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第二十三話 王城召喚
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第二十三話 王城召喚
王城からの召喚状は、夜明けとともに届いた。
重厚な封蝋。 王家の紋章。
文面は簡潔。
――王太子殿下及び教会に関する一連の件について、説明を求める。
私は封を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。
「参りますわ」
「馬車の準備は整っております」
アーヴィンの声は静かだ。
王城へ向かう道は、以前とは違う。
婚約者としてではない。
証人として。
いや――裁く側として。
王城大広間。
重苦しい空気が満ちていた。
玉座には国王。 その右に宰相。 左に重臣たち。
少し離れた位置に、王太子カイルベルト。
顔色は悪い。
背筋は強張り、だが視線は鋭い。
さらに後方。
聖女ルチア。 蒼白。
拘束中の司祭グレゴリウスも、衛兵に挟まれて立っている。
そしてミリア。
不安と焦燥が入り混じった表情。
「エレシア・フォルティス」
国王の低い声が響く。
「出頭に感謝する」
「陛下の御前にて恐悦に存じます」
私は優雅に一礼する。
静寂。
「一連の件について、説明せよ」
私はゆっくりと顔を上げた。
「承知いたしました」
まず差し出したのは帳簿。
王家特別支出記録。
「王太子殿下による無承認国庫使用の写しでございます」
ざわめき。
宰相が書面を受け取り、確認する。
「……署名は間違いない」
カイルベルトが叫ぶ。
「国のためだ!」
「目的は?」
宰相の問い。
「教会支援と奇跡祭の開催費用だ」
「成果は?」
沈黙。
私は次の封書を差し出す。
「教会への資金流入と、司祭個人口座の流れ」
重臣たちの視線が司祭へ向く。
司祭は唇を震わせる。
「誤解だ……!」
「誤解ではございません」
私は淡々と告げる。
「金の流れは正確です」
さらに、薬剤納入記録。
「聖女様の奇跡が起きた日と、特殊薬剤納入日が一致しております」
大広間が凍る。
ルチアが後ずさる。
「私は……祈っただけです……!」
「ええ。祈りの直前に、鎮痛薬が投与されておりました」
「違う……!」
「光粉の使用量も、倉庫在庫と一致しております」
監査官が頷く。
「確認済みでございます」
王太子の顔が歪む。
「エレシア! お前が供給を止めたからだ!」
私は静かに答える。
「契約が終了したためです」
その一言が重い。
「婚約破棄の際、殿下は公爵家との契約を無効と宣言なさいました」
王太子は言葉を失う。
あの日の舞踏会。
公衆の前での断罪。
あの一言が、すべての契約を断ち切った。
「……では、奇跡は」
国王の低い声。
「演出でございました」
はっきりと。
ざわめきが爆発する。
「静まれ!」
国王の声が響く。
沈黙が戻る。
「王太子」
ゆっくりと向けられる視線。
「これらを認識していたか」
「……俺は、信じていただけだ」
弱い。
かつての威勢はない。
「信じた結果が、この有様か」
司祭が膝をつく。
「陛下! 私は教会を守るために……!」
「裏金でか」
冷たい一言。
ミリアは震えながら言う。
「私は……何も……」
だが大広間の空気は、もはや同情を許さない。
私は最後に一通の文書を差し出す。
「隣国との正式同盟契約書でございます」
宰相が目を見開く。
「王都を経由しない交易路……」
「王家の承認は不要です。婚約破棄により、我が家は独立した立場ですので」
その事実が、決定的だった。
王太子は、支えを失っている。
教会は信用を失っている。
そしてフォルティス家は――動いている。
国王は深く息を吐く。
「すべてを精査する」
その言葉は、事実上の宣告。
王太子は蒼白になる。
「父上……!」
「余は王だ」
重い声。
「国を守る」
それは、息子よりも重い言葉。
大広間を出るとき、私は振り返らない。
背後で崩れる音が聞こえる気がした。
王城召喚。
それは単なる説明ではない。
