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第四章 銀色の少女
第二話 銀色の狛犬(2)
しおりを挟むサス君が側にいる。
ただそれだけのことなのに……。
一人じゃないってことが、こんなに心強く思える日が来るなんて、少し前の自分なら思いもしなかったよ。
だからかな、こんな状況でも、パニックを起こさないでいられるのは。
「どうして、サス君がここに? 分身って?」
矢継ぎ早に尋ねる。
「この前あげた御守りの中に、僕の気を練り込んだ体毛を入れていたんです。何かあった時のために」
そういえば……この前、サス君から御守り貰ったね。可愛い桜柄の小袋の。
無くしたり落としたら困るからって、小町さんに紐を貰って首から掛けるように加工した。
(この御守りに、そんな力があったんだ……)
自然と御守りを手に取り視線を落とす。
そんなことが出来るサス君の力に、改めて驚いた。だがそのことよりも、気になることがあった。
ーー何かあった時のために?
サス君の言葉に引っ掛かった。まるで、何かが起きることを予想していたかのような言い方だった。もしかして、知ってたの……?
「どういう意味?」
そのまま率直にサス君に尋ねてみた。
「もしもの時のために用意したもので、まさか、役に立つ日が来るとは思いませんでした。渡したことに深い意味は全くありませんよ」
サス君の声は乱れることなく平然と答える。それが却って怪しい。
何か隠してるーー。
直感的にそう感じた。考えすぎかもしれない。
しかし、現に誘拐されてここにいる。
ただの勘だけど、サス君は私が誘拐された理由を知っているような気がした。サス君だけじゃない。伊織さんも小町さんも陣さんも、皆知っているのかもしれない。ふと……思った。
何度も店から出られないように言ってたしね。それは皆に、繰り返し言われたことだった。
(風邪引いたらいけないからだと思ってたけど……もしかして、こんか事態が起きる可能性があったから……?)
疑念は、徐々に確信へと変わっていく。
それでも……サス君や伊織さん、皆に対しての信頼が薄まることはなかった。今私があるのは、皆のおかげだから。
皆の無償の愛情で、私は私を取り戻せたのだから。
「睦月さん。外はまだ夜更けです。私が側にいますから、安心して寝て下さい」
サス君はいつもと変わらない優しい声だ。
自分が今何処にいるかさえ分からない。でも、全然怖くないよ。サス君が側にいてくれるから。
サス君の声に促されるように、横になるとソッと目を閉じる。疲れていたのか、直ぐに睡魔が襲ってきた。
(考えるのは、明日でいいや……)
寝息をたて始めた私にサス君が語り掛ける。
「睦月様。この私が命を掛けて護りますから、安心して下さい」と。
サス君の声が私に届くことはなかった。
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