14 / 19
14話 カランコエ
しおりを挟む
これは、可哀想な王女様のお話。
「そうなんですか~」
私は、適当な相槌をうつ。
目の前にいるのは、私のお見合い相手の隣国の王子。
どうせ、私の魔法の力が欲しいだけなんだ。
実は私の魔法は、何でもできる。
やろうとすれば世界だって滅ばせることができるだろう。
だけど、それをすると私は力尽きて死んでしまう。
つまり、大きな魔法を使うと自分の寿命も縮むのよね。
ちょっとした魔法なら、いつも使っているのだけど。
例えば魔法で、花を咲かせたり、片付けをしたり色々雑用などにも使える。
雑用などは使用人の仕事だけれど頼むのもめんどくさいので、自分でやってしまう。
別に苦ではないから。
そうして、私が全く王子の話を聞いていないのが分かったのか、王子は後味悪そうに帰っていった。
「王女様、またお見合い相手に帰らせてしまいましたね。また国王様に怒られますよ?」
私の護衛の、セロがそう言う。
「別にいいわ。だってあの人は、私の魔法にしか興味がないのよ」
「良い人と巡り会えればいいですね」
セロはそう言う。
だけど、私はそんな人と出会いたくはない。
だって、私はセロのことが好きなのだから。
「私はセロのことが好きよ」
私がそう言うと、辛そうな顔をするセロ。
「駄目ですよ。僕と王女様とでは、身分があまりにも違います」
「そんなの分かってるわ」
セロに現実を言われ、腹が立った。
「それに、王女様にキスをすると魔法が使えなくなってしまうのは嫌ですからね」
「別に、私は魔法が使えなくなったっていい」
そう。私の魔法は、心の底から愛しいと想ってる人とキスをすると、私の魔法は使えなくなる。
これは、代々から伝わること。
だけど、魔法が使えなくなるくらいなら、どうってことないわ。
セロと結ばれれば魔法なんてどうでもいい。
「そんなこと言ってはなりません。王女様の魔法でこの国は成り立っているのですから」
「...そうね...」
どうして私は、魔法を持って生まれてしまったのだろうか。
運命とでも言うつもりかしら?
運命なんて、ただ、残酷なだけ。
いっそのこと、世界なんて滅んでしまえばいいのに。
そんなことを思ってる私は、王女失格だろか?
「リゼ!また、お見合いを断ったそうだな!?」
そんなことを考えているうちに、お父様が私の部屋にズカズカと入ってくる。
お父様の顔は、まるで茹でタコ状態。
「あの人は、私の運命の人ではありません」
私は、そう言い張る。
「毎回毎回同じこと言っているではないか!」
お父様が声をあげる。
「お父様は、何にも分かっていない!あの人達は、魔法が欲しいだけなの!私自身のことなんて、見ていないわ!」
私は、つい本当のことを言ってしまう。
「だが、必ず結婚はしなければならないからな」
お父様は、最後にそう言い放って部屋を出ていく。
お父様は、私のことなんて考えていないのね...
どうせ皆、魔法しか見ていないのよ。
魔法しか愛していないのよ...
