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18話 アサガオの約束

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まだ皆、分厚い毛糸のマフラーと手袋をして白い息をハァーと、吐く時期のこと。

まだ高校生だった初々しいカップルがタイムカプセルを2人が初めて出会った桜の木の下に埋めたんだ。

だけど、開けられる条件は自分の夢を叶えられた後。



そして、亡くなった彼女とのタイムカプセルを開けるときが、ようやく来た。

美希との約束をようやく果たせたんだ。

美希のおかげで俺の夢は叶えることができた。

美希は、自分の夢を叶えることが出来なかった。

だけど、その分俺が頑張ろうって思えた。

俺は自分の夢を叶えることができた。

美希は、もうすぐ俺が夢を叶えるであろうとの時に病気で死んでしまった。

せめて俺が夢を叶えた瞬間くらいは見してやりたかった。

だけど、美希なら笑って天国で見ているに違いない。

そして、こう言うんだ。

「調子に乗るんじゃない!」

って。

美希は、いつも俺にそういうんだ。

そう言ってくれる美希が1番好きだった。

俺は、美希との思い出を少しずつ思い返しながらタイムカプセルの錆び付いている缶に手をかける。

そして、その缶にそっと指でなぞる。

なんだか、その缶が温かい気がした。

思い出す度に涙が零れてくる。

錆び付いた缶に俺の涙がぽとぽと落ちる。

一つの思い出を思い返すことによって、涙が一粒ごとに流れてくるようだった。

何をやるにも美希と一緒だった。

これからも美希とずっと、あたりまえのように隣に居れると思ってた。

これは、あたりまえではないんだなって学んだ。

幸せなことなんだ。

あたりまえのことが幸せなんだと思う。

あたりまえに出来ることが幸せなことなんだ。

そして、唾を飲み込み蓋に手をかけた。

ギギギと渋い音がするが、問題なくあいた。

缶を開けたら、古い可愛らしい紙が入っていた。

その紙には、直人へって書いてあった。

俺はその手紙を丁寧に広げる。

直人へ

元気かな?

この手紙を読んでいるってことは、直人は夢を叶えることが出来たんだね。

やったね!

夢を叶えることが出来たんだよね。

だけど、夢は死ぬまで終わらないと思う。

直人は、新しい夢をまた見つけることが出来たと思う。

私も夢を叶えることができたよ?

それはね、直人が夢を叶えてくれたこと!

たまにね、道を踏み外してしまうかもしれないけど直人なら戻ってくると信じてる。

調子に乗ってもいいときもあるけど、調子に乗りすぎないようにね!

ばいばい。またね。

美希より


「なんだよ、これ...反則だろ」

俺は、溢れ出した涙を拭うことができなかった。

だけど、俺には夢がある。

その夢を叶えるために、また歩みつづけるよ。

夢は叶えるためにある。

叶えられると信じなければ叶えられない。

そう、死ぬまでずっと夢は終わらないだろう。


遠くで、アサガオが風で揺れて花びらが落ちた。

そして、セミの鳴き声が孤独感を増した。




fin


アサガオの花言葉
「儚い恋」
「固い約束」
「愛情」
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