断罪の幕開け。
ざまぁは、もう公の場に出た。
逃げ場は、完全に消えた。
王城からの召喚状は、夜明けとともに届いた。
重厚な封蝋。 王家の紋章。
文面は簡潔。
――王太子殿下及び教会に関する一連の件について、説明を求める。
私は封を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。
「参りますわ」
「馬車の準備は整っております」
アーヴィンの声は静かだ。
王城へ向かう道は、以前とは違う。
婚約者としてではない。
証人として。
いや――裁く側として。
王城大広間。
重苦しい空気が満ちていた。
玉座には国王。 その右に宰相。 左に重臣たち。
少し離れた位置に、王太子カイルベルト。
顔色は悪い。
背筋は強張り、だが視線は鋭い。
さらに後方。
聖女ルチア。 蒼白。
拘束中の司祭グレゴリウスも、衛兵に挟まれて立っている。
そしてミリア。
不安と焦燥が入り混じった表情。
「エレシア・フォルティス」
国王の低い声が響く。
「出頭に感謝する」
「陛下の御前にて恐悦に存じます」
私は優雅に一礼する。
静寂。
「一連の件について、説明せよ」
私はゆっくりと顔を上げた。
「承知いたしました」
まず差し出したのは帳簿。
王家特別支出記録。
「王太子殿下による無承認国庫使用の写しでございます」
ざわめき。
宰相が書面を受け取り、確認する。
「……署名は間違いない」
カイルベルトが叫ぶ。
「国のためだ!」
「目的は?」
宰相の問い。
「教会支援と奇跡祭の開催費用だ」
「成果は?」
沈黙。
私は次の封書を差し出す。
「教会への資金流入と、司祭個人口座の流れ」
重臣たちの視線が司祭へ向く。
司祭は唇を震わせる。
「誤解だ……!」
「誤解ではございません」
私は淡々と告げる。
「金の流れは正確です」
さらに、薬剤納入記録。
「聖女様の奇跡が起きた日と、特殊薬剤納入日が一致しております」
大広間が凍る。
ルチアが後ずさる。
「私は……祈っただけです……!」
「ええ。祈りの直前に、鎮痛薬が投与されておりました」
「違う……!」
「光粉の使用量も、倉庫在庫と一致しております」
監査官が頷く。
「確認済みでございます」
王太子の顔が歪む。
「エレシア! お前が供給を止めたからだ!」
私は静かに答える。
「契約が終了したためです」
その一言が重い。
「婚約破棄の際、殿下は公爵家との契約を無効と宣言なさいました」
王太子は言葉を失う。
あの日の舞踏会。
公衆の前での断罪。
あの一言が、すべての契約を断ち切った。
「……では、奇跡は」
国王の低い声。
「演出でございました」
はっきりと。
ざわめきが爆発する。
「静まれ!」
国王の声が響く。
沈黙が戻る。
「王太子」
ゆっくりと向けられる視線。
「これらを認識していたか」
「……俺は、信じていただけだ」
弱い。
かつての威勢はない。
「信じた結果が、この有様か」
司祭が膝をつく。
「陛下! 私は教会を守るために……!」
「裏金でか」
冷たい一言。
ミリアは震えながら言う。
「私は……何も……」
だが大広間の空気は、もはや同情を許さない。
私は最後に一通の文書を差し出す。
「隣国との正式同盟契約書でございます」
宰相が目を見開く。
「王都を経由しない交易路……」
「王家の承認は不要です。婚約破棄により、我が家は独立した立場ですので」
その事実が、決定的だった。
王太子は、支えを失っている。
教会は信用を失っている。
そしてフォルティス家は――動いている。
国王は深く息を吐く。
「すべてを精査する」
その言葉は、事実上の宣告。
王太子は蒼白になる。
「父上……!」
「余は王だ」
重い声。
「国を守る」
それは、息子よりも重い言葉。
大広間を出るとき、私は振り返らない。
背後で崩れる音が聞こえる気がした。
王城召喚。
それは単なる説明ではない。
断罪の幕開け。
ざまぁは、もう公の場に出た。
逃げ場は、完全に消えた。
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