27 / 51
告白
しおりを挟む
◇◇◇
アルバートが神殿から戻ったと聞き、シルヴィアは駆け出したい気持ちを抑えながら足早にアルバートの元へ向かった。
アルバートの部屋には、専属医師ハリスも来ていた。
「ハリス先生!」
「シルヴィアお嬢様。アルバート様は、気を失っておいでです」
「ノア。お兄様は、魔力を吸われたの?」
「左様にございます。私もそうでしたので、恐らくは、明朝までお目覚めになられぬかと存じます」
「ノアも同じ神殿で洗礼を授かりましたの?」
「左様にございます」
もうしばらく様子を見るというハリスを残し、シルヴィアは、ウィリアムの元へ報告に行くノアと共に、アルバートの部屋を後にした。
「ノアの時は、洗礼の後どうでしたの?」
「私は、洗礼の場で気を失い、翌朝目覚めた後も暫くは身体が重く感じられ、吐き気や眩暈、頭痛がございました。五日程で回復いたしましたが、思えば、魔力枯渇が原因でしょう」
「まあ!魔力の枯渇には、その様な影響がございますの?!」
「学友に聞いたところ、魔力量によって、症状は異なるようでございます」
「魔力量が多いほど、症状が重くなるということかしら」
「左様にございます」
「ノア。お父様とのお話がお済みになったら、私の部屋へいらして下さいまし。もっと学園の事を伺いとうございますわ」
「畏まりました」
◇
シルヴィアの元を訪れたノアは、マリーに迎えられ高鳴る心臓を、用意されお茶とお菓子をいただくマナーに集中することで、何とか鎮めようとしている。
シルヴィアはルフを撫でながら、ノアに学園の話を促した。
「私の同期はおりませんでした。学園全体でも平民出身は五人程でした」
ノアは平民だったが、洗礼の儀式で魔力持ちと判り、グランドール国立学園への入学が許されたのだ。
◇◇
グランドール国立学園は王都にある共学寄宿学校だ。
王侯貴族の子息が多数在学し、質の高い教育と人材育成を目的としている。
期間は十三歳から十六歳までの四年。
学年別ではなく能力別で、講義を受ける。
卒業所要単位をクリアした時点で卒業出来る。
卒業できなかった者は退学処分となる。
貴族は伴侶探しと人脈作りが主な目的である。
厳格な階級制のもと、下級貴族にとっては上級貴族と知り合う貴重な場である。
婚姻が決まった令嬢は退学するのが通例となっている。
学費は、寄付金制度で、一口金貨十枚。(日本円で約十万円)
年間二十口以上を前納する。
学園祭などのイベントごとに寄付を募っている。
平民の場合、基礎学力と貴族の慣習を学ぶために7歳で入学するのが通例となっている。
学費、寮費、食費などは一切徴収されず、「学生手当」の名目で給与が支給される。
但し、卒業後三年間は任官の義務がある。
任官と同時に準男爵位を叙爵され準貴族となる。
三年間の勤務後、男爵位へ陞爵。
後は、働き次第で陞爵され、領地を賜わることも夢ではない。
博士号を有する者には国からの研究支援を受けることも出来る。
◇◇
「ノアは私が生まれる前から、お兄様のお側にいらっしゃるの?」
「はい。シルヴィアお嬢様御誕生の一月前からでございます」
「あら?ノアは何歳ですの?」
「今年十七になります」
「まあ!本来なら、まだ在学中ということかしら」
ノアは一心不乱に励み、十一歳で卒業所要単位をクリアし、任官した。任官中の功績によって男爵位を賜わり、ナイトレイ家へ仕える希望が叶った。
「在学中も任官中も、厳しく扱かれましたが、ナイトレイ家の御威光の御陰で、蔑まれることはございませんでした」
「ふふ。謙遜なさらないで。それは、ノア自身の魅力と実力に因るところですわ」
「過分なお褒めをいただき、恐縮に存じます」
「ところで、ノアとマリーはまだ婚約なさいませんの?」
シルヴィアの一言に、ノアは盛大にむせた。マリーは透かさずハンカチーフをノアに手渡した。
「シルヴィア様。なぜ、その様にお思いですか?」
「忍ぶれど色に出るものですわ。お兄様も、ご存じよ」
これには、鉄仮面と称されるマリーも赤面し、両手で顔を覆い隠した。この好機を見逃すノアではない。
「私は、マリー嬢のことを愛しく想っております。マリー嬢、どうか私に機会を与えてはいただけませんか」
ノアはソファーに腰掛けるマリーの前で両膝を着き、騎士叙任式の刀礼で騎士が主君に対し願い事をするかのように乞うた。
◇◇◇
アルバートが神殿から戻ったと聞き、シルヴィアは駆け出したい気持ちを抑えながら足早にアルバートの元へ向かった。
アルバートの部屋には、専属医師ハリスも来ていた。
「ハリス先生!」
「シルヴィアお嬢様。アルバート様は、気を失っておいでです」
「ノア。お兄様は、魔力を吸われたの?」
