『「君は飾りだ」と言われた公爵令嬢、契約通りに王太子を廃嫡へ導きました』

ふわふわ

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第二十七話 傲慢の宣言

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第二十七話 傲慢の宣言

発表から三日。

王宮内は、妙に静かだった。

静か――だが、落ち着いてはいない。

南方から正式文書が届いている。

港湾からも報告が上がっている。

履行履歴未提出。

保証比率未確定。

出荷は保留。

だが、アルヴィオンはそれを「揺り戻し」と呼んだ。

「見せしめだ」

執務室で吐き捨てる。

「公爵家が裏で動いている」

側近が慎重に言う。

「殿下、南方は条文通りの処理でございます」

「条文、条文と……」

机を叩く。

「王家の決定に従わぬ条文など、無意味だ」

その言葉を、数人の文官が聞いていた。

記録される。

残る。

同日。

重臣会議。

空気は張りつめている。

「履行履歴の提出を優先すべきです」

財務部長が言う。

「今は保証比率の再確定を」

軍務卿も同意する。

だがアルヴィオンは首を振る。

「弱腰だ」

「殿下、弱腰ではなく現実です」

「王家が公爵家に屈したと見られたいのか」

その一言で、空気が変わる。

屈する。

そう捉えているのか。

「外部信用不要と宣言した」

アルヴィオンは立ち上がる。

「ならば、徹底する」

「徹底、とは」

「履行履歴なしで進める」

会議室が凍る。

「殿下、それは条文違反でございます」

「王家が条文だ」

はっきりと言った。

完全な傲慢。

記録官の筆が止まる。

だが書く。

書かねばならない。

その日の夕刻。

王宮大広間で臨時発表が行われる。

急な召集。

重臣、商会代表、各家門。

アルヴィオンは壇上に立つ。

「王家は、いかなる圧力にも屈しない」

圧力。

誰もその言葉を使っていない。

だが彼は使った。

「履行履歴は後日整備する」

ざわめき。

「出荷停止は不当だ」

重臣が顔を上げる。

「殿下、不当ではなく条文――」

「条文は王家の意思に従う」

言い切った。

ミレイアが隣で微笑む。

「殿下はお強いわ」

その姿は、勝者の顔。

だが広間の拍手は、さらに減る。

その時。

後方から静かな声が響く。

「条文は履歴に従います」

視線が集まる。

アデルフィーナ。

呼ばれていない。

だが立っている。

「履行履歴未提出のまま保証を進めた場合、自動停止条項が全面適用されます」

冷たい事実。

「脅迫か」

アルヴィオンの声が荒れる。

「確認です」

彼女は一歩も退かない。

「殿下は“王家が条文”と仰いました」

静かに。

「契約は王家ではございません」

広間に、ひびが入る。

重臣たちは顔を見合わせる。

誰も彼女を止めない。

「履行履歴をご提出ください」

ただそれだけ。

「拒否する」

即答。

完全に。

その瞬間。

アデルフィーナは深く一礼する。

「承知いたしました」

そして言う。

「契約は自動で動きます」

退出。

ざわめきが残る。

アルヴィオンは怒りに震える。

「出荷を再開させろ」

側近が震えながら答える。

「殿下、条文上は――」

「命令だ!」

だが命令は、港まで届かない。

南方倉庫。

港湾局。

軍備契約室。

全てが条文に従う。

その夜。

南方から正式通知。

出荷全面停止。

港湾資材保留。

軍備契約凍結。

一斉に動く。

王宮。

報告が並ぶ。

アルヴィオンは立ち尽くす。

「たかが履歴だ」

だが履歴は、信用そのものだ。

同じ頃。

社交界で囁きが加速する。

「条文を否定したらしい」 「王家が条文だ、と」 「危うい」

支持は揺れる。

重臣三名が非公式に距離を置く。

ミレイアは焦る。

「どうして止まるの」

父は答えない。

理解している。

これは圧力ではない。

自滅だ。

王宮の窓辺。

アルヴィオンは夜を睨む。

自分は間違っていない。

王家は強い。

だが数字は冷たい。

履行履歴未提出。

保証未確定。

自動停止条項発動。

宣言は響いた。

だが契約は、止まらない。

傲慢は、記録された。

そして破滅は、もう動き出している。
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