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「「「魅了の魔法⁉︎」」」
僕たちは思わず声を揃えてしまった。
ーー魅了の魔法ーー
寓話の本で読んだ事がある。狙った相手を虜にする魔法だ。でもそれはおとぎ話に出でくるあり得ない魔法だ。だってそんなものが使えたいろいろな人を魅了して自分の思うままに操れるじゃないか…。
ハッとしてオズベルト様とサフィーア様の顔を見る。お二人とも頷いて僕を見た。
レオナルド様は魅了の魔法にかかってる?
まさか!
「これはグリード公爵の次男のラザウェル様の恋人だったオメガから聞いたんだ。二人は運命の番で次の発情期に番う約束をしていた。ところが急にロジェの事が好きだと言い出してそのオメガを修道院に送ってしまった。俺たちは修道院までそのオメガに会いに行ったんだ。」
西の果てにある寂れた修道院に送られてしまったそのオメガは最初の頃は悲しみで何もする気になれず泣いてばかりいた。しかし二人は運命の番だったのだ。誰にも割くことの出来ない運命の番…。
なぜこんな事が起こったのかそのオメガは調べまくったそうだ。幸いにも修道院にはたくさん本があり、中にはかなり古く、市井や王都でも見かけないものもたくさんあった。いろいろ読み漁るうちに、精神を操る魔法について詳しく書いた本の中に『魅了』の事が書かれている箇所を見つけた。
それはアルファにしかかからず運命さえも混同してしまう恐ろしい魔法。その『魅了』はかけた本人しか解く事が出来ない魔法だった。あまりにも危険で大昔に封印され、今は誰も使う事が出来ないと書かれていた。
そのオメガは自分の恋人が『魅了』にかかっているに違いないと踏んだ。
ぼーっとして心ここに在らず、一見すると恋を患っている様にも見えるが瞳の奥が死んでいる。前の日までは熱く愛を語り将来を誓い合った愛しい番…。たった数日で人が変わってしまった。
解く方法がない事にがっかりしたが読み進めていくうちに『魅了』にかかっているかを見分ける事は出来る、という事が分かった。
僕とロイとハンナはオズベルト様に顔を近づけてじっと話を聞いていた。
なんと恐ろしい魔法なんだ!運命さえも引き裂くなんて!
「それでその『魅了』にかかっているか見分ける方法とは?」
ロイが神妙な顔でオズベルト様に尋ねた。
「この魔法はアルファにしかからない。しかも番のいないアルファのみだ。見分ける方法はひとつだけ。運命の番とのキスだ。完全に解けるわけではないがそのキスで正気に戻ると書かれてあった。」
「じゃあそのオメガとグリード公爵家の次男様は?運命の番なんでしょ?キス出来ないの?」
僕はオズベルト様に尋ねた。彼は力なく首を振った。
「ラザウェル様はロジェと出会った一週間後に恋人のオメガを修道院に送ってしまったんだ。公爵家のアルファを誘惑したという罪をでっちあげてね。修道院は送った者の許可がないと出す事が出来ない。グリード公爵家は金も力もある。オメガ一人修道院に送ることなんてどうってことないさ。もちろんロジェに夢中だから修道院まで会いに行くこともない。」
「酷い…。運命の番なのに。」
僕はそのオメガの事を思い涙が出た。悲しくて苦しいに違いない。
サフィーア様がハンカチを差し出してくれたのでありがたく受け取り涙を拭いた。
「ルーファス。私たちも最初はそのオメガの処遇に同情したよ。でもよく考えると修道院に送った事はラザウェル様の『魅了』への最後の抵抗だと考えたんだ。」
「どういう事でしょうか?」
サフィーア様の仰っている事が分からない。
「ラザウェル様は自分の大事なオメガが他のアルファに取られない様に、番契約を結んでしまわない様に修道院に送ったんだと思う。自分は操られどうにも出来ないが最後の力でオメガを守ったんだ。修道院にアルファは居ないからね。いつか『魅了』が解ける日が来たら修道院に迎えにいき番になる事ができる。」
僕たちは涙を流しながらサフィーア様の話を聞いていた。もし本当にロジェ様が『魅了』を使っていたとしたらこんな酷い話しはない。
悲しみと同時に怒りが湧いてきた。
「そこでだ。」
オズベルト様が僕に向かって話し出した。
2人はレオナルド様の運命の番を探していた。結婚を急かされる事に嫌気がさしていたレオナルド様に形だけでもオメガを娶るように勧めたのだ。訪れたオメガとレオナルド様の反応を見て何とか運命の番を探し出そうとされたそうだ。
何人かのオメガがこの屋敷訪れたがみんな長く居られず追い出されている。僕は半年もここに居るが追い出す気配はない。それどころか僕の事を修道院に送ろうとしているらしい。お二人はレオナルド様が修道院について調べている事を知った時、確信したそうだ。
ラザウェル・グリード様と同じようにオメガを修道院で守って貰おうとしている。
僕がレオナルド様の運命だと!
