礼しました、アミリア様。貴重なデータをありがとうございました。早速、セブン様のもとへ届けましょうか」

「ええ、そうしましょう。私も同行しますわ。説明が必要でしたら、私がしたほうが早いでしょうし」

 二人は足並みをそろえて歩き出す。ともにセブンを守り抜くという意思を抱くが、同時に“いつか彼の隣に立つのは私だ”という密やかな情念を燃やしている。この奇妙な協調と競合が、かえって“王子のサポート”としては完璧な成果を生み出しているのだから皮肉なものだ。
 歩きながらフォウは考える。――ニーノの苛立ちが最高潮に達したとき、どんな行動に出るか読めない。だが、ファスト王子もセブン自身も、そこまで無策ではないはずだ。もしもの事態に備え、彼らは最低限の護衛や対策を用意しているだろう。
 こうして二人がセブンの部屋へ向かった先では、すでにファストも来ており、当日の段取りを確認していた。木製の小さなテーブルには、王国内の地図や統計資料が広げられ、セブンが集中した面差しで何かを書き込んでいる。

「ファスト殿下、セブン様、お邪魔いたします」

「お、フォウにアミリアも来たのか。ちょうどいいところだ」

 ファストは軽く手を振り、セブンが二人に気づいて顔を上げる。まだまだ幼く見える外見だが、その瞳には確かな意志が宿り、フォウは胸がじんわりと温かくなるのを感じた。

「セブン様、こちらをご覧ください。アミリア様が新たにまとめてくださった鉱山周辺の報告書です。これで当日の説明も、より説得力が増すでしょう」

「そうなんですね……ありがとうございます、アミリア様。早速拝見します」

 セブンが嬉しそうに資料を手に取り、テーブルに広げて読み込む。一方のファストは、微笑を浮かべたままアミリアに軽く言葉を投げかけた。

「ニーノのことで困っていないか? あいつは空回りしているようだが……万一、嫌がらせなど受けたら私に相談してくれ」

「ありがとうございます。お気遣い痛み入りますわ、ファスト殿下。今のところ大きな実害はありませんが、少し警戒はしておきます」

 穏やかに受け答えながら、アミリアはフォウと視線を交わす。フォウもうなずき、「私もそのときはご相談させていただきます」と付け加える。
 セブンがひと通り読み終えるのを待ち、アミリアは報告書のポイントを簡潔にまとめる。採掘効率向上のための機材導入や運搬ルートの整備にかかるコストなど、必要不可欠な試算が克明に書かれている。フォウは感心しながらメモを取り、セブンやファストの意見を交えて“実際の会議で使う説明スライド”をイメージしていく。
 こうして数時間、息の合った共同作業が続いた。終盤になると、セブンは少し疲れた様子を見せながらも微笑む。

「おかげで、ほぼ完璧だと思います。あとは当日、僕がしっかり発言できるか……そこが問題ですね」

「大丈夫ですわ。セブン様なら、堂々と胸を張ってくださいませ。私たちがそばで見守っていますから」

 フォウが優しく言葉をかけると、アミリアも同意するように微笑んだ。

「そうですわ。王族としてではなく、“あなた”の言葉で語ってくださいませ。国のために何が必要かを、あなた自身が一番理解しているのだから」

 ファストが腕を組んでうなずく。

「兄としても、これほど頼もしいことはない。父上がどう判断するかは分からないが、セブン、お前の提案はきっと多くの人の心を動かすはずだ」

 仲間たちの期待と鼓舞を受けながら、セブンは照れたようにうつむき、しかしすぐに顔を上げる。その幼い横顔に浮かぶのは、懸命に背伸びしようとする少年の意地ともいえる光だ。
 ……そんな温かな空気の中、フォウはふと心の奥で燃える独占欲に気づく。――いつか、セブンが本当に王位を継ぎ、世界にその名を轟かせる日が来れば、さらに多くの者が彼を敬い、慕うだろう。だが、それでもフォウは“私が一番最初にセブンを支えた”という事実を誇りに思いたかった。
 きっとアミリアも同じことを思っている。だからこそ、二人とも“幼い王子”に情熱を注ぎ、誰にも渡すまいとしているのだ。この矛盾めいた協力関係が、今はセブンにとって最良の援護になっているに違いない。
 やがて打ち合わせが終わり、ファストは立ち上がる。

「よし、これで一通りの準備は完了だ。セブン、明日は軽く休息を取って、万全の体調で会議に臨むといい。フォウとアミリアも、今日は早めに帰って疲れを癒してくれ」

 フォウとアミリアは一斉にお辞儀をし、セブンも少し息を吐きつつ「はい、ありがとうございます」と答える。
 ……こうして、国政会議前日の前哨戦は終わった。ファストとセブン、そして二人の令嬢が織りなす“最強のタッグ”は整いつつある。一方、ニーノは悔しさに顔を歪め、後戻りできぬ道を歩み始めているかもしれない。
 まさに、嵐の夜明け前。フォウは帰路につく途中で、ふと肌寒い風を感じた。春先とはいえ、まだ夜の冷気は残る。そんな風にあてられながらも、胸は熱く燃えていた。――セブンが堂々と立ち上がるその瞬間を思うだけで、心の奥から力が湧きあがってくるのだ。
 己の恋路や、年下の少年への愛情を囁くことはできずとも、今はただ“彼を支える公爵令嬢”として全力を尽くす。それで十分。フォウはそう自分に言い聞かせながら、王宮の石畳を踏みしめる。アミリアがそうしているように、別の道を選ぶ選択肢もあったかもしれないが、もう後戻りはできない。

 翌日には、国政会議で使う資料を最終チェックし、ファストは国王との調整を図る予定だ。セブンはひそやかに演説の練習をするらしい。フォウとアミリアも、最後の一押しのために協力するつもりでいる。
 いよいよ、運命の瞬間が近づいている――。
 フォウは夜空を見上げ、胸の鼓動を確かめた。いくら恋心を隠そうとしても、この思いは隠し切れるものではない。セブンが王として大成する未来、その少し先には、大人になったセブンがいて、その隣に自分が――。
 いつか迎えるかもしれない“愛の成就”を薄暗い回廊で思い描き、フォウはゆっくりと目を閉じる。年齢差も地位の差も、常識など関係ない。自分はこの道を選んだのだから、最後まで後悔せずに進むだけだ。
 こうして、誰もが胸に異なる思惑を抱いたまま、国政会議の幕は上がろうとしていた。ニーノが最後まであがき続けるのか、それともセブンが圧倒的な存在感を示すのか。いずれにせよ、運命の歯車はもはや回り始めている――。


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