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「ねぇ、楓はこのままアルファが会いに来なかったらどうする?」
「んー、寂しいけどしょうがないかな。でも卒業間近になればさすがに違うアルファをマッチングしてくれるでしょ。」
土曜日の昼、二人は楓の部屋で昼食を食べていた。
ほとんどの生徒が出かけており、寮はしーんとしている。
このまま100%のアルファが現れなければ、違うアルファとマッチングするだけだ。クラスメイトたちは働くのではないかと揶揄うが、国がそんなことをさせてくれないだろう。
律は名前しか知らない相手を思い浮かべた。
100%の次は何%なんだろうか。
「楓は、その、えっと、100%のアルファに会ってみたいなとか思わないの?」
「そうだね。会ってみたい気もするけど、もう期待しないことにした。マッチングしてからもう四年だよ?中学の頃だって何の音沙汰もなかったけど、高校になっても何もない。相手は僕に興味がないんだよ。」
「そっかー、そうだよね。楓の相手、真面目で怖そうだったね。」
「うん。」
楓はスマホのアルバムを見せる。
マッチングした時に何故か一度だけ国経由で送られてきたのだ。楓の相手も二歳年上。その当時の写真は中学三年生。男前だが、やや強面で怒ったような顔をしている。まるで嫌々写真を撮られたような顔だ。
「ふふ。いつ見ても怖い顔。笑えばカッコよさそうなのにね。」
「きっと写真撮られるのも嫌だったんだよ。」
楓が少し寂しそうな顔でスマホのアルファを見つめる。そしてすぐに画面を待ち受けに戻した。
期待しないとは言っていたがやはり楓も寂しいのだ。その写真を消さないのも、諦め切れないからだろう。優しく面倒見の良い楓は誰よりも家族に憧れているのを律は知っている。本当は自分の運命に迎えに来て欲しいと思っているのだ。
二人もうその話はせず、パズルをしたり、動画を見たりして過ごした。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「はぁ、本当に可愛いな。」
五十嵐潤はスマホの画面をうっとりと見つめ、ため息をついた。そして画面に映る顔にぶちゅっと口付ける。
するとドアの外が騒がしくなった。クラスメイトが戻ってきたのだろう。潤は急いでスマホをしまい、教科書とノートに目を落とした。
「潤、まだ居たのか?俺ら今からカラオケ行くんだけど潤も行かない?」
「は?行くわけないだろ。そもそもカラオケは禁止だし、帰りは寄り道禁止だ。」
「おまえを誘った俺たちがバカだったよ。本当にクソ真面目だな。そんなんじゃ楽しい人生を歩めないぞ。」
「うるさい!邪魔しないでくれ。」
「はいはい、悪かったな。」
ノートにペンを走らせる潤をクラスメイトが笑いながら教室を出て行った。
「ふん、勝手に言ってろ。俺には…。」
ニヤリと笑ってまたスマホを取り出しアルバムを開いた。そこには可愛らしい男が写っている。まだあどけなさが残り、はにかんだ笑顔が本当に可愛い。
クラスメイトが何と言おうと潤は幸せなのだ。
なぜなら潤には運命がいる。まだ会ったことはないが、一度だけ見たことがある。彼の学園まで見に行ったのだ。チラリと見た彼は本当に可愛かった。彼だけキラキラ輝いて見えた。
中学の卒業祝いのプレゼントに彼を見たいと強請ってオメガが通う学園、通称オメガ学園の校舎に入れてもらった。後で父が言っていたが、かなりの寄付金を積んで校舎に入れてもらったのだ。しかしいくら払っても良いと思えるくらい可愛いかったし、あの子と一緒になれるなら何でも我慢すると誓った。
潤が聞いたところ、オメガ学園は校則が厳しいらしい。らしいというのは噂でしか聞いたことがないからだ。潤の周りにはオメガとマッチングしたアルファが居ないのだ。
中学三年の春、突如届いた国からの知らせ。
オメガとマッチングした通知だった。
両親、親戚一同諸手をあげて喜び、お祝いしてもらった。そこに同封されていた説明書にはオメガとは高校を卒業するまで接触できないと書いてあった。相性の良いアルファとの接触はオメガのヒートを不安定にしてしまい、オメガの身体に負担がかかるのだ。それを読んだ潤はがっかりしたが、オメガのために我慢しようと決めた。
一緒に一枚の写真も同封されており、中学の制服を着た彼がはにかんで笑っている。それを一目見た潤は衝撃だった。この世にこんな可愛い人がいるかと思った。
そしてもう一枚、最後に出てきた書類には相手とのマッチング率が印刷されていた。
『マッチング率100%』
そう。
潤とそのオメガのマッチング率は100%だったのだ。
彼は潤の運命だ。
その日以来、潤はふわふわと幸せな気持ちだ。
彼が高校を卒業したら迎えに行こう。
それまでは我慢だ。
「楓。早く会いたい。」
うっとりとした顔の潤はスマホの画面を撫でてキスをした。
潤はクソがつくほど真面目な男だった。
マッチングの説明書通りに楓には接触せず我慢している。他のアルファが金を積んで自分のオメガと会っていることは全く知らない。皆、自分のオメガが卒業するまで我慢していると思っていたのだ。
潤の家は日本屈指の大企業だ。潤は次男だが、ゆくゆくはその会社に就職しする。真面目で勤勉な潤は将来迎え入れる楓が困らないように、株や投資でかなり稼いでいる。
本来なら他のアルファと同様、寄付金を積んで楓に会うことは可能だが、真面目な性格が祟ってそんな発想すらなかった。
