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第三章 学園に入学しました
悪役令嬢にも色々種類があるそうです
しおりを挟む「アン、悪役令嬢って、完全な当て馬的ポジションのことなのね!! なら、私は悪役令嬢ではありませんわ。だって、主人公の恋路を一切邪魔してませんから、絶対当て馬にはなりませんわ。それに、好意を抱いているわけでもないから、意地悪もしていないし。面倒だから、接触しないように注意もしてます。そんな私が、悪役令嬢なわけないでしょ!!」
朝、登校してきたアンに、私は挨拶もそこそこに文句を言いました。
悪役令嬢がどういうものかわからなかったので、自分で調べることにしたの。恋愛小説内に登場する人物だということは知っていたので、今一番売れている悪役令嬢物を読みました。
いまいち、面白いとは思えない内容でしたわ。突っ込みどころがあまりにも多すぎて、感情移入ができなかったからです。これなら、冒険小説の方が何十倍も面白くて楽しいですわ。
「当て馬って……何を読んだか想像できるわね。女主人公に嫉妬して、意地悪して、全てを失うパターンのものを読んだのね。でもね、嫉妬や意地悪はなしに考えて、婚約者がしたことってどう思う?」
アンが質問してきました。
「最低最悪、非常識な方だと思いますわ」
勿論、間髪入れずに答えます。悪役令嬢が階段から女主人公を突き落としたことは許せないことですが、そこまで追い込んだのは、間違いなく婚約者と女主人公です。
「なら、女主人公は?」
「婚約者に手を出す、恋愛脳のお花畑かしら。どんな理由があっても、婚約者がいる人に手を出してはいけないし、もし恋愛関係になったのなら、手順を踏めばいいのでは」
それが最低限の礼儀であり、婚約者に対しての誠意ですわ。
「手順を踏まない相手なら?」
「注意するか、見捨てるかですね」
「つまり、シアが読んだのは、注意しても聞かなくて、それでも見捨てられなかった悪役令嬢ものなの」
そうアンに指摘されて理解できましたわ。
「悪役令嬢にも種類があるってことね」
「そう。まぁ物語と現実は違うし、見捨てられない気持ちは、貴族社会ではあまりわからないけどね。でも、中には悪役令嬢が邪魔で冤罪を吹っ掛けてくるのもあるわよ。反対に、悪役令嬢に論破されて返り討ちされてるんだけどね。まさに、シアが地でやってるやつじゃない?」
そう言われると、そうかもしれませんが。なんか釈然とはしません。それに、今までされたことを思い出して、私は首を傾げます。
「……あれ、冤罪と言えますか? ただ、いちゃもん吹っ掛けられただけだけど」
「大まかに分類したら、あれも一つの冤罪だわ。だって、レラージュ様の所に無理矢理連れて行って、跪かせて謝らせようとしたんだし」
まぁ、確かにそうだけど。
「あまりにも、お粗末過ぎましたわ」
失笑ものですね。
「でも、抗議文送ったんでしょ」
「一応ね。速攻、謝りに来ましたわ」
届いたその日にね。コンラッド公爵家の力ですね。
「でも、学園には来ているようね」
不愉快そうに、アンは言います。淑女の顔が残念なことになってますわ。
「ただの待ち伏せですからね。捕まってもいませんし」
レク様の件のニアラさんと同じですね。
あれ以降、さすがに待ち伏せ攻撃はしなくなりましたが、それでも愉快な仲間たちは一緒に行動しているようです。遠巻きにされてますね。だからか、益々、絆が深くなった感じでしたわ。一応、遠目で確認しましたから。
「明日から、その中にレラージュ様も加わるのよね」
げんなりした表情のアンに、私は苦笑しながら答えます。
「でしょうね。分厚い抗議文送ってくるくらいだから、退く気も、考えを改めることもないでしょう」
「……抗議文。へぇ~それ、初耳だけど」
アンの声が一気に低くなります。
言ってなかったかしら。アンにグイッと詰め寄られて、少したじろいでしまいます。
特に隠すことでもないので、話そうと口を開き掛けた時、タイミング良くチャイムが鳴りました。
「ランチで詳しく聞くから」
ランチの話題は抗議文の話で決まりですね。
今日はいつもより日差しが強いので、外ではなく、食堂内でランチを取ることにしました。
「それで、詳しく聞かせてくれる?」
食後のコアを飲んでいると、アンが切り出します。
「ニアラさんが、停学中のレク様とリーナ様に泣き付いたようです」
「それで?」
アン、声低いですわ。
「内容は、斜め上のものでしたわ。友だち想いの気持ちが少し暴走しただけで、大袈裟じゃないかとか。もう少し、寛容になれないのか、優しい気持ちになれないのかとか……あとは、我が儘が過ぎるとか、そのままだと、将来困るのは私だとか……諸々合わせて、十枚の傑作でしたよ」
途中で読むのがしんどくなって、何度か放り投げようとしましたけどね。
「……マジで?」
アンとシンク様はドン引きしてます。
「大マジで。なんなら、読みます? 明日持って来ましょうか?」
証拠品として保管してますから。本音は燃やしたいけど。
「いや……いいわ。胸焼けしそう。それより、ニアラ、あの女と繋がってたのね」
「仲良く、王都で腕を組んで、ピンクのお菓子を複数買っていましたよ。買い終わったら、レラージュ伯爵家に向かってましたわ。焼き菓子までピンクにこだわるって、徹底してると思わない?」
その時のことを思い出すと笑えますわ。
「……尾行したのね」
私は小さく頷きます。
「前から気になっていたので。分裂したと思えるほど似通ってましたし……どうやって確かめようか思案していたら、都合よく馬車に一緒に乗るのを見掛けまして、これ幸いと行動に移りましたわ。さすがに、レラージュ伯爵家の中にまで入って確かめてはいませんけど」
買っていたお菓子の数で推測できますよね。
「じゃあ、アレが二人いるんだ……」
心底げんなりした様子で、アンは力なく呟きます。
「驚きですよね。あんな特殊な人種が、一定数いるなんて」
「いすぎでしょ!!」
アンに突っ込まれましたわ。
確かに多いですよね。アシュリッタ王国は、教育レベルが低いわけではありませんのに。大陸内では上位に位置しているはず。
「……ですね。これ以上、増殖しないことを祈りますわ」
あえて、口にはしませんでしたが、恋愛小説に感化された人とかいないですよね。愉快な仲間たち以外に。感化されないと、悪役令嬢とか叫びませんもの。
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