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二年生になりました
第九話 大型犬に懐かれた気分ですわ
しおりを挟む「……あれ、何ですの?」
思わず口元を引き攣らせながら呟いてしまいましたわ。隣にいたリーファも苦笑しています。
「自分が憧れていた人物が、思ってた方と違うから混乱してるのかも」
「混乱ね……でも混乱したからって、あれはないでしょう。ほんと頭痛いわ。暫く学園休もうかしら」
本気です。
「それはお薦め出来ないわね。登校したら何言われるか分からないわよ」
確かに十分ありえますね。それでなくても、変に目立っていますのに。
私が後ろを振り返ると、途端に引っ込む大きな影。勿論その影の正体は、ケルヴァン殿下です。
朝からこうなのです。
朝の挨拶をした時も視線を外され、授業中も視線を感じて目を上げると、ケルヴァン殿下が私を見ていることが多くて、視線が合うと慌てて逸らされます。私が移動する時は、距離をおいて付いて来ます。まぁ取っている教科が一緒なので、別にストーカーでもないのですが、正直、ウザいですわ。気持ち悪いですわ。なので、
「……ケルヴァン殿下。一緒に行きませんか?」
付いて来られるより、よっぽどマシですからね。リーファは「仕方ないわね」と言ってくれてますし。
「いいのか……?」
何故訊いてきますの? こっちから誘っているのに。
「構いませんよ」
そう答えると、照れたような笑みを浮かべながらケルヴァン殿下が物陰からひょっこりと出て来ます。
大柄な男がしても、可愛くありませんから、それ。
一緒に別の教室に移動することになりましたが、妙な緊張感で会話が続きません。というか、会話が出来ません。
後ろをチラリと見ると、嬉しそうにニコッと笑います。
なんか……大型犬に懐かれた気分ですわ。ブンブンと左右に振れる尻尾が見えますわ……
話したのは失敗かもしれません。選択間違えましたわ。
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