魔法なんていらない。
「リゼ、少し散歩しませんか?」
私の愛する人が、名前を呼んでくれる。
「やっと、名前で呼んでくれたわね」
「人がいなければ大丈夫かと思いまして」
そう言ってセロは、舌をだしながら言う。
名前を呼んでくれただけで凄く嬉しい。
私は、きっと顔が赤く染まっているであろう。
ああ、恋って楽しくて嬉しいことがたくさんあるけど、それ以上に悲しいことや、辛いことがある。
セロは、私の手を取り中庭に行く。
中庭には、花がたくさん咲いており、その花は私が咲かせたのがほとんどだった。
「綺麗」
だけど、夜の中庭は昼よりも1段と綺麗だった。
ライトに照らされた花達が池に反射をしている。
「綺麗ですよね?リゼに見せたかったんです」
セロは、そう言って手をぎゅっと握り返してくれる。
そんなセロに好きという気持ちが高まる。
「セロ、好きよ?」
私は、抑えきれなくなり気持ちを伝える。
「僕も好きです」
「ならー!」
私が続きを言おうとしたら、セロは私の口を塞ぐ。
「この先は、言っては駄目です」
「ごめんなさい」
私は、素直に謝る。
「大丈夫です。いつかリゼを連れていきますので、待っていてください」
「本当?嘘じゃないわよね!」
セロが言ったことが嬉しすぎて、取り乱してしまう。
「嘘じゃないです」
セロが真面目な顔をして言う。
そんなセロを、私は信じることにした。
「愛してるわ」
「僕も愛してます」
私とセロは抱き合った。
セロの温もりは、とても温かくて、落ち着いた。
「私は、これからパーティーがあるから戻るわ」
これからまた、お見合いがある。
しかもお父様同伴で。
「では、お供します」
セロは、仕事モードに戻る。
さっきまでのは夢みたい。
夢か...
そう、セロと結ばれるなんて夢になってしまうわ。
想いは一緒なのに、結ばれないだなんて。
「リゼ、しっかりやるんだぞ?」
「分かっています」
お父様が、念押しをしてくる。
もう、分かっているのに。
すると、今日の見合い相手が入ってくる。
「リゼ王女、こんばんは」
「こんばんは」
相手の王子も私のことは、見ていない。
そんな目をしている。
「本当にお綺麗ですね?」
王子は、そんな胡散臭いことを言ってくる。
みんな最初は、そうやって言うんだ。
綺麗ですね?って。
「よく、そんな胡散臭いこと言えるわね!本当にそんなこと思ってるなら、私にキスでもしてみなさいよ!そうしたら結婚してあげるわ!」
「リゼ!」
お父様が席を立ち、声をあげる。
「だって、誰も私のことなんて見ていないの!魔法しか見ていないのよ!」
私が、そう言ったらお父様は、悲しそうな顔をする。
ごめんなさいお父様。
私は、お父様にそんな顔をさせたくなかった。
お父様は、私のことを心配してくれているのよね?
分かっているわ。
お母様が亡くなってから、お父様は、いつもそうだった。
すごい、心配性で。
だけど、今回だけは、譲れない。
私は、セロが好きだから!
「リゼ!」
「セロ!」
セロがお父様の前に行って、こう言う。
「僕は、リゼのことが好きです!魔法ではなく、リゼのことが!」
「私も!セロのことが好きなの!」
私がそう言うと、セロは私の唇にキスを落とす。
キスをした瞬間、私の体がひかり、消えていった。
ああ、魔法がなくなったのか...
少し残念だけど、セロとキスをしたことの方が遥かに嬉しかった。
「セロ!」
お父様が、怒りで体が震えている。
「リゼ!行こう!」
「うん!」
私と、セロはその場をあとにし、逃げ続けた。
「ねぇ、セロ?これはなんという植物なの?」
私は、サボテンに花が咲いているものに指をさす。
「それは、カランコエと言うんですよ。まあ、サボテンと同じようなものですね」
「なんか、かわいいわね?」
「そうですか?僕にはよく分かりません」
くすくすと笑いあう。
そんな暮らしが続けばいいのに。
だけど、続かない。
私は、国に帰らなければならない。
どうせいつかお父様に見つかってしまう。
見つかってしまったらセロが殺されてしまうから。
セロには悪いけど、もうすぐお別れなの。
私は、セロに最初で最後の魔法をかけた。
その魔法は....私のことを忘れる魔法。
その魔法は、私とセロが本当に結ばれたら発動するようになっている。
セロ...ごめんね?
