侯爵令嬢の四十日間 ――均衡が国を変えるまで

ふわふわ

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第36話 選ばれぬという選択

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第36話 選ばれぬという選択

王都では、新たな評議会が開かれていた。

名目は交易再編。
だが本質は違う。

「北路との共同管理を正式に制度化します」

宰相の声が静かに響く。

王太子アシュレイは頷く。

かつてなら、王都主導を主張しただろう。
だが今は違う。

「主導ではなく、共同だ」

それが均衡だと理解している。

玉座の威光では流れは戻らない。
だが、支点として整えれば流れは安定する。

王都は“選ばれる中心”であることをやめ、
“必要な支点”へと姿勢を変え始めていた。

聖女セシリアもまた、変わっている。

奇跡を誇示することをやめ、
祈りの場を小さく分け、民と向き合う時間を増やした。

派手さは減った。

だが、不満も減った。

一方、辺境伯領。

商館では王都との共同印が押された契約書が並ぶ。

対立ではない。
吸収でもない。

共存。

ディルクが言う。

「王都は賢い」

「ええ」

「あなたは、王妃の提案を拒まなかった」

私は首を横に振る。

「私は、選ばれたいとは思っておりません」

王位。
中心。
讃美。

どれも望んだことはない。

胸の灯は今日も一定だ。

それは“選ばれぬ”という選択。

強くならない。
目立たない。

だが、崩れない。

夜。

王城の高塔。

アシュレイは遠く北を見る。

「彼女は、王になり得る」

王妃は静かに答える。

「ええ」

「だが、望まぬ」

「ええ」

沈黙。

それが、彼の孤独をさらに浮かび上がらせる。

選ばれなかったのではない。

選ばれぬ道を、自ら選んだ者がいる。

その強さを、彼はようやく理解し始める。

辺境の塔。

私は夜空を見上げる。

中心ではない。
玉座でもない。

ただ、整える支点。

三十六日目。

国は初めて、
“選ばれぬ”という選択の強さを知った。
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