いっき童話作品集

いっき

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にじの木

にじの木

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大きな大きな、にじの木がありました。
やさしいやさしいにじの木は、みんなを見守ってくれています。そしてみんなに、にじ色の幸せを運んでくれるのです。

今日も朝がやってきて、きれいな朝日がさしこみました。
しかし、そのカナリアは元気がありません。なぜなら、今日はのどがかすれて、大好きな歌を歌うことができなかったのです。
「昨日、歌いすぎたのかしら……」
カナリアがにじの木の枝にとまって、そうつぶやいた時でした。
「あら、きれい……」
にじの木の葉っぱについていた朝つゆが朝日をうけて、にじ色にキラキラとかがやいていたのです。
カナリアはにじ色の朝つゆをそっとついばみました。
「まぁ、何ておいしい……」
それはまるで、にじ色のジュースみたい。かすれたのどを、みるみるうちにうるおしてくれました。
そして今日も、そのカナリアは大好きな歌を美しいみどりの森にひびかせることができました。森のみんなはいつものように、その歌声にうっとりと聞き入っていたのでした。

大きな大きな、にじの木がありました。
やさしいやさしいにじの木は、みんなを見守ってくれています。そしてみんなに、にじ色の幸せを運んでくれるのです。

お昼近くに、リスのお母さんが子供たちにあげるごはんをさがしにやって来ました。
ついこの間まで、おちちを飲んでいた子供たちです。何か、よろこぶものがないかなぁとさがしていました。
するとお母さんは、にじの木の枝に何かがなっているのを見つけました。
「わぁ、きれい……」
なっていたのは、とってもきれいなにじ色をした実だったのです。
リスのお母さんは、その実をガブリとかじってみました。
「まぁ、おいしい……」
かじったとたんに、口にはミカンにブドウ、イチゴ……にじのように色とりどりの果物のあまずっぱい味が広がりました。
リスのお母さんは、さっそくその実を巣穴へ持って帰りました。
リスの子供たちはみんな、おいしいおいしいにじ色の実を食べて、幸せいっぱいにねむったのでした。

大きな大きな、にじの木がありました。
やさしいやさしいにじの木は、みんなを見守ってくれています。そしてみんなに、にじ色の幸せを運んでくれるのです。

お昼になって、雨がシトシトと降ってきました。雨が降ると、池のカエルたちは大よろこび。陸に上がって遊ぶことができるのです。
今日もカエルの男の子と女の子が、にじの木のまわりをピョコピョコとはね回り、追いかけっこをして遊んでいました。
「ふぅ、たくさん遊んだ」
「そうね。ちょっと、つかれたね」
二ひきはそう言って、にじの木の下で一休み。女の子はふと、にじの木の葉っぱを見上げました。
「わぁ、見て。きれい……」
にじの木の葉っぱは、雨雲を押しのけて少しだけ顔を出したお日さまの光をあびて、にじ色にキラキラとかがやいていたのです。
それは、うっとりとするながめでした。カエルの男の子と女の子は、しばらく、にじ色のきれいな葉っぱを見て、幸せな時間をすごしたのでした。

大きな大きな、にじの木がありました。
やさしいやさしいにじの木は、みんなを見守ってくれています。そしてみんなに、にじ色の幸せを運んでくれるのです。

おやおや、どうしたのでしょう?
雨は上がって空ではお日さまが笑っているのに、にじの木の下にいる一人の男の子の目からは大粒の雨がポタポタと落ちて、地面をぬらしています。
「ロッキーが……ぼくの大好きなロッキーが死んじゃった。もう、会えないんだ」
どうやら、その男の子の飼っていた、大切な犬のロッキーが死んでしまったみたいです。
お昼をすぎて、おやつの時間。だけれども、男の子は大好きなおやつを食べたいとも思いませんでした。男の子はおやつなんかよりも、ずっとずっとロッキーのことが大好きで、かけがえのないお友達だったのです。
ひとしきり泣いた後、男の子はぼんやりとにじの木を見上げました。
すると……
「あれ? 何だろう?」
いつの間にか、にじの木にはきれいなきれいなにじがかかっていました。そして、そのにじは高い高い雲の上までのびているようでした。それはまるで、雲の上にまでかかっているにじの橋みたいでした。
そのにじの橋の向こう……雲の上から、まるでだれかに呼ばれているような気がして、男の子は木を登ってにじの橋に足をかけました。そして、そのにじの橋をわたりはじめました。

一体、どのくらい歩いたでしょう。
にじの橋をわたった男の子の目の前には、青々とした草原が広がっていました。
「ここは……どこだろう」
男の子が目を丸くして、その草原を見回していた時でした。
「ワン、ワンッ!」
一ぴきのかわいい犬がこちらに走ってきました。その犬を見た男の子の目からは、なみだがあふれ出しました。それは、悲しいなみだではありません。うれしい、うれしい、温かいなみだでした。
「ロッキー!」
「ワン、ワンッ!」
「会いたかった、会いたかったよ。ロッキー!」
「ワン、ワン、ワンッ!」
ロッキーはしっぽをふりながら、男の子の顔のなみだをペロペロとなめていたのでした。

「うーん……」
にじの木の下の男の子が目を覚ました時には、お空にはもう夕やけが見えていました。
「あれ、夢?」
それは、男の子の夢だったのかも知れません。
けれども……
「ロッキー……」
夢だったとしても、ロッキーにもう一度会えた男の子はとっても幸せでした。
「ロッキー。ぼく、もう泣かないよ。だって、ロッキーはずっとぼくを見てくれているんだから」
お空を見てそう決意した男の子の顔に、まるでロッキーが笑っているかのようにまぶしい夕陽がさしたのでした。

大きな大きな、にじの木がありました。
やさしいやさしいにじの木は、みんなを見守ってくれています。そしてみんなに、にじ色の幸せを運んでくれるのです。
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