とうとうレオナルド様が『魅了』にかかっているかどうか分かる日が来たのだ。
「ルーファスはまだ発情期が来ていないんだったね。」
サフィーア様が僕に優しく尋ねた。コクンと頷いて2人を見た。
「それで難しかったんだ。発情期がまだのルーファスは運命を感じる事が出来ないからね。」
僕たちは思わず声を揃えてしまった。
ーー魅了の魔法ーー
寓話の本で読んだ事がある。狙った相手を虜にする魔法だ。でもそれはおとぎ話に出でくるあり得ない魔法だ。だってそんなものが使えたいろいろな人を魅了して自分の思うままに操れるじゃないか…。
ハッとしてオズベルト様とサフィーア様の顔を見る。お二人とも頷いて僕を見た。
レオナルド様は魅了の魔法にかかってる?
まさか!
「これはグリード公爵の次男のラザウェル様の恋人だったオメガから聞いたんだ。二人は運命の番で次の発情期に番う約束をしていた。ところが急にロジェの事が好きだと言い出してそのオメガを修道院に送ってしまった。俺たちは修道院までそのオメガに会いに行ったんだ。」
西の果てにある寂れた修道院に送られてしまったそのオメガは最初の頃は悲しみで何もする気になれず泣いてばかりいた。しかし二人は運命の番だったのだ。誰にも割くことの出来ない運命の番…。
なぜこんな事が起こったのかそのオメガは調べまくったそうだ。幸いにも修道院にはたくさん本があり、中にはかなり古く、市井や王都でも見かけないものもたくさんあった。いろいろ読み漁るうちに、精神を操る魔法について詳しく書いた本の中に『魅了』の事が書かれている箇所を見つけた。
それはアルファにしかかからず運命さえも混同してしまう恐ろしい魔法。その『魅了』はかけた本人しか解く事が出来ない魔法だった。あまりにも危険で大昔に封印され、今は誰も使う事が出来ないと書かれていた。
そのオメガは自分の恋人が『魅了』にかかっているに違いないと踏んだ。
ぼーっとして心ここに在らず、一見すると恋を患っている様にも見えるが瞳の奥が死んでいる。前の日までは熱く愛を語り将来を誓い合った愛しい番…。たった数日で人が変わってしまった。
解く方法がない事にがっかりしたが読み進めていくうちに『魅了』にかかっているかを見分ける事は出来る、という事が分かった。
僕とロイとハンナはオズベルト様に顔を近づけてじっと話を聞いていた。
なんと恐ろしい魔法なんだ!運命さえも引き裂くなんて!
「それでその『魅了』にかかっているか見分ける方法とは?」
ロイが神妙な顔でオズベルト様に尋ねた。
「この魔法はアルファにしかからない。しかも番のいないアルファのみだ。見分ける方法はひとつだけ。運命の番とのキスだ。完全に解けるわけではないがそのキスで正気に戻ると書かれてあった。」
「じゃあそのオメガとグリード公爵家の次男様は?運命の番なんでしょ?キス出来ないの?」
僕はオズベルト様に尋ねた。彼は力なく首を振った。
「ラザウェル様はロジェと出会った一週間後に恋人のオメガを修道院に送ってしまったんだ。公爵家のアルファを誘惑したという罪をでっちあげてね。修道院は送った者の許可がないと出す事が出来ない。グリード公爵家は金も力もある。オメガ一人修道院に送ることなんてどうってことないさ。もちろんロジェに夢中だから修道院まで会いに行くこともない。」
「酷い…。運命の番なのに。」
僕はそのオメガの事を思い涙が出た。悲しくて苦しいに違いない。
サフィーア様がハンカチを差し出してくれたのでありがたく受け取り涙を拭いた。
「ルーファス。私たちも最初はそのオメガの処遇に同情したよ。でもよく考えると修道院に送った事はラザウェル様の『魅了』への最後の抵抗だと考えたんだ。」
「どういう事でしょうか?」
サフィーア様の仰っている事が分からない。
「ラザウェル様は自分の大事なオメガが他のアルファに取られない様に、番契約を結んでしまわない様に修道院に送ったんだと思う。自分は操られどうにも出来ないが最後の力でオメガを守ったんだ。修道院にアルファは居ないからね。いつか『魅了』が解ける日が来たら修道院に迎えにいき番になる事ができる。」
僕たちは涙を流しながらサフィーア様の話を聞いていた。もし本当にロジェ様が『魅了』を使っていたとしたらこんな酷い話しはない。
悲しみと同時に怒りが湧いてきた。
「そこでだ。」
オズベルト様が僕に向かって話し出した。
2人はレオナルド様の運命の番を探していた。結婚を急かされる事に嫌気がさしていたレオナルド様に形だけでもオメガを娶るように勧めたのだ。訪れたオメガとレオナルド様の反応を見て何とか運命の番を探し出そうとされたそうだ。
何人かのオメガがこの屋敷訪れたがみんな長く居られず追い出されている。僕は半年もここに居るが追い出す気配はない。それどころか僕の事を修道院に送ろうとしているらしい。お二人はレオナルド様が修道院について調べている事を知った時、確信したそうだ。
ラザウェル・グリード様と同じようにオメガを修道院で守って貰おうとしている。
僕がレオナルド様の運命だと!
とうとうレオナルド様が『魅了』にかかっているかどうか分かる日が来たのだ。
「ルーファスはまだ発情期が来ていないんだったね。」
サフィーア様が僕に優しく尋ねた。コクンと頷いて2人を見た。
「それで難しかったんだ。発情期がまだのルーファスは運命を感じる事が出来ないからね。」
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