婚約破棄された悪役令嬢は、事業を阻むギルドを手段を選ばず支配する

ふわふわ

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第三十一話 揺らぎの兆し

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第三十一話 揺らぎの兆し

即位から一月。

王都は安定していた。

市場は静か。

基金は堅調。

自由港の流通量は過去最高。

王と制度は、表面上、理想的な距離を保っている。

だが。

安定が続けば続くほど。

“それに不満を抱く者”も現れる。

――――

王城。

「陛下、保守派貴族が動いております」

側近の声は低い。

「内容は」

「王家の権威が制度に侵食されている、と」

王は沈黙する。

予想はしていた。

「具体的には」

「基金審査を王家監督下に置くべきとの建議」

王はゆっくり息を吐く。

焦りはない。

だが、これは無視できない。

王家の象徴が“弱い”と見なされれば、別の火種になる。

――――

屋敷。

「保守派が陛下へ圧力を」

執事が報告する。

「存じております」

わたくしは書簡を読みながら答える。

「動きますか」

「いいえ」

一拍。

「動けば、制度が権力と結びつきます」

「それは」

「信用を損ないます」

保守派は勘違いしている。

制度は王家の上にあるのではない。

横にある。

縦に並べば崩れる。

――――

王城。

保守派貴族が列をなす。

「陛下、王家の威信を守るべきです」

「市場に王家が従うなど前例がない」

王は静かに聞く。

「従っているのではない」

一拍。

「尊重しているのだ」

「ですが――」

王は言葉を遮る。

「王家は象徴である」

「象徴が市場に干渉すれば、混乱する」

重臣たちは沈黙する。

かつての王太子なら、感情で返していた。

今の王は違う。

――――

数日後。

保守派が世論を煽る。

「王家が弱い」

「制度に支配されている」

小さな噂。

だが無視はできない。

市場も反応を探る。

――――

屋敷。

「基金への審査件数が微減」

「不安心理ですわね」

「対応は」

わたくしは考える。

動けば、“王家と対立している”と見られる。

動かなければ、不安が広がる。

「一つだけ」

「はい」

「王家関連案件を、通常より厳格に審査」

執事は一瞬目を細める。

「象徴への敬意を、数字で示すのですね」

「ええ」

優遇しない。

だが特別扱いもしない。

むしろ厳格。

それが最も誠実。

――――

王城。

「王家案件が差し戻された?」

側近が報告する。

王は眉を動かす。

「理由は」

「収支見通しの甘さ」

沈黙。

王は小さく笑う。

「当然だ」

側近は戸惑う。

「抗議なさいますか」

「不要だ」

一拍。

「王家が例外でないことを示せる」

それが最強の反論。

――――

数日後。

保守派は勢いを失う。

「王家が優遇されていない」

それは逆説的に、王の覚悟を示した。

市場は安心する。

基金も回復。

――――

夜。

王が訪れる。

「差し戻しは正しい」

「基準通りでございます」

「不満はない」

王は微笑む。

「私は王だ」

「はい」

「だが例外ではない」

一拍。

「それでよい」

わたくしは静かに頷く。

「象徴が例外になれば、信用が壊れます」

王は深く息を吐く。

「焦燥は消えた」

「陛下が選ばれたのです」

「何を」

「重さを」

王冠の重み。

責任の重み。

それを受け入れた。

――――

王都の夜。

小さな揺らぎは収まった。

王家は象徴。

制度は基準。

対立は起きなかった。

だが。

揺らぎは消えない。

安定は常に試される。

婚約破棄された令嬢は、今日も名を持たぬまま。

影のように、秩序を整える。

王は、王として立つ。

揺らぎを越えた先に、次の試練が待っている。
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