3 / 46
第一章 これって異世界転移だよね
第二話 沈んで行く少女と光の束
しおりを挟む声を出そうとしても、もう掠れた声しか出てこない。
零れ落ちる命を止める術を持たない自分が悔しかった。凄く、凄く、悔しかった。毎日繰り返される悪夢が早く終わることを、ずっと願ってた筈なのにね。いざその時が来たら、正反対の思いを抱いていた。おかしなもんよね。
だけどその思いは、強く、とても強いものだった。
生きたい!! このまま死にたくない!!!!
徐々に薄れて行く意識の中で、私は純粋に生きたいと願った。
ただ、生きたいと……それだけを、強く強く願った。
その時、何かが頭を過ったの。
それが何なのか、その時は分からなかった。後で分かるんだけどね。
反射的に、私は必死にそれに縋ろうとした。
動かない腕を、それでもやっとの思いで持ち上げ、何かを掴もうと手を伸ばした瞬間、何故だか分からないが、私の体は水中にあった。
水中なのに、その水は少しも冷たくなかった。
反対に生温かくて、まるで温水プールの中にいるようだった。その温かみは、私の冷えた体と心を温めてくれる。
体はピクリとも動かない。
だけどね、不思議と息苦しくなかった。
徐々に小さくなっていく水泡が、僅かに開いた目に映る。水面の光と反射してキラキラと輝いていた。とても神秘的で綺麗だった。沈んでるのは自分なのにね。
どんどん沈んで行く私の体。
沈むにつれ、水面の光も見えなくなった。次第に、水泡も見えなくなっていく。
…………どこまで、沈んで行くの?
自分のことなのに、どこか他人事のようだよね。
真っ暗になっていく視界に反して、不思議と、少しも恐怖を感じなかった。壊れた心は恐怖を感じないのかもしれない。麻痺してしまって。
……もう……どうでもいいよね…………私、頑張ったよね…………
本当なら苦しい筈なのに、あまりにも心地良くて、静かに目を閉じる。
意識が完全に途切れた。
この時、私は間違いなく死んだ。
人としての生を終えたの。
でもね、光が私を救ってくれたんだ。
光が私の周囲を優しく包み込む。
沈んでいた体が光に包まれ止まっている。脈が止まり死んでいた私は、当然それに気付かない。
力を失いぐったりと横たわる私の体を、光の束が上から通り抜けて行く。そして通り抜けた光の束は、今度は下から私の体を突き上げる。
その時だった。
微かに、ほんの微かだけど、光が見えたんだ。
それはまぎれもなく、消えていた灯りが灯った瞬間だった。
…………な……にが……お…きた…の………………
そう疑問を抱いた同時に、肺に大量の空気が流れ込んできたの。不思議だよね。さっきまで死んでたのに。
ごぼっごぼっと、口から大量の泡が吐き出される。苦しくて、苦しくて、もう見えなくなった水面に必死で腕を伸ばした。
「ーー誰か……誰か助けて!!!!」
声にならない叫び声を上げる。
今まで心地良かった暗闇がその瞬間、恐怖に変わったの。恐怖から逃れたくて、私は尚も必死に手を伸ばし続けたよ。
その度に空を切る手。
息が出来なくて、再度意識が途絶えようてした時だった。
何か温かいものが、私の腕を強く掴んだ気がしたの。
☆★☆
ある日の深夜。
寝ずの番をしていた星読みの一人が、星の異変に気付いた。
突然、それは起きた。
星の一つが虹色に輝きだしたのだ。
その輝きはまるで太陽のようだった。闇夜が昼のように明るくなり、大地を、山を照らしている。
暫く輝くと、虹色の星は北の方角へと流れていった。
二百年程前にも、これほどの輝きはないが、同じような現象が起きたと文献に記載されていたのを、星読みは知っていた。
長い間……星読みたちは、その現象が再び起きるのを待っていたのだ。
興奮が抑え切れないまま、星読みは【常世】の五聖獣の元にある報せを送った。
【神獣森羅、北の大陸に降臨する】とーー。
1
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる