『「君は飾りだ」と言われた公爵令嬢、契約通りに王太子を廃嫡へ導きました』

ふわふわ

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第二十五話 最後通告

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第二十五話 最後通告

王宮の謁見室。

重臣たちが控える中、アルヴィオンは玉座の一段下に立っていた。

その横には、ミレイア。

堂々と。

まるで、すでに王太子妃であるかのように。

呼び出されたのは、アデルフィーナ・カーディス。

公爵令嬢。

だが今日の空気は、明らかに違う。

「アデルフィーナ」

アルヴィオンは名を呼ぶ。

声音は落ち着いているが、温度はない。

「王家の今後の方針について通達する」

通達。

話し合いではない。

一方的な宣言。

「王家は、外部信用に依存しない体制へ移行する」

重臣の何人かがわずかに視線を交わす。

「よって、公爵家による保証支援は段階的に縮小する」

段階的。

やわらかい言葉。

だが実質は切断。

アデルフィーナは静かに問う。

「契約変更の申請は受理しておりませんが」

「不要だ」

即答。

「王家が主体だ」

「履行履歴の整理は」

「後で整えればよい」

軽い。

あまりにも軽い。

ミレイアが小さく笑う。

「殿下はお強いのですわ。もう誰かに支えられる必要はございません」

その言葉は、はっきりと敵意を含んでいた。

広間の空気が、さらに冷える。

アルヴィオンは続ける。

「君は優秀だ。だが過剰だ」

「過剰、でございますか」

「公爵家の影響力は王家を曇らせる」

つまり。

邪魔だ、と。

「名義整理も再検討する」

その一言が重い。

名義整理。

これまで王家の改革案件の多くに、カーディス家の信用が重なっていた。

それを外すと言う。

「履行途中でございます」

「王家が引き継ぐ」

簡単に言う。

だが履行は数字だ。

歴史だ。

記録だ。

消して移せるものではない。

アデルフィーナは一歩も退かない。

「契約の再構築には、双方の署名が必要です」

「署名はする」

「履行履歴の提出が前提となります」

沈黙。

ミレイアが口を挟む。

「そんな細かいことを、まだ仰るの?」

細かいこと。

それは、信用の基盤。

アルヴィオンが言い放つ。

「形式に縛られすぎだ」

その瞬間、重臣の一人が目を閉じる。

形式。

条文。

履歴。

それがなければ、王家はただの家だ。

アデルフィーナは深く礼をする。

「承知いたしました」

抗議しない。

感情を見せない。

「ただし、履行履歴未提出の状態での保証変更は、自動停止条項が適用されます」

重臣たちの視線が動く。

アルヴィオンは苛立つ。

「脅しか」

「条文です」

穏やかに返す。

ミレイアが冷ややかに言う。

「殿下、もうこの方の条文遊びはお終いになさって」

遊び。

その言葉が広間を静める。

アルヴィオンは決定する。

「近く、正式発表を行う」

重臣が思わず口を開く。

「殿下、履行整理が――」

「不要だと言った」

強く言い切る。

アデルフィーナは最後に一言だけ告げる。

「発表は自由でございます」

視線をまっすぐ向ける。

「契約は自由ではございません」

沈黙。

そのまま彼女は退出する。

振り返らない。

王宮の廊下。

侍女が震える声で言う。

「お嬢様、あれは」

「最後通告でしょう」

「お辛くは」

「感情条項はありません」

淡々と。

だがその目は、冷たく澄んでいる。

王宮内。

ミレイアは勝ち誇ったように微笑む。

「ようやく、ですね」

「これで縛りは消える」

アルヴィオンは言う。

「公爵家に頼らずとも王家は立つ」

自信。

いや、過信。

重臣の一人が小さく呟く。

「履行履歴未提出のままでは……」

誰も聞かない。

その夜。

社交界に噂が流れる。

「公爵令嬢、切られるらしい」 「王家単独保証へ移行」 「履行履歴はどうなる」

賛否が分かれる。

だが共通しているのは一つ。

強行。

アデルフィーナは書斎で報告を受ける。

「南方倉庫、履行確認待ち」 「港湾資材、再審査準備」

彼女は静かに頷く。

「契約は動きます」

それだけ。

王太子は理解していない。

宣言は拍手を呼ぶ。

だが履行なき宣言は、

記録の前で無力だということを。

最後通告は終わった。

次は、発表だ。

そしてその瞬間から、

歯車は止まらない。
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