侯爵令嬢の四十日間 ――均衡が国を変えるまで

ふわふわ

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第37話 王冠よりも重いもの

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第37話 王冠よりも重いもの

冬の気配が、王都にも辺境にも同時に降りてきた。

冷たい空気。
澄んだ星。

流れは、安定している。

王都では新制度が正式に発効した。
北路と王都路の共同管理。
税率の調整。
中継点の統合。

数字は回復している。

だが、それは“勝利”ではない。

「国が持ち直したな」

重臣の言葉に、王太子アシュレイは首を横に振る。

「持ち直したのではない。整えたのだ」

その言葉は、かつての彼なら口にしなかったものだ。

王冠は重い。

だが、今彼が感じているのは別の重さだった。

“責任”

選択の重さ。
断絶の重さ。

そして、支点として立ち続ける重さ。

聖女セシリアは以前ほど前に出ない。

祈りは静かに、民の隣で行われる。

奇跡は小さい。

だが、不安は減った。

王都はようやく、
“輝き”ではなく“安定”を選び始めている。

一方、辺境伯領。

冬支度は整い、備蓄は十分。

商館は灯りを落とし、穏やかな夜が広がる。

私は塔の上に立つ。

胸の灯は今日も揺れない。

強くも弱くもない。

ただ、一定。

ディルクが静かに言う。

「王冠を望まぬ者が、王より重い役割を担うことがある」

私は微笑む。

「私は担っておりませんわ」

「いや。均衡は、あなたがいるから保たれている」

否定はしない。

だが誇りもしない。

それが、この灯の在り方。

夜。

王城の高塔。

アシュレイは王冠に触れる。

冷たい。

「これは、ただの象徴だな」

王妃が答える。

「象徴は軽いわ。重いのは、それを支える覚悟」

沈黙。

彼はようやく理解する。

中心であることよりも。
選ばれることよりも。

整え続けることの方が重い。

辺境の塔。

私は同じ星を見上げる。

王冠はない。

だが、灯はある。

三十七日目。

国は初めて知った。

王冠よりも重いものがあると。

それは、均衡を支え続ける覚悟だった。
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