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第一章

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私がこの世界に転生し自らの利用価値を両親に印象づけるには、単に自分に出来る事を連ねれば良い訳では無い
私がこれだけの事が出来るのだと両親の前でプレゼンテーションを行ったところで、あの頭お花畑状態の両親である。流石だね。凄いね。と私を褒める言葉しか言わない役立たずでは意味がない

そこで家族でない第三者、兄の家庭教師に目を付けたのだ。
さも兄に懐いてる妹のように付かず離れずの距離を保ち、家庭教師に自らがいかに優秀であるかを見せつける。身内の贔屓目がなく、しかも比較対象たる存在がすぐ隣にいることもあり私の優秀さが際立つ訳だ。
兄としては面白くないことだろう、自らよりも格下であるはずの妹と事あるごとに比べられ、両親から親族の殆どがこぞって私の話題ばかり揚げ連ねる。
私の引き立て役として存分に利用させて頂いたのだが、そうこうしているうちに私よりも三年先に生まれてきた者としての意地か、両親からの関心を取り戻そうとしているのか、はたまた自らより優秀な私を出し抜きたいが為なのかはわからないが、私に追い付かんとばかりに必死になって勉学に励みながらも私より良い成績を取れずに歯噛みする様はそれなりに興に乗るものがあった






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僕の妹はとても凄い。

かあ様の赤い髪もキレイだけど、とお様の銀髪もかっこいいけど、ミーシャの黒髪はずっとずっとキレイだと思う。
かあ様の金色の瞳より、とお様の紫の瞳より、ミーシャの瞳は世界中の美しいものを吸い取ったかのようにキラキラと輝いてみえる。
ずっと前に、かあ様から見せてもらった黒い宝石よりもずっとずっとキレイなんだ。

それに僕の知らない事や、僕でも家庭教師に教わってない事まで何でも知っている。
お兄ちゃんとしてミーシャに頼られるようになりたいと頑張っていてもまったく追いつけなくて、落ち込んだりもするけれど、ミーシャはそんな僕に仕方がないなと勉強を教えてくれる。
その時のミーシャは、僕の妹なのにまるで僕よりずっとお姉さんみたいで、とてもドキドキして顔が熱くなってしまうんだ。
嬉しくて、ずっと傍にいて見ていたいと思うのに、なんだか恥ずかしくて、顔を背けたくなる、変な気持ちになってしまうんだ。

僕は妹のミーシャが大好きだ。
可愛くて、とてもキレイな僕の妹

ミーシャが産まれてすぐ、かあ様は僕に絵本を読んでくれた。
遠い昔、世界を救った聖女の物語だ。
ミーシャと同じ黒髪黒目で、僕とミーシャの御先祖さまで、ミーシャはその聖女と同じ黒髪に黒目なんだって、僕はその時、きっとミーシャは聖女なんだと思ったんだ。
だから、お兄ちゃんとして、聖女を守る物語の中の騎士のようになりたいって、その時からずっと僕は僕自身に誓ったんだ、ミーシャを守れる大人になるって

とくに僕が可愛いと思うミーシャは、時々僕にだけ見せる優しい笑顔だ。
かあ様達がミーシャの事を褒めている時や、家庭教師が僕よりもミーシャの方が凄いと言っている時に、ちらりと僕の方を見て、とても優しい笑顔を向けてくれるんだ。
いつもいつも家庭教師の誰もがミーシャを褒めてばかりいて、僕が出来ない子供のように思えて辛い時、ミーシャが僕のことをとても優しい、まるでかあ様が時たま僕達に向けるような、慈愛に満ちた暖かな微笑みに、僕は胸の辺りがギュウッて感じがして、苦しいのに、とてもあったかい気持ちになるんだ。
それ以来、僕は僕の事よりも妹が褒められる事の方がとても誇らしくて、嬉しく思うんだ。
もっともっとミーシャの事を見て欲しい、僕よりもずっとずっと素晴らしい僕の自慢の妹を沢山褒めて貰いたいって、そう思うようになったんだ。

でも、だからって僕がそれに甘んじる訳にはいかない
勉強では無理でも、少しでもお兄ちゃんとして頼られるように、ミーシャを守れるような強い男になりたい
僕はとお様とかあ様に頼んで剣の先生と魔法の先生からの授業を受けるようにしたんだ。







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