説明書通り楓のために我慢し、迎えに行く日を待っている。
それが楓を悲しませているとはつゆほども知らずに…。
「んー、寂しいけどしょうがないかな。でも卒業間近になればさすがに違うアルファをマッチングしてくれるでしょ。」
土曜日の昼、二人は楓の部屋で昼食を食べていた。
ほとんどの生徒が出かけており、寮はしーんとしている。
このまま100%のアルファが現れなければ、違うアルファとマッチングするだけだ。クラスメイトたちは働くのではないかと揶揄うが、国がそんなことをさせてくれないだろう。
律は名前しか知らない相手を思い浮かべた。
100%の次は何%なんだろうか。
「楓は、その、えっと、100%のアルファに会ってみたいなとか思わないの?」
「そうだね。会ってみたい気もするけど、もう期待しないことにした。マッチングしてからもう四年だよ?中学の頃だって何の音沙汰もなかったけど、高校になっても何もない。相手は僕に興味がないんだよ。」
「そっかー、そうだよね。楓の相手、真面目で怖そうだったね。」
「うん。」
楓はスマホのアルバムを見せる。
マッチングした時に何故か一度だけ国経由で送られてきたのだ。楓の相手も二歳年上。その当時の写真は中学三年生。男前だが、やや強面で怒ったような顔をしている。まるで嫌々写真を撮られたような顔だ。
「ふふ。いつ見ても怖い顔。笑えばカッコよさそうなのにね。」
「きっと写真撮られるのも嫌だったんだよ。」
楓が少し寂しそうな顔でスマホのアルファを見つめる。そしてすぐに画面を待ち受けに戻した。
期待しないとは言っていたがやはり楓も寂しいのだ。その写真を消さないのも、諦め切れないからだろう。優しく面倒見の良い楓は誰よりも家族に憧れているのを律は知っている。本当は自分の運命に迎えに来て欲しいと思っているのだ。
二人もうその話はせず、パズルをしたり、動画を見たりして過ごした。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「はぁ、本当に可愛いな。」
五十嵐潤はスマホの画面をうっとりと見つめ、ため息をついた。そして画面に映る顔にぶちゅっと口付ける。
するとドアの外が騒がしくなった。クラスメイトが戻ってきたのだろう。潤は急いでスマホをしまい、教科書とノートに目を落とした。
「潤、まだ居たのか?俺ら今からカラオケ行くんだけど潤も行かない?」
「は?行くわけないだろ。そもそもカラオケは禁止だし、帰りは寄り道禁止だ。」
「おまえを誘った俺たちがバカだったよ。本当にクソ真面目だな。そんなんじゃ楽しい人生を歩めないぞ。」
「うるさい!邪魔しないでくれ。」
「はいはい、悪かったな。」
ノートにペンを走らせる潤をクラスメイトが笑いながら教室を出て行った。
「ふん、勝手に言ってろ。俺には…。」
ニヤリと笑ってまたスマホを取り出しアルバムを開いた。そこには可愛らしい男が写っている。まだあどけなさが残り、はにかんだ笑顔が本当に可愛い。
クラスメイトが何と言おうと潤は幸せなのだ。
なぜなら潤には運命がいる。まだ会ったことはないが、一度だけ見たことがある。彼の学園まで見に行ったのだ。チラリと見た彼は本当に可愛かった。彼だけキラキラ輝いて見えた。
中学の卒業祝いのプレゼントに彼を見たいと強請ってオメガが通う学園、通称オメガ学園の校舎に入れてもらった。後で父が言っていたが、かなりの寄付金を積んで校舎に入れてもらったのだ。しかしいくら払っても良いと思えるくらい可愛いかったし、あの子と一緒になれるなら何でも我慢すると誓った。
潤が聞いたところ、オメガ学園は校則が厳しいらしい。らしいというのは噂でしか聞いたことがないからだ。潤の周りにはオメガとマッチングしたアルファが居ないのだ。
中学三年の春、突如届いた国からの知らせ。
オメガとマッチングした通知だった。
両親、親戚一同諸手をあげて喜び、お祝いしてもらった。そこに同封されていた説明書にはオメガとは高校を卒業するまで接触できないと書いてあった。相性の良いアルファとの接触はオメガのヒートを不安定にしてしまい、オメガの身体に負担がかかるのだ。それを読んだ潤はがっかりしたが、オメガのために我慢しようと決めた。
一緒に一枚の写真も同封されており、中学の制服を着た彼がはにかんで笑っている。それを一目見た潤は衝撃だった。この世にこんな可愛い人がいるかと思った。
そしてもう一枚、最後に出てきた書類には相手とのマッチング率が印刷されていた。
『マッチング率100%』
そう。
潤とそのオメガのマッチング率は100%だったのだ。
彼は潤の運命だ。
その日以来、潤はふわふわと幸せな気持ちだ。
彼が高校を卒業したら迎えに行こう。
それまでは我慢だ。
「楓。早く会いたい。」
うっとりとした顔の潤はスマホの画面を撫でてキスをした。
潤はクソがつくほど真面目な男だった。
マッチングの説明書通りに楓には接触せず我慢している。他のアルファが金を積んで自分のオメガと会っていることは全く知らない。皆、自分のオメガが卒業するまで我慢していると思っていたのだ。
潤の家は日本屈指の大企業だ。潤は次男だが、ゆくゆくはその会社に就職しする。真面目で勤勉な潤は将来迎え入れる楓が困らないように、株や投資でかなり稼いでいる。
本来なら他のアルファと同様、寄付金を積んで楓に会うことは可能だが、真面目な性格が祟ってそんな発想すらなかった。
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