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また、乙女ゲームですか
第二話 同感です
しおりを挟む早速、ケルヴァン殿下と従者君の分の魔法具を用意したので渡しに来ましたわ。
勿論、シオン様の前で渡しますよ。
まぁ、教室でも渡せましたけどね。特に勘違いする人もいませんし。普通に渡せますわ。なんせ、全員エレノアのことを知ってますからね。その予防と言えば皆納得しますよ。じゃあ、何故教室で渡さないのか? って思いますよね。それはケルヴァン殿下が余計なことを砦で言いそうだからです。言いそうじゃなく、まず間違いなく言いますね。
「セリア様に貰ったんです」と。それも嬉しそうに。目に見えますわ。
さすがに、もうケルヴァン殿下に対して、シオン様も勘ぐったりはしないと思いますが、でも、面倒くさいことになるでