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29 許しへの期待
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29 許しへの期待
指先が、あとわずかで触れそうな距離まで伸びる。
ヴェインの呼吸が浅く速くなる。
胸の奥で、何かがほどけるような感覚。
暖かい。
荒野の冷えも、空腹も、痛みも、今は遠い。
光の中に立つフィートは、変わらぬ静けさで彼を見ている。
あの日、大聖堂で断罪されたときと同じ眼差し。
怒りも憎しみもない。
それが、彼の心を揺らす。
「……俺を」
唇が震える。
「俺を、許してくれるのか……?」
声はかすれている。
王太子として命じる口調ではない。
問いだ。
期待だ。
縋りだ。
彼の胸の奥で、初めて後悔に似た感情が揺れる。
あのとき、称賛が許せなかった。
民が彼女の名を口にするのが、我慢ならなかった。
自分が中心であるべき世界で、彼女が光を集めていた。
だから否定した。
偽りだと断じた。
秩序のためと、自分に言い聞かせて。
だが今。
その光が、自分を包んでいる。
彼女の手が、目の前にある。
責める言葉もなく、裁きの宣告もない。
ただ、差し伸べられている。
ヴェインの喉が熱くなる。
涙か、風のせいか、視界が揺れる。
「俺は……」
言葉が続かない。
謝罪か。
言い訳か。
自分でも分からない。
だがこの瞬間、彼は信じたいと思っている。
聖女は慈悲深い。
等しく祈りを捧げる存在。
荒野に追放された自分にも、祈りは向けられていたはずだ。
ならば。
ならばこの光は、赦しなのではないか。
彼女の掌は、変わらずそこにある。
距離は近い。
あと少しで触れられる。
触れれば、何かが戻るのではないか。
冷えも、孤独も、空腹も、すべてが。
ヴェインの指先が、さらに伸びる。
光の中へ。
温もりへ。
赦しへ。
「フィート……」
名を呼ぶ声は、震えている。
王太子としてではなく、ただの一人の男として。
彼は初めて、誰かに救いを求めていた。
触れれば、きっと許される。
触れれば、やり直せる。
そう信じて。
彼の指先が、ついに彼女の掌へと重なろうとした。
指先が、あとわずかで触れそうな距離まで伸びる。
ヴェインの呼吸が浅く速くなる。
胸の奥で、何かがほどけるような感覚。
暖かい。
荒野の冷えも、空腹も、痛みも、今は遠い。
光の中に立つフィートは、変わらぬ静けさで彼を見ている。
あの日、大聖堂で断罪されたときと同じ眼差し。
怒りも憎しみもない。
それが、彼の心を揺らす。
「……俺を」
唇が震える。
「俺を、許してくれるのか……?」
声はかすれている。
王太子として命じる口調ではない。
問いだ。
期待だ。
縋りだ。
彼の胸の奥で、初めて後悔に似た感情が揺れる。
あのとき、称賛が許せなかった。
民が彼女の名を口にするのが、我慢ならなかった。
自分が中心であるべき世界で、彼女が光を集めていた。
だから否定した。
偽りだと断じた。
秩序のためと、自分に言い聞かせて。
だが今。
その光が、自分を包んでいる。
彼女の手が、目の前にある。
責める言葉もなく、裁きの宣告もない。
ただ、差し伸べられている。
ヴェインの喉が熱くなる。
涙か、風のせいか、視界が揺れる。
「俺は……」
言葉が続かない。
謝罪か。
言い訳か。
自分でも分からない。
だがこの瞬間、彼は信じたいと思っている。
聖女は慈悲深い。
等しく祈りを捧げる存在。
荒野に追放された自分にも、祈りは向けられていたはずだ。
ならば。
ならばこの光は、赦しなのではないか。
彼女の掌は、変わらずそこにある。
距離は近い。
あと少しで触れられる。
触れれば、何かが戻るのではないか。
冷えも、孤独も、空腹も、すべてが。
ヴェインの指先が、さらに伸びる。
光の中へ。
温もりへ。
赦しへ。
「フィート……」
名を呼ぶ声は、震えている。
王太子としてではなく、ただの一人の男として。
彼は初めて、誰かに救いを求めていた。
触れれば、きっと許される。
触れれば、やり直せる。
そう信じて。
彼の指先が、ついに彼女の掌へと重なろうとした。
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