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第十八話 王妃の密命
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第十八話 王妃の密命
王都の夜は静まり返っていた。
だが王城の奥、王妃の私室には灯りがともっている。
重い扉の内側で、王妃は側近の女官長と向かい合っていた。
「北へ」
短い言葉。
「辺境伯領へ、信頼できる者を送りなさい」
女官長は一瞬だけ目を見開く。
「表向きの理由は」
「視察よ。交易の流れが変わっている。財務確認という名目で構わない」
王妃の声は落ち着いている。
だがその奥には焦りが滲む。
「本当の目的は」
「……空気を確かめる」
女官長は理解したように静かに頷く。
空気。
数字ではない。
報告書でもない。
その場に立たなければ分からぬ何か。
王妃は窓の外を見つめる。
王都の灯りは多い。
だがどこか揺らいでいる。
「迷信であれば、それでよい」
呟きは夜に溶けた。
一方、辺境伯領。
朝の空気は澄みきっている。
城下では新しい商会が店を開く準備をしていた。
「王都より安心だと評判です」
商人が笑う。
「ここは流れが良い」
またその言葉。
流れ。
私は馬車の到着を眺めていた。
「王都より使者が参ります」
家令の報告。
私はわずかに目を細める。
「理由は」
「交易視察とのこと」
ディルクが横に立つ。
「視察にしては急だ」
「不安が数字に出たのでしょう」
私は静かに答える。
胸の奥の灯は、今日も穏やかだ。
揺らがない。
昼、王都からの使者が到着する。
王妃の紋章を掲げた馬車。
「辺境伯殿、侯爵令嬢」
使者は礼を尽くす。
「交易の安定について、確認に参りました」
ディルクは穏やかに応じる。
「ご自由に視察を」
使者の視線が、私に一瞬だけ向く。
探るような目。
だが私は微笑む。
「遠路お疲れ様ですわ」
城下を歩く使者。
事故のない橋。
崩れぬ石畳。
転ばぬ馬。
笑う商人。
穏やかな空。
「……妙だ」
使者は小さく呟く。
「本当に何も起きていない」
夜。
視察報告を書きながら、使者は筆を止める。
王都では続く小災。
辺境では皆無。
偶然にしては、対照的すぎる。
塔の上で、私は夜風を受ける。
遠く王都の方角に、薄い雲。
辺境の空は星が澄んでいる。
「王妃様は、確かめたいのでしょうね」
私は呟く。
ディルクが隣に立つ。
「何を」
「流れを」
彼は黙る。
否定しない。
その夜、王都の王妃は報告を待ちながら眠れずにいた。
迷信であれ。
真実であれ。
確認せねばならない。
流れが移ったのか。
それとも、ただの偶然か。
第十八日目。
疑念は、もはや噂ではなく調査の対象となった。
王都の夜は静まり返っていた。
だが王城の奥、王妃の私室には灯りがともっている。
重い扉の内側で、王妃は側近の女官長と向かい合っていた。
「北へ」
短い言葉。
「辺境伯領へ、信頼できる者を送りなさい」
女官長は一瞬だけ目を見開く。
「表向きの理由は」
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王妃の声は落ち着いている。
だがその奥には焦りが滲む。
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「……空気を確かめる」
女官長は理解したように静かに頷く。
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呟きは夜に溶けた。
一方、辺境伯領。
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「王都より安心だと評判です」
商人が笑う。
「ここは流れが良い」
またその言葉。
流れ。
私は馬車の到着を眺めていた。
「王都より使者が参ります」
家令の報告。
私はわずかに目を細める。
「理由は」
「交易視察とのこと」
ディルクが横に立つ。
「視察にしては急だ」
「不安が数字に出たのでしょう」
私は静かに答える。
胸の奥の灯は、今日も穏やかだ。
揺らがない。
昼、王都からの使者が到着する。
王妃の紋章を掲げた馬車。
「辺境伯殿、侯爵令嬢」
使者は礼を尽くす。
「交易の安定について、確認に参りました」
ディルクは穏やかに応じる。
「ご自由に視察を」
使者の視線が、私に一瞬だけ向く。
探るような目。
だが私は微笑む。
「遠路お疲れ様ですわ」
城下を歩く使者。
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転ばぬ馬。
笑う商人。
穏やかな空。
「……妙だ」
使者は小さく呟く。
「本当に何も起きていない」
夜。
視察報告を書きながら、使者は筆を止める。
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偶然にしては、対照的すぎる。
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辺境の空は星が澄んでいる。
「王妃様は、確かめたいのでしょうね」
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「何を」
「流れを」
彼は黙る。
否定しない。
その夜、王都の王妃は報告を待ちながら眠れずにいた。
迷信であれ。
真実であれ。
確認せねばならない。
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それとも、ただの偶然か。
第十八日目。
疑念は、もはや噂ではなく調査の対象となった。
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