28 / 33
第二十七話 義妹失脚
しおりを挟む
第二十七話 義妹失脚
王城の一室。
王妃教育の講義室は、異様なほど静まり返っていた。
かつては華やかな刺繍布と書物が並び、侍女たちの笑い声が響いていた場所。
今は椅子が整然と並ぶだけ。
中央に立つのは、ミリア。
蒼白な顔。
向かいには老女官と数名の証人。
「義妹ミリア・フォルティス」
老女官が静かに告げる。
「舞踏会当夜およびその後の証言について、確認いたします」
ミリアの指が震える。
「わ、私は真実を……」
「舞踏会にて、姉エレシアが“聖女を妬み、神に逆らった”と証言しましたね」
「……はい」
「その根拠は?」
沈黙。
「聖女様が……神託を……」
「神託は虚偽と確定しました」
言葉が、刃のように落ちる。
「では、あなたの証言の根拠は何ですか」
ミリアの喉が鳴る。
「わ、私は……聞いたのです」
「誰から?」
視線が集まる。
逃げ場はない。
「司祭様が……」
室内に小さなざわめき。
司祭は既に断罪済み。
その名を根拠にした証言は、崩れる。
「さらに」
老女官は書面を掲げる。
「あなたは聖女の奇跡に関し、供給が止まったと発言しましたね」
ミリアの顔色が変わる。
第二十話の暴言。
あの一言。
「……あれは、感情的に……」
「つまり、奇跡に“供給”が必要だと認識していた」
沈黙。
「それは演出を知っていたことを意味します」
「違う! 私は何も知らない!」
声が裏返る。
だが、証言は残っている。
侍女三名、女官二名。
全員一致。
“供給が止まった”という言葉を聞いた。
老女官が静かに言う。
「王妃とは、軽率な言葉を発しない者のことです」
ミリアの目に涙が浮かぶ。
「私は、殿下をお支えするつもりで……」
「結果は?」
冷たい問い。
奇跡は崩れ。 教会は断罪され。 王太子は追い詰められた。
支えたつもりで、沈めた。
その事実。
王宮大広間。
国王の前に報告が上がる。
「ミリア嬢の証言は虚偽の疑い濃厚。王妃教育継続は不適当と判断いたしました」
カイルベルトが立ち上がる。
「待て! 彼女は関係ない!」
国王は静かに言う。
「関係ないなら、なぜ奇跡の仕組みを知っていた」
答えられない。
「王妃の資質とは、節度と真実である」
重い声。
「本日をもって王妃教育を停止する」
それは事実上の宣告。
ミリアは崩れ落ちる。
「……殿下……」
だがカイルベルトは、動かない。
守る力が、もうない。
公爵邸。
「正式に教育停止が決まりました」
アーヴィンが報告する。
「王宮から退去命令も時間の問題かと」
私は静かに頷く。
「自滅ですわね」
「直接手を下しておりません」
「ええ」
義妹失脚。
それは断罪というより、剥落。
物語の仮面が剥がれただけ。
夜。
王宮の私室。
ミリアは一人、鏡を見つめる。
可哀想な妹。
その役は終わった。
涙は効かない。
神託は偽り。
証言は虚偽。
支えは消えた。
外では、侍女たちの足音が遠ざかる。
王妃候補の部屋は、静かに空になっていく。
王太子殿下。
あなたが選んだ少女は。
王妃の椅子に届く前に、落ちました。
ざまぁは、最後の柱へと向かいます。
王城の一室。
王妃教育の講義室は、異様なほど静まり返っていた。
かつては華やかな刺繍布と書物が並び、侍女たちの笑い声が響いていた場所。
今は椅子が整然と並ぶだけ。
中央に立つのは、ミリア。
蒼白な顔。
向かいには老女官と数名の証人。
「義妹ミリア・フォルティス」
老女官が静かに告げる。
「舞踏会当夜およびその後の証言について、確認いたします」
ミリアの指が震える。
「わ、私は真実を……」
「舞踏会にて、姉エレシアが“聖女を妬み、神に逆らった”と証言しましたね」
「……はい」
「その根拠は?」
沈黙。
「聖女様が……神託を……」
「神託は虚偽と確定しました」
言葉が、刃のように落ちる。
「では、あなたの証言の根拠は何ですか」
ミリアの喉が鳴る。
「わ、私は……聞いたのです」
「誰から?」
視線が集まる。
逃げ場はない。
「司祭様が……」
室内に小さなざわめき。
司祭は既に断罪済み。
その名を根拠にした証言は、崩れる。
「さらに」
老女官は書面を掲げる。
「あなたは聖女の奇跡に関し、供給が止まったと発言しましたね」
ミリアの顔色が変わる。
第二十話の暴言。
あの一言。
「……あれは、感情的に……」
「つまり、奇跡に“供給”が必要だと認識していた」
沈黙。
「それは演出を知っていたことを意味します」
「違う! 私は何も知らない!」
声が裏返る。
だが、証言は残っている。
侍女三名、女官二名。
全員一致。
“供給が止まった”という言葉を聞いた。
老女官が静かに言う。
「王妃とは、軽率な言葉を発しない者のことです」
ミリアの目に涙が浮かぶ。
「私は、殿下をお支えするつもりで……」
「結果は?」
冷たい問い。
奇跡は崩れ。 教会は断罪され。 王太子は追い詰められた。
支えたつもりで、沈めた。
その事実。
王宮大広間。
国王の前に報告が上がる。
「ミリア嬢の証言は虚偽の疑い濃厚。王妃教育継続は不適当と判断いたしました」
カイルベルトが立ち上がる。
「待て! 彼女は関係ない!」
国王は静かに言う。
「関係ないなら、なぜ奇跡の仕組みを知っていた」
答えられない。
「王妃の資質とは、節度と真実である」
重い声。
「本日をもって王妃教育を停止する」
それは事実上の宣告。
ミリアは崩れ落ちる。
「……殿下……」
だがカイルベルトは、動かない。
守る力が、もうない。
公爵邸。
「正式に教育停止が決まりました」
アーヴィンが報告する。
「王宮から退去命令も時間の問題かと」
私は静かに頷く。
「自滅ですわね」
「直接手を下しておりません」
「ええ」
義妹失脚。
それは断罪というより、剥落。
物語の仮面が剥がれただけ。
夜。
王宮の私室。
ミリアは一人、鏡を見つめる。
可哀想な妹。
その役は終わった。
涙は効かない。
神託は偽り。
証言は虚偽。
支えは消えた。
外では、侍女たちの足音が遠ざかる。
王妃候補の部屋は、静かに空になっていく。
王太子殿下。
あなたが選んだ少女は。
王妃の椅子に届く前に、落ちました。
ざまぁは、最後の柱へと向かいます。
20
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる