『「君は飾りだ」と言われた公爵令嬢、契約通りに王太子を廃嫡へ導きました』

ふわふわ

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第二十六話 公開切断

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第二十六話 公開切断

王宮大広間。

いつも以上に人が集まっていた。

重臣、各家門の当主、社交界の有力者。
そして噂を嗅ぎつけた者たち。

今夜は「発表」がある。

それだけで十分だった。

高い天井の下、楽団が静かに演奏を止める。

アルヴィオンが前へ進み出た。

その隣には――ミレイア。

距離は近い。

意図的に。

「諸君」

王太子の声が響く。

「王家の今後について、明確にする」

静まり返る。

「王家は、外部信用に依存しない体制へ移行する」

ざわめき。

重臣の何人かがわずかに眉を寄せる。

「名義整理は段階的に解消する」

はっきりと言った。

解消。

切断の宣言。

そして、続ける。

「よって、婚約は再構築する」

再構築。

言葉を選んでいる。

だが意味は明白だ。

「私は、ミレイア・ローデンを正式に王太子妃候補とする」

拍手が起きる。

だが半分。

明らかに足りない。

ミレイアはゆっくりと一礼する。

誇らしげに。

その瞬間。

扉が開く。

アデルフィーナ・カーディスが入場する。

遅れてではない。

呼ばれていない。

だが堂々と。

視線が一斉に集まる。

アルヴィオンは眉をひそめる。

「何の用だ」

「履行確認でございます」

静かな声。

「名義整理の解消には、履行履歴の提出が必要です」

広間が凍る。

重臣の一人が咳払いをする。

ミレイアが小さく笑う。

「まだそんなことを」

アルヴィオンは苛立つ。

「発表は終わった」

「発表は自由でございます」

アデルフィーナは一歩進む。

「契約は自由ではございません」

低く、はっきり。

「履行履歴未提出のまま保証を解消された場合、自動停止条項が発動いたします」

その言葉に、数名の顔色が変わる。

自動停止条項。

条文を知る者は理解する。

出荷停止。

資材保留。

保証無効。

アルヴィオンは声を強める。

「脅しか」

「条文の確認でございます」

感情がない。

それがかえって重い。

ミレイアが言う。

「殿下、もうこの方の管理は不要ですわ」

管理。

飾り。

過剰。

これまでの言葉が、ここで重なる。

アルヴィオンは宣言する。

「履行履歴は後日整理する」

重臣が低く言う。

「後日では――」

「王家の信用がある」

言い切った。

完全に。

その瞬間。

アデルフィーナは深く一礼する。

「承知いたしました」

視線を上げる。

「契約は条文に従います」

それだけ。

怒らない。

泣かない。

抗議しない。

そして静かに退出する。

広間の空気は重い。

拍手は再び起きない。

重臣の一人が小声で言う。

「履行履歴がなければ、南方は止まる」

「港湾もだ」

「軍備資材も遅れる」

誰も声を上げない。

アルヴィオンは満足げに杯を掲げる。

「新しい王家へ」

まばらな拍手。

ミレイアは微笑む。

だが視線の冷たさには気づかない。

夜。

南方領。

王宮からの発表記録が届く。

「外部信用不要」

「名義整理解消」

担当官は契約書を開く。

履行履歴欄――空白。

保証比率――未記載。

条文。

未提出の場合、出荷停止可。

筆が走る。

「履行確認待ちにつき出荷保留」

冷たい判断。

王都。

王宮の宴は続く。

だが水面下では、すでに歯車が外れ始めている。

アデルフィーナは書斎で静かに報告を受ける。

「南方、確認待ち」

「当然です」

「港湾も準備中」

「条文通りに」

穏やか。

ただそれだけ。

侍女が震える声で言う。

「お嬢様は、本当に何もなさらないのですね」

「何も」

紅茶を置く。

「宣言が履歴を上書きすることはございません」

その夜。

アルヴィオンは知らない。

自らの宣言が、

契約を動かしたことを。

公開切断は終わった。

だが本当の切断は――

これから始まる。
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