セロが私のことを忘れても、私はセロのことを忘れないわ。
大丈夫。愛しているわ。
セロ、さようなら。
ある国の王女様は、自分の幸せよりも、彼の幸せを祈りつづけた。
そんな、可哀想で幸せな王女様のお話。
fin
カランコエの花言葉
「あなたを守る」
「幸福を告げる」
「たくさんの小さな思い出」
「おおらかな心」
「そうなんですか~」
私は、適当な相槌をうつ。
目の前にいるのは、私のお見合い相手の隣国の王子。
どうせ、私の魔法の力が欲しいだけなんだ。
実は私の魔法は、何でもできる。
やろうとすれば世界だって滅ばせることができるだろう。
だけど、それをすると私は力尽きて死んでしまう。
つまり、大きな魔法を使うと自分の寿命も縮むのよね。
ちょっとした魔法なら、いつも使っているのだけど。
例えば魔法で、花を咲かせたり、片付けをしたり色々雑用などにも使える。
雑用などは使用人の仕事だけれど頼むのもめんどくさいので、自分でやってしまう。
別に苦ではないから。
そうして、私が全く王子の話を聞いていないのが分かったのか、王子は後味悪そうに帰っていった。
「王女様、またお見合い相手に帰らせてしまいましたね。また国王様に怒られますよ?」
私の護衛の、セロがそう言う。
「別にいいわ。だってあの人は、私の魔法にしか興味がないのよ」
「良い人と巡り会えればいいですね」
セロはそう言う。
だけど、私はそんな人と出会いたくはない。
だって、私はセロのことが好きなのだから。
「私はセロのことが好きよ」
私がそう言うと、辛そうな顔をするセロ。
「駄目ですよ。僕と王女様とでは、身分があまりにも違います」
「そんなの分かってるわ」
セロに現実を言われ、腹が立った。
「それに、王女様にキスをすると魔法が使えなくなってしまうのは嫌ですからね」
「別に、私は魔法が使えなくなったっていい」
そう。私の魔法は、心の底から愛しいと想ってる人とキスをすると、私の魔法は使えなくなる。
これは、代々から伝わること。
だけど、魔法が使えなくなるくらいなら、どうってことないわ。
セロと結ばれれば魔法なんてどうでもいい。
「そんなこと言ってはなりません。王女様の魔法でこの国は成り立っているのですから」
「...そうね...」
どうして私は、魔法を持って生まれてしまったのだろうか。
運命とでも言うつもりかしら?
運命なんて、ただ、残酷なだけ。
いっそのこと、世界なんて滅んでしまえばいいのに。
そんなことを思ってる私は、王女失格だろか?
「リゼ!また、お見合いを断ったそうだな!?」
そんなことを考えているうちに、お父様が私の部屋にズカズカと入ってくる。
お父様の顔は、まるで茹でタコ状態。
「あの人は、私の運命の人ではありません」
私は、そう言い張る。
「毎回毎回同じこと言っているではないか!」
お父様が声をあげる。
「お父様は、何にも分かっていない!あの人達は、魔法が欲しいだけなの!私自身のことなんて、見ていないわ!」
私は、つい本当のことを言ってしまう。
「だが、必ず結婚はしなければならないからな」
お父様は、最後にそう言い放って部屋を出ていく。
お父様は、私のことなんて考えていないのね...
どうせ皆、魔法しか見ていないのよ。
魔法しか愛していないのよ...
魔法なんていらない。
「リゼ、少し散歩しませんか?」
私の愛する人が、名前を呼んでくれる。
「やっと、名前で呼んでくれたわね」
「人がいなければ大丈夫かと思いまして」
そう言ってセロは、舌をだしながら言う。
名前を呼んでくれただけで凄く嬉しい。
私は、きっと顔が赤く染まっているであろう。
ああ、恋って楽しくて嬉しいことがたくさんあるけど、それ以上に悲しいことや、辛いことがある。
セロは、私の手を取り中庭に行く。
中庭には、花がたくさん咲いており、その花は私が咲かせたのがほとんどだった。
「綺麗」
だけど、夜の中庭は昼よりも1段と綺麗だった。
ライトに照らされた花達が池に反射をしている。
「綺麗ですよね?リゼに見せたかったんです」
セロは、そう言って手をぎゅっと握り返してくれる。
そんなセロに好きという気持ちが高まる。
「セロ、好きよ?」
私は、抑えきれなくなり気持ちを伝える。
「僕も好きです」
「ならー!」
私が続きを言おうとしたら、セロは私の口を塞ぐ。
「この先は、言っては駄目です」
「ごめんなさい」
私は、素直に謝る。
「大丈夫です。いつかリゼを連れていきますので、待っていてください」
「本当?嘘じゃないわよね!」
セロが言ったことが嬉しすぎて、取り乱してしまう。
「嘘じゃないです」
セロが真面目な顔をして言う。
そんなセロを、私は信じることにした。
「愛してるわ」
「僕も愛してます」
私とセロは抱き合った。
セロの温もりは、とても温かくて、落ち着いた。
「私は、これからパーティーがあるから戻るわ」
これからまた、お見合いがある。
しかもお父様同伴で。
「では、お供します」
セロは、仕事モードに戻る。
さっきまでのは夢みたい。
夢か...
