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第20話 何もしない者が、勝者になる
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第20話 何もしない者が、勝者になる
本国の王都では、ようやく一つの結論が出されようとしていた。
緊急会議の場で、ザガート・ビジョン・グランツは、これまでの報告をすべて聞き終え、静かに口を開いた。
「……これ以上、彼女を呼び戻す話は出すな」
重い沈黙。
だが、誰一人として異を唱えなかった。
「我々は、彼女を“働かせよう”とした」 「評価し、管理し、使おうとした」 「その結果、何を失ったかは……もう明らかだ」
数字が、事実を語っている。
奇跡のような安定は戻らない。
どれほど祈っても、どれほど詠唱しても、
“起きないはずの不幸”は、もう防げない。
「……敗北だな」
それは、誰かに負けたわけではない。
戦争でも、陰謀でもない。
価値を見誤ったことによる、完全な敗北だった。
一方、温泉郷。
朝の湯に浸かりながら、リヴォルタ・レーレは、いつも通りの一日を迎えていた。
「……お湯、ちょうどいいですね」
隣で湯に浸かっていた老婦人が、にこやかに頷く。
「ええ。本当に」 「ここは、不思議と落ち着きます」
会話は、それだけ。
肩書きも、過去も、誰も気にしない。
彼女は、ここでは“ただの一人”だった。
昼、町では小さな祭りが開かれていた。
特別な意味はない。
豊作でも、記念日でもない。
ただ、平和だから。
「どうぞ、召し上がって」
屋台の串を受け取り、リヴォルタは素直に礼を言う。
「ありがとうございます」
事故は起きない。
喧嘩も起きない。
人々は笑って、日が暮れる。
その中心にいる彼女は、
相変わらず、何もしていない。
夕方、トレイル・ブレイザーは城の塔から町を眺めていた。
「……これでいい」
側近が頷く。
「はい。
何も変えず、何も求めず」
「それが、最強の統治だ」
英雄を作らない。
奇跡を語らない。
ただ、“何も起きない日常”を守る。
夜。
露天風呂で星を眺めながら、リヴォルタは小さく息を吐いた。
「……今日も、何もしませんでした」
満足そうな声。
彼女は、もう迷っていない。
何かを成し遂げなくてもいい。
誰かに認められなくてもいい。
ここでは、存在するだけで十分だ。
本国では、正式に“元聖女リヴォルタ・レーレへの要請打ち切り”が布告された。
それは、彼女を諦めたというより――
自分たちの過ちを、ようやく認めた証だった。
こうして物語の第一幕は、静かに終わる。
剣も、魔法も、派手なざまぁもない。
あるのは、ただ一つ。
――何もしない者が、最後に勝つ世界。
そしてその勝者は、今も露天風呂で、こう呟いている。
「ごくらく……ごくらく……」
世界が守られていることなど、
最後まで、知らないまま。
本国の王都では、ようやく一つの結論が出されようとしていた。
緊急会議の場で、ザガート・ビジョン・グランツは、これまでの報告をすべて聞き終え、静かに口を開いた。
「……これ以上、彼女を呼び戻す話は出すな」
重い沈黙。
だが、誰一人として異を唱えなかった。
「我々は、彼女を“働かせよう”とした」 「評価し、管理し、使おうとした」 「その結果、何を失ったかは……もう明らかだ」
数字が、事実を語っている。
奇跡のような安定は戻らない。
どれほど祈っても、どれほど詠唱しても、
“起きないはずの不幸”は、もう防げない。
「……敗北だな」
それは、誰かに負けたわけではない。
戦争でも、陰謀でもない。
価値を見誤ったことによる、完全な敗北だった。
一方、温泉郷。
朝の湯に浸かりながら、リヴォルタ・レーレは、いつも通りの一日を迎えていた。
「……お湯、ちょうどいいですね」
隣で湯に浸かっていた老婦人が、にこやかに頷く。
「ええ。本当に」 「ここは、不思議と落ち着きます」
会話は、それだけ。
肩書きも、過去も、誰も気にしない。
彼女は、ここでは“ただの一人”だった。
昼、町では小さな祭りが開かれていた。
特別な意味はない。
豊作でも、記念日でもない。
ただ、平和だから。
「どうぞ、召し上がって」
屋台の串を受け取り、リヴォルタは素直に礼を言う。
「ありがとうございます」
事故は起きない。
喧嘩も起きない。
人々は笑って、日が暮れる。
その中心にいる彼女は、
相変わらず、何もしていない。
夕方、トレイル・ブレイザーは城の塔から町を眺めていた。
「……これでいい」
側近が頷く。
「はい。
何も変えず、何も求めず」
「それが、最強の統治だ」
英雄を作らない。
奇跡を語らない。
ただ、“何も起きない日常”を守る。
夜。
露天風呂で星を眺めながら、リヴォルタは小さく息を吐いた。
「……今日も、何もしませんでした」
満足そうな声。
彼女は、もう迷っていない。
何かを成し遂げなくてもいい。
誰かに認められなくてもいい。
ここでは、存在するだけで十分だ。
本国では、正式に“元聖女リヴォルタ・レーレへの要請打ち切り”が布告された。
それは、彼女を諦めたというより――
自分たちの過ちを、ようやく認めた証だった。
こうして物語の第一幕は、静かに終わる。
剣も、魔法も、派手なざまぁもない。
あるのは、ただ一つ。
――何もしない者が、最後に勝つ世界。
そしてその勝者は、今も露天風呂で、こう呟いている。
「ごくらく……ごくらく……」
世界が守られていることなど、
最後まで、知らないまま。
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