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第一章 これって異世界転移だよね
第一話 忌み子は最後もぼっちです
しおりを挟む日本の暦で言うと、五年以上前になるかな。なんせ、こっちの世界の五倍の速さで時が流れてるから。うん。それぐらい前になると思う。
五年前の一月十一日、私、千葉睦月は高熱が原因で死んだ。
もう一回言うけど、確かに死んだんだよね。さすがに最後は苦しかったけど、間違いなく死んだよ。
十四歳になったばかりだったかな。名前で分かるでしょ。
死因?
それは分かんない。なんせ、病院には行ってなかったからね。
たぶん……これは想像だけど、インフルエンザが原因じゃないかな。双子の兄が一週間前に罹って学校を休んでたからね。時期的にみて、移ったんだと思う。
インフルエンザって危険な病気だけど、適切な治療をしたら危険じゃなくなる病気だよね。
抗生物資を飲んで大人しく寝てたら治るし。ましてや、免疫力が低い子供やお年寄りでもないし、持病があったわけでもない。
でもまぁ……それは、あくまで普通でだよね。
そう意味では、私の生活環境は全然普通じゃなかった。
幼少時に起きたある事件が原因で、両親は〈私〉という存在に恐怖した。
結果、育児放棄。
それは年をおうごとに酷くなっていった。そういうのを、ネグレクトって言うんだよね。確か。
完全に何もしなくなったのは、死ぬ三年ぐらい前だったかな。それまでは、最低限のことはしてくれてたんだけどね。最低限だけど。
まぁ……色々、無理がたたったんじゃないかな。若くてもね。
ウィルスに体が耐え切れなかったんだと思う。栄養状態も悪かったしね。それが真実であり現実なんだと、今は素直にそう思えるようになった。そこまで割り切れるものかって、思われるかもしれないけど、諦めれば意外と割り切れるもんよ。
そうそう。私が死んだ日のことを少し話そうかな。
私が死んだちょうどその日、不幸にも祖父の通夜だった。
祖父が死んだことを知ったのは、学校に着いてから。それも赤の他人からだった。
「千葉。今晩、じいさんの通夜だろ。兄さんたちはもう帰ったぞ」と、先生から呆れた口調で言われて、私は始めてこの時祖父が死んだことを知った。
この時点で、体調は最悪だったよ。立ってるのもやっとな状態だった。
だったら、何で学校に来たのかって?
保健室で寝ようと思ってたんだよね。ベッドがあるから。でも、先生にそんなこと言われたら、保健室で寝ることは出来ないでしょ。しょうがないから、保健室で寝るのを諦めて、私は重い体を引きずるようにして家に帰ったんだよね。こんなことなら、始めから床で寝てた方がマシだったよって、後悔しながらね。
家に誰か残ってるなんて、始めから思ってもいなかった。
現に誰一人いなくて、家に入ろうとしたら、いつも置いてある場所に鍵が置いてなかった。慌てて置き忘れて行ったらしい。鍵はいつも兄がこっそり置いてくれてたからね。合鍵を作りたくてもお金がなかったから作れなかったし、正直助かってた。
だけど、こんな日に限って鍵はない。
当然、彼らが帰って来るまで私は家の中には入れない。
あ~~真冬の寒空の下で、何日も過ごすんだ……。
馬鹿でも分かる未来だよね。もう、笑うしかないよ。
縁側に座ると窓を背に崩れる。
もう限界だった。
体も、心も……何もかも。
とてもとても寒い筈なのに、段々寒さを感じなくなってきた。辛さもだるさも、次第に感じなくなっていく……。
…………逝く時も、一人なんだね。
全てを諦め掛けた、まさにその時だった。
体に力が入らなくて、ただ座り込んでいるだけの私の手の甲に、冷たいものがそっと触れたんだ。
私は空を見上げる。
重く暗い雲が空一面覆っている。ちらほらと雪が降り始めた。
雪が私に触れて溶けていく。
雪と同じ様に、私の命も少しずつ、だが確実に零れ落ちていった。
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