そう、セロと結ばれるなんて夢になってしまうわ。
想いは一緒なのに、結ばれないだなんて。
「リゼ、しっかりやるんだぞ?」
「分かっています」
お父様が、念押しをしてくる。
もう、分かっているのに。
すると、今日の見合い相手が入ってくる。
「リゼ王女、こんばんは」
「こんばんは」
相手の王子も私のことは、見ていない。
そんな目をしている。
「本当にお綺麗ですね?」
王子は、そんな胡散臭いことを言ってくる。
みんな最初は、そうやって言うんだ。
綺麗ですね?って。
「よく、そんな胡散臭いこと言えるわね!本当にそんなこと思ってるなら、私にキスでもしてみなさいよ!そうしたら結婚してあげるわ!」
「リゼ!」
お父様が席を立ち、声をあげる。
「だって、誰も私のことなんて見ていないの!魔法しか見ていないのよ!」
私が、そう言ったらお父様は、悲しそうな顔をする。
ごめんなさいお父様。
私は、お父様にそんな顔をさせたくなかった。
お父様は、私のことを心配してくれているのよね?
分かっているわ。
お母様が亡くなってから、お父様は、いつもそうだった。
すごい、心配性で。
だけど、今回だけは、譲れない。
私は、セロが好きだから!
「リゼ!」
「セロ!」
セロがお父様の前に行って、こう言う。
「僕は、リゼのことが好きです!魔法ではなく、リゼのことが!」
「私も!セロのことが好きなの!」
私がそう言うと、セロは私の唇にキスを落とす。
キスをした瞬間、私の体がひかり、消えていった。
ああ、魔法がなくなったのか...
少し残念だけど、セロとキスをしたことの方が遥かに嬉しかった。
「セロ!」
お父様が、怒りで体が震えている。
「リゼ!行こう!」
「うん!」
私と、セロはその場をあとにし、逃げ続けた。
「ねぇ、セロ?これはなんという植物なの?」
私は、サボテンに花が咲いているものに指をさす。
「それは、カランコエと言うんですよ。まあ、サボテンと同じようなものですね」
「なんか、かわいいわね?」
「そうですか?僕にはよく分かりません」
くすくすと笑いあう。
そんな暮らしが続けばいいのに。
だけど、続かない。
私は、国に帰らなければならない。
どうせいつかお父様に見つかってしまう。
見つかってしまったらセロが殺されてしまうから。
セロには悪いけど、もうすぐお別れなの。
私は、セロに最初で最後の魔法をかけた。
その魔法は....私のことを忘れる魔法。
その魔法は、私とセロが本当に結ばれたら発動するようになっている。
セロ...ごめんね?
セロが私のことを忘れても、私はセロのことを忘れないわ。
大丈夫。愛しているわ。
セロ、さようなら。
ある国の王女様は、自分の幸せよりも、彼の幸せを祈りつづけた。
そんな、可哀想で幸せな王女様のお話。
fin
カランコエの花言葉
「あなたを守る」
「幸福を告げる」
「たくさんの小さな思い出」
「おおらかな心」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
18
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる