幼馴染と義妹、合わされば魔王レベルだと思いませんか? なので、討伐することに決めました

井藤 美樹

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第二章 私は笑顔の下で牙を剝く

冒険者ギルドの実技試験(2)

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 魔力操作で通常より遥かに目を良くしたのに、ジェイクの姿を完全に捉えることはできません。残像か蜃気楼のようです。

 それでも、なんとか攻撃をしのげているのは、勘というか、反射神経ですね。ある程度様になってからは、ほぼ実戦形式だったおかげです。

「おら、おら、どうした!? この程度か!?」

 すっごく凶悪な顔で、ジェイクは打ち込んできます。

 確かに、このままだと勝ち目はありませんわ……あれ? 頭で意識するより早く身体が動いている。情報がなくても動けてる。なら……

「これで終わりだ!!」

 鋭く重い一手。

 完全に私の死角からの攻撃。

 私は一歩、右に避けます。そして、今度はかわさずジェイクの一撃を受け止めました。

 強化魔法を掛けていても、大の大人。それも、元冒険者の一撃はとても重く、気を抜いたら、完全に両腕は潰れるほどの威力でした。

「ほぉ~目を捨てたか」

 ジェイクはそう呟くと、木剣を収めました。

「……えっ」

「時間切れだ」

 そう言われても、身体がしびれて動きません。ジェイクはそれを見て、愉快そうに笑いながら、私の両脇に手を入れ抱き上げると、ゆっくり下ろしました。

 痺れは少し残るけど、緊張が解けたのか動けます。荒療治ですね。

 呆けている私の頭を撫でながら、ジェイクは訊いてきました。

「大したもんだ。相当な場数をこなしているな。で、シア、何故目を捨てた?」

「途中で気付いた。目が邪魔だと」

「確かにな、でも、普通はできないけどな。あと、何故受け止めた? 受け流す事ができただろ」

 ジェイクの言う通り、受け流すことはできました。

「意地」

 そう答えたら、頭をくしゃくしゃにされました。

「負けん気強すぎるだろ。気に入った。今度は、より実戦形式で手合わせしてやる」

 ぽんぽんと叩かれ、背を向けるジェイクに、私は慌てて「ありがとうございました」と言い、頭を下げました。

「おう、このあとも頑張れよ」

「はい!!」

 両手は真っ赤で、ローブも靴もぼろぼろになったけど、すっごく、すっごく、楽しかったです。

「引き続き、魔法適性の実技に移る」

 試験官の声にハッとした私は、慌てて木剣を返しに行き、中央に向かいました。

 集まったのは十人ぐらいです。

 あれ? 思っていたより、人数少ないような……併用して受けるって思ってたのに。

「君、そのままで大丈夫か? あちこち、切れているが」

 試験官は私がいるのを見て、訊いてきました。

 興奮してたから、あまり痛み感じなかったみたい。頬に痛みを感じて手をやると、ヌメッとした感触が。

「問題ない」

 私は全身に治癒魔法を掛けてから、クリーン魔法を掛けます。服のぼろぼろは直せないけど、汚れはなくなりました。

「無詠唱か……」

 やけにざわざわしてますね。試験官は驚いてるし。努力すれば、無詠唱なんて誰でもできるのに、何故驚いているかわかりません。

「お~い、さっさと始めろ」

 ニヤニヤ笑いながらやじを飛ばすジェイクを、試験官は睨み付けてから、試験内容を説明し始めました。

「今から、的を五つ用意する。得意な攻撃魔法で壊せ」

 用意された木の的。

 この実技試験、考えた人って、かなりの曲者くせものですわ。魔法付与されてた木剣といい。中央の的だけ魔法耐性が付与されてますわ。

 人の心理から言えば、五つ的を用意されても、まず攻撃するのは中央の的。それから、隣の的を狙うものですわ。現に、受験者たちは皆そう。一度の攻撃で壊れなくて、何度も何度も攻撃する人もいれば、すぐに気持ちを切り替えて、違う的を攻撃する者もいます。でも、最後は魔力切れを起こしかけてますね。

