殲滅された小国の姫

とうたら

文字の大きさ
18 / 51

決意

しおりを挟む
◇◇◇

 ここで聞かなければ、絶対に後悔する。

 アルバートは、どうしても確認したいことを、ルフに問いかけた。

「ルフ・・・様は、ヴィーを伴侶となさるおつもりでしょうか」
『いかにも。シルヴィアは我が魂の片割れ。離れることは出来ぬ定め』

 アルバートは六歳だが、既に婚約者がいる。政治的側面の強い婚約だが、父上、母上の様な仲睦まじい関係を築きたいと思っている。
 婚姻がどの様なものなのか具体的には分からないが、きっと、ルフ様はヴィーを連れ去ったりしない。
 ルフ様が、神が、義弟だなんて、夢みたいだ。
 ずっとここで皆と幸せに暮らせる。

「ルフ様は、シルヴィアが望む限り、此方へ留まって頂けるのですね」
『是非もない。我はシルヴィアを悲しませぬ』
「ありがとう存じます」

 シルヴィアは恥ずかしそうにはにかみながら、両手を組み祈るように囁いた。

「あの・・・、私も、嬉しゅうございますわ。ルフ」

 ヴィーは本当にとんでもないことをあっさりと・・・、いや、違う。
 ヴィーのたゆまぬ努力と穢れなき魂が、精霊の心を動かし、神をも魅了したのだ。
 ヴィーはこれからも邁進する。
 ヴィーに負けられない。
 ヴィーの兄にふさわしい人間になりたい。

「ルフ様、私を弟子にして下さい!」
『・・・・・・。断る』
「えええ!!!」
『先ずは、魔力を上げよ』
「はい!師匠!」
『・・・・・・はぁ。毎日、魔力を使い切れ。但し、枯渇させてはならぬ』
「ありがとうございます!師匠!」

 シルヴィアの懇願という圧を感じ、ルフは、アルバートに助言した。途端にシルヴィアもアルバートも上機嫌である。

『休むぞ』
「ルフ。こちらですわ」
「お兄様、ノア、おやすみなさいまし」

 アルバートはシルヴィアを抱きしめ、額に口づけた。

「ヴィー、おやすみ。良い夢を。ルフ様、ごゆるりとおやすみ下さい」
「「おやすみなさいませ。良い夢を」」

 シルヴィアは、ルフを寝室へ案内する。

 慌てたマリーがルフへ懇願した。

「どうか、ルフ様、お願い致します。元の御姿にお戻りいただけないでしょうか」
わたくしも、愛らしい犬の御姿を愛でとうございますわ」
『相分かった』

 そんな微笑ましいやり取りを見守り、アルバートとノアは退室した。

 本当に、ヴィーは凄いな。神の機嫌を取りつつ、手玉に取っている。見習うことばかりだ。

 アルバートも天性の人たらしなのだが、これから益々磨きが掛かることとなる。



 大人びた手のかからないアルバートを、少し気の毒に思っていたノアは、安堵した。

 四歳からお仕えしているが、アルバート様があの様な声を発せられるところを初めて拝見した。今日のアルバート様は、子どもらしくて実に好ましい。それに、アルバート様の御陰で、ルフ様がライバルになることはないと分かった。アルバート様もシルヴィア様も、嫉妬心を持ち合わせておられない。その様な所も神のお気に召す要因なのだろう。

「アルバート様。私も今日から魔力を使い切ります」
「ああ。マリーも惚れ直すだろう」
「えっ!」

 アルバートは悪戯が成功したようなしたり顔をノアに向けた。

 嗚呼、十歳下の子にからかわれてしまった。この御方の洞察力には、恐れ入る。将来が楽しみだ。側に置いていただけるよう、精進あるのみだな。

 ノアは開き直り、アルバートにぼやいた。

「はぁ・・・。マリーを嫁に出来ますかね」
「今のままでは難しいけど、・・・・・・。母上に相談すれば、マリーのガルシア伯爵家より格上の家と養子縁組するとか、なんかサクッとまとめてくださると思うよ」
「それは・・・、フローラ様ならあり得ますね。でも、本当ですか!?そんなこと出来るのですか?」
「ノア次第だね」
「益々やる気が出ました」

 ノアは、アルバートへの更なる忠誠を誓った。

◇◇◇
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

処理中です...