その運命に跪く時

みこと

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「……。」

「……。」

しまった!謝る前に告白してしまった。
弘海は俺の顔を見て固まっている。

「何それ。罰ゲームかなんか?」

「そんなわけないだろ。本当に好きなんだ…。」

「僕オメガだよ?」

「知ってるよ。」

外が騒がしい。校医が戻ってきたのかもしれない。

「行こう。水越。」

「え?あ、うん。」

無言で二人で駅まで歩く。
今言うしかない。

「今までのこと、本当にすまなかった。おまえたちが悪いわけじゃないのに酷い扱いをしたし酷いことも言った。」

「何?急に…。てゆーか何で僕なの?」

「分からない。でも好きなんだ。アルファに立ち向かっていくところも好きだ。席を譲ったり荷物を持ってあげたりする優しいところも好きだ。それから…」

「え?え?ちょっと待って。何で?何で知ってるの?」

「見てたから…。」

「…。」

弘海は黙ってしまった。
気持ち悪いだろうな。まるでストーカーだ。
でももう後には引けない。

「それでその、病気なのか?心臓が悪いのか?」

「あ、まあ。よくあるやつだよ。心臓の壁?に穴が開いてるんだって。小さい穴だよ。心房なんとかって。」

「え?重症だろ?そんな…。」

「小さい穴だから…。」

「治療出来ないのか?手術とか。」

弘海の顔が曇った。 

「手術した方が良いんだけど。しないって決めたんだ。」

「え?何で?」

「良いんだよ。決めたんだから。」

「でも…。」

「宝来くんには関係ないだろ!」

「あるだろ!好きなんだから。」

黙って俯いている。何で手術しないんだ?そんなに難しいのか?
弘海は何も言わずに帰って行った。
はあ、自己嫌悪しかない。勢いで告白して弘海の身体のことなのにしつこく聞いてしまった。


♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


「心臓に穴ねぇ。たぶん心房中隔欠損じゃないか?」

「何だそれ。」

医学の知識は全くない俺は誠司に病気のことを聞きに行った。誠司が図を使って分かりやすく説明してくれる。
今は何の症状がなくても中年期以降に症状が出たり出産を期に症状が出たりするらしい。

「穴が見つかれば手術適応だよ。」 

「そんなに難しい手術なのか?」

「うーん、一概には言えないけど、症例数は多いしそんなに珍しい病気じゃないよ。まぁでも怖いだろ?切って開けるんだぜ?」

「そうか。」

弘海に何かあったら…。

「あ、今はカテーテルで治療もできるよ。」

「カテーテル?」

「そ。足の付け根から管を入れて…。その治療なら二泊三日くらいでできるんじゃないか?」 

「え?本当か?」

「でもやれる施設が限られてるし、保険の関係もあるからなぁ。」

そうか。手術しなくても治療ができるのか。少し調べてみるか。
誠司に礼を言って別れた。



「水越、今いいか?」

「え?ああ。うん。」

授業が終わった弘海を捕まえて空き教室に連れてきた。

「何?」

「おまえの病気の事、調べてみた。」 

誠司に聞いたあの日の以降、徹底的に調べた。

「は?何で?」

「好きだからって言っただろ?何で手術しないんだ?あの牧田って医者、その手術では有名なんだろ?」

「そうだけど…。」

「怖いのか?」

「……そうだよ。僕が死んじゃったら母さんがひとりぼっちになるだろ。」

「でもそんな失敗しない手術だって…。牧田は名医なんだろ?」

「そんなの分からないよ。やってみないと分からない。絶対はないんだ。父さんだってそうだった。盲腸の手術だよ?死ぬわけないって…。でも、二度と帰ってこなかった。」

親父さんが手術で亡くなったのか?
それでか。それで弘海は手術したくないのか。

「だからやらないよ。意気地がないと思われてもいいんだ。」

俯いた弘海は泣いているようだ。
思わず抱きしめてしまった。

「うわっ!何するんだよ!」

「泣くなよ。俺まで泣けてくる。意気地が無いなんて思ってない。手術が怖くないやつなんていないよ。ましてや心臓の手術だ。」

「宝来くん…。」

抱きしめた腕を緩めて弘海の顔を見た。

「俺、調べたって言っただろ?手術じゃなくてカテーテルで治療できるんだ。」

「知ってるよ。」

「そうか。なら話が早い。知り合いの伝手を頼ってやってる病院を見つけて来た。そこで治療できるか話だけでも聞きに行こう。」

「牧田先生に聞いたことある。でも保険適応じゃないって。そんなお金ないよ。」

「金のことは心配するな。俺が何とかする。」

「は?何で?何でそんなこと…。」

「何回も言わせるなよ。好きだからだよ。おまえが好きだから、元気で長生きして欲しい。話だけでも一緒に聞きに行ってくれ。頼む!この通りだ。」

気がついたら泣きながら土下座していた。
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