 今回も、私は最後でした。配慮してくれたのかもしれません。

「試験官、壊せればいいのか?」

「ああ。方法は問わない」

「わかった」

 火球でいいかな。

 私は右手を前に出し、初歩魔法の火球を五つ同時に展開します。そして、それを一斉に放ちました。

「全ての的を一斉攻撃……ましてや、無詠唱の初歩魔法で……あれは、初歩魔法では壊すことなど……」

 試験官の呟きが耳に届きました。

「確かに初歩魔法だけど、込める魔力の量を増やせば、攻撃力は増す」

「理論上はそうだが……」

 納得できなさそうな試験官に、私は続けて言いました。

「無詠唱もそう。イメージを頭で想像できていれば、できる。死ぬほど、練習が必要だけど」

「つまり、死ぬほど練習したってことか」

「冒険者になって、生き残るなら必要。そしてなれたら、プラチナを目指す」

 私がそう告げると、ジェイクが笑いながらやってきて、私の背中をバシバシと叩きました。

「おっ、自然に強化魔法掛けてるな」

「痛いから」

「悪い、悪い」

 ちっとも思ってないでしょ。

「これにて、実技試験終了する。十分後、合格者を発表するまで、ここで待機」

 試験官はそう告げると、ジェイクと共に奥に消えました。

 休んでいた受験者たちが次々と戻ってきます。皆、私を遠巻きに見てヒソヒソと話していました。

 完全に、私はこの中で異物扱いね。そんなこと、別にどうでもいいですわ。

 私は端に移動し、大人しく座って待っていると、大きな影が足元にできました。

「何?」

 うっとおしくて顔を上げると、物理の試験前に私をやじってきた男が立っていました。

「なんで、盾の所に木剣があるのがわかった?」

 もしかして、ズルしたと思ってるのかしら。ちょっとムカつくけど、スルーは駄目ですね。だって、この人……

「魔力を感じたから」

「魔力?」

「微量だけど。他の武器には一切感じなかった。気になったから、探っただけ」

「じゃあ、実技試験前に臨戦態勢を取ったのは?」

 いくつ、質問してくるの。

「全身がザワッとしたから。無意識でしていた」

「つまり、わずかな殺気を感じ取ったわけか」

 考え込んでいる男に、今度は私が尋ねました。

「私も質問していいか?」

「なんだ?」

「どうして、冒険者が試験を受けている?」

 私がそう尋ねると、静かだった訓練場がざわめき出します。男は吃驚した顔で私を凝視していました。

「それはな、こいつも試験官だからだ。で、どうだ?」

 代わりに答えたのは、ジェイクでした。

「異論はありません」

「だな」

 試験官二人とジェイクが並んで立ちます。

 受験者たちは皆、中央に移動しました。全員が移動したのを確認してから、試験官が口を開きました。

「今回の実技試験。合格者は一人、シア」

 今、私の名前が……合格したんだよね……本当に、合格したの、私。

「何、呆けてる?」

 ジェイクが私の頭をポンポン叩きます。

 気が付くと、受験者は誰一人いませんでした。

「……信じられなくて」

「あれだけのことをしたのにか?」

 強面だけど、ジェイクってよく笑う人ですね。

「何故、俺が冒険者だと気付いた?」

「臨戦態勢をとったことに気付いていたから。普通は、後ろに手を回したしか思わない。それに、タイミングがよすぎた。あとは――」

「まだあるのか!?」

 被せ気味に、冒険者が言います。

「ジェイクと戦う時、明らかに手を抜いていた」

 私がそう答えると、冒険者は頭を抱えて座り込みました。

「まだまだだな、キョウ」

 この人キョウっていうのですね、覚えときましょ。

「この子、規格外すぎますよ」

 規格外? 私が?

「いいじゃないか、規格外。じゃあ、行こうか、シア。ギルマスが待っている」

 私は三人の試験官に案内されて、私は階段を上り一番奥の部屋に向かいます。途中、やたら注目されましたね。

 ジェイクはノックもせずにドアを開けます。

 あれ? 誰もいない。

「さすがの規格外もわからなかったか。アシュリッタ冒険者ギルドにようこそ。歓迎するぜ、シア。俺がこの支部のギルドマスターだ。宜しくな」

 ギルマスの机にもたれながら、ジェイクはいたずらっ子のように笑います。

「…………ジェイクがギルドマスター」

 え~~!! ということは、ギルドマスターが、試験官にまぎれて実技試験に参加したってことですよね。手も足も出ないわけですよ。

 あ~でも、ほんとに楽しかったです。




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