16 / 19
16話 黄色のチューリップ
しおりを挟む私は、アンドロイドを愛してしまった。
そして、アンドロイドの彼も私のことを愛してくれた。
アンドロイドに心がないけど、だけど、彼にはちゃんとあったんだ。
愛しても決して実らないのに、分かっているのに愛してしまうんだ。
それが、恋ってやつなんだ。
そんな気持ちを私に初めてくれたのは、紛れもない君なんだ。
私と、彼はお気に入りの場所でもうすぐ沈むであろう夕日を眺めている。
私は、彼の横顔を見る。
彼の横顔は、アンドロイドとは決して分からないくらい人間に近かった。
見た目は人間にしか見えないだろう。
だけど、人間離れした綺麗な顔立ちをしている。
そんな彼の横顔を見て、うっとりとしてしまう。
「僕の顔に何かついてる?」
彼は、不思議そうに私を見る。
「んーん、ライトのことが好きだなぁって思ってたの」
私がそう言うと、ライトは嬉しそうにする。
アンドロイドでも嬉しそうな表情をする。
本当に人間にしか見えない。
「僕も麗奈のこと好きだよ!」
ライトがそう言うと、私は顔を赤くしてしまう。
「大丈夫?顔赤いよ?」
ライトが心配そうな顔をして、私の顔を除きこむ。
「何でもないよ!大丈夫!夕日のせいだよ」
私は、真っ赤に染まる顔を夕日のせいにした。
そんな、あたふたしている私を見てライトは朗らかに笑う。
まるで人間のように。
ああ、好きだなってまた、思ってしまう。
彼との残り少ない時間を一分一秒と無駄になどしたくない。
だって、ライトはもうすぐ壊れてしまうから。
アンドロイドには生きれる時間の限界があるらしい。
それを知った時、どうしてライトを作ったのか!って思ってた。
だって、ライトは心を持ってしまったのだから。
本当は持てないはずの心を。
それを容赦なく壊すんだ人間は。
私は、アンドロイドよりも人間の方が信じられなくて、恐ろしかった。
「ねぇ、どうして僕にはこれがないの?」
そう言ってライトは、自分の心臓のところに指をさす。
「それは、ライトが人間ではないからだよ」
私がそう言うと、ライトは悲しい顔をする。
「じゃあ、麗奈と一緒じゃないんだね」
「うん。そうだね...」
本当は、あまり答えなくない質問。
ライトが人間だったら良かったのに...って思ってたことは散々あった。
「僕さ、体の奥が痛いんだよ!自分でも分からないんだ!この、胸の奥が痛いんだ!」
ライトは、自分の胸をギュッと引っ掻くように握る。
とても苦しく辛そうに。
「大丈夫。ライト落ち着いて!」
私が、ライトの腕に触れたらライトに振り払われる。
「触らないでくれ!麗奈に触られると、胸が苦しくなるんだ!もう、僕を粉々に壊して欲しいよ...」
ライトは、出るはずのない涙を流す。
そんな苦しそうなライトを見て、私も胸が苦しくなる。
「そんなこと言わないで!ライト落ちついてよ」
「落ちついてられないよ!だって、僕は麗奈のことがこんなに好きなのに、どうして僕と麗奈はこんなにも違うんだ!だって、麗奈はどんどん歳をとっていって、僕が置いていかれるんだ!」
ああ、ライトと気がついていたんだ。
分かっていたんだ。
私とライトは気持ちは同じだけれども、結ばれないってことを。
「大丈夫ライト。私はライトのこと愛してるから。置いてったりしないよ?」
私がそう言うと、ライトは落ちついた。
「僕をひとりにしないで...」
ライトは、私にギリギリ聞こえるかくらいの声でそう言う。
「大丈夫。私はライトをひとりにしないから」
そう。私は、ライトがいなくなる直前まで一緒に居てあげる。
「じゃあ、ライト行こ?」
「うん」
私とライトは、ライトを作った研究所に手をずっと繋ぎながら行った。
ライトと手を繋いで歩くことなんて、もう出来ないだろう。
ライトごめんね...
私のせいで心を持たせてしまってごめんなさい。
「麗奈ずっと愛してるよ」
ライトは、死ぬ前にそう言った。
「私も」
これが、ライトと私の最後の会話。
ライトありがとう。
そして、さようなら。
またね。
そして、彼女と彼は、また出会えることを祈り続けた。
fin
黄色のチューリップの花言葉
「希望のない恋」
「望みのない恋」
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる