侯爵令嬢の四十日間 ――均衡が国を変えるまで

ふわふわ

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第38話 均衡の完成

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第38話 均衡の完成

初雪が、王都にも辺境にも同時に降った。

白は、偏らない。

屋根の上にも、城壁にも、商館の看板にも、同じ厚みで積もる。

王都。

交易の数字は安定している。
急上昇もない。
急落もない。

宰相が報告を終える。

「北路との共同管理は円滑。税収は前年同等に回復」

王太子アシュレイは頷く。

誇らない。

焦らない。

「過不足はないな」

それだけを確認する。

王妃は静かに微笑む。

「それが、最良よ」

聖女セシリアは民の隣で小さな祈りを続ける。

奇跡は派手ではない。

だが、冬の病は広がらない。

王都は“中心”を取り戻したわけではない。

だが、“不安”は消えた。

一方、辺境伯領。

倉庫は雪に囲まれながらも暖かい。

物流は止まらない。
事故も起きない。

ディルクが窓辺で呟く。

「均衡が、完成したな」

私は塔の上に立つ。

雪は静かに肩へ降りる。

胸の灯は変わらない。

強くもなく、弱くもない。

一定。

「完成ではありませんわ」

私は言う。

「保たれているだけです」

均衡は築くものではない。

守り続けるもの。

王都が削れれば補う。
こちらが削れれば補われる。

奪わず、誇らず、求めず。

それだけ。

夜。

王城の高塔。

アシュレイは雪の王都を見下ろす。

灯りは均等に並ぶ。

かつて感じた“失われた中心”の空洞は、もうない。

中心ではなく、支点。

彼は理解している。

「王であることより、整えることの方が難しい」

王妃が隣に立つ。

「だからこそ、続けなさい」

辺境の塔。

私は同じ雪空を見る。

王冠はない。

だが、灯はある。

三十八日目。

国はようやく、静かに呼吸を合わせた。

均衡は、誰かの勝利ではなく、

全体の安定として完成していた。
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