綺麗な花には、棘がある ~短編集~

なる

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2話 クロッカス

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私が住んでいるのは、周りが山だらけのド田舎。

だけど、明日から都会の方に引っ越すことになったんだ。

だから学校の友達とは、お別れになっちゃう。

そして、小さい頃から一緒の有志ともお別れ。

本当は離れたくないけど仕方がないよね。



「今日の6時くらいにさ、花奈と一緒に行きたいとこがあるんだけど無理?」

有志が少し照れながら言う。

一体何に対して照れているんだろう?

その時の私はまだ何にも知らなかった。

有志が私のことをどう思っているのかも。

「門限が5時半だから無理だよ」

「大丈夫だろ!こっそり抜け出してさ!お願い!」

有志は、目をうるうるさせながら言うから断れなかった。

「わかったよ!じゃあ迎えにきてね?」

私がそう言うと、有志が嬉しそうにする。

「あたりまえだよ!俺が迎えにくるまで待ってろよ!」

「待ってるって」

6時に私の家で待ち合わせになった。


コンコン

と、窓を叩く音がきこえたから窓の外を見たら有志がいた。

「ちょっと待ってて」

と、私が窓をあけて小声で言ったらコクンと頷く。

「あっはっはっ!そうなのよー」

お母さんとお父さんは、リビングでどうやら話が盛り上がっているらしい。

笑い声が大きいからバレずに抜けられそうだ。

私は、廊下をそろりそろりと静かに通って、外にでた。

「有志!でれたよ!」

「おぉ!よかった!じゃあ行くぞ!」

「ねぇ、どこに行くの?」

「まだ内緒だ!」

有志は私の手を取り走り出す。

「走るペースもうちょっと落として!」

山道を走るから結構疲れてくる。

「もう着いたよ」

「え?」

「ほら!こっち!」

腕をグイッと引っ張られ、その先に見えたのは夕陽だった。

とても大きくて綺麗な。

「すごい!はじめて見た!」

「だろ?これを今日花奈に見せたかったんだ」

こんなところで夕陽が見れるなんて思わなかった。

私が住んでるところは、山で見えないから見たことがなかったんだ。

「有志ありがとう。本当に綺麗だよ」

「ああ」

「私さ、本当は引っ越したくないよ。だってみんなと、有志と会えなくなるから嫌だよ」

「俺も嫌だ。花奈と毎日会えなくなるだなんて考えられないよ」

「うん。だけどさ、また会えるよね?」

「ああ。俺が必ず迎えにいくから」

「うん。ずっと待ってるからね」

私の唇に有志のが微かに触れる。

幼い頃の私と有志は約束をしたんだ。





「久しぶりだね有志?」

有志のとこには、雪が積もっていた。

私は、雪をはらい、クロッカスの花を置いた。

「いつになったら迎えに来てくれるの?ねぇ、約束したよね?」



私は、あなたを待っています。



fin



クロッカスの花言葉は、
「青春の喜び」
「あなたを待っています」
「愛をもう1度、私を裏切らないで」
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