「左様にございます。私もそうでしたので、恐らくは、明朝までお目覚めになられぬかと存じます」
「ノアも同じ神殿で洗礼を授かりましたの?」
「左様にございます」
もうしばらく様子を見るというハリスを残し、シルヴィアは、ウィリアムの元へ報告に行くノアと共に、アルバートの部屋を後にした。
「ノアの時は、洗礼の後どうでしたの?」
「私は、洗礼の場で気を失い、翌朝目覚めた後も暫くは身体が重く感じられ、吐き気や眩暈、頭痛がございました。五日程で回復いたしましたが、思えば、魔力枯渇が原因でしょう」
「まあ!魔力の枯渇には、その様な影響がございますの?!」
「学友に聞いたところ、魔力量によって、症状は異なるようでございます」
「魔力量が多いほど、症状が重くなるということかしら」
「左様にございます」
「ノア。お父様とのお話がお済みになったら、私の部屋へいらして下さいまし。もっと学園の事を伺いとうございますわ」
「畏まりました」
◇
シルヴィアの元を訪れたノアは、マリーに迎えられ高鳴る心臓を、用意されお茶とお菓子をいただくマナーに集中することで、何とか鎮めようとしている。
シルヴィアはルフを撫でながら、ノアに学園の話を促した。
「私の同期はおりませんでした。学園全体でも平民出身は五人程でした」
ノアは平民だったが、洗礼の儀式で魔力持ちと判り、グランドール国立学園への入学が許されたのだ。
◇◇
グランドール国立学園は王都にある共学寄宿学校だ。
王侯貴族の子息が多数在学し、質の高い教育と人材育成を目的としている。
期間は十三歳から十六歳までの四年。
学年別ではなく能力別で、講義を受ける。
卒業所要単位をクリアした時点で卒業出来る。
卒業できなかった者は退学処分となる。
貴族は伴侶探しと人脈作りが主な目的である。
厳格な階級制のもと、下級貴族にとっては上級貴族と知り合う貴重な場である。
婚姻が決まった令嬢は退学するのが通例となっている。
学費は、寄付金制度で、一口金貨十枚。(日本円で約十万円)
年間二十口以上を前納する。
学園祭などのイベントごとに寄付を募っている。
平民の場合、基礎学力と貴族の慣習を学ぶために7歳で入学するのが通例となっている。
学費、寮費、食費などは一切徴収されず、「学生手当」の名目で給与が支給される。
但し、卒業後三年間は任官の義務がある。
任官と同時に準男爵位を叙爵され準貴族となる。
三年間の勤務後、男爵位へ陞爵。
後は、働き次第で陞爵され、領地を賜わることも夢ではない。
博士号を有する者には国からの研究支援を受けることも出来る。
◇◇
「ノアは私が生まれる前から、お兄様のお側にいらっしゃるの?」
「はい。シルヴィアお嬢様御誕生の一月前からでございます」
「あら?ノアは何歳ですの?」
「今年十七になります」
「まあ!本来なら、まだ在学中ということかしら」
ノアは一心不乱に励み、十一歳で卒業所要単位をクリアし、任官した。任官中の功績によって男爵位を賜わり、ナイトレイ家へ仕える希望が叶った。
「在学中も任官中も、厳しく扱かれましたが、ナイトレイ家の御威光の御陰で、蔑まれることはございませんでした」
「ふふ。謙遜なさらないで。それは、ノア自身の魅力と実力に因るところですわ」
「過分なお褒めをいただき、恐縮に存じます」
「ところで、ノアとマリーはまだ婚約なさいませんの?」
シルヴィアの一言に、ノアは盛大にむせた。マリーは透かさずハンカチーフをノアに手渡した。
「シルヴィア様。なぜ、その様にお思いですか?」
「忍ぶれど色に出るものですわ。お兄様も、ご存じよ」
これには、鉄仮面と称されるマリーも赤面し、両手で顔を覆い隠した。この好機を見逃すノアではない。
「私は、マリー嬢のことを愛しく想っております。マリー嬢、どうか私に機会を与えてはいただけませんか」
ノアはソファーに腰掛けるマリーの前で両膝を着き、騎士叙任式の刀礼で騎士が主君に対し願い事をするかのように乞うた。
◇◇◇
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
女神様、もっと早く祝福が欲しかった。
しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。
今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。
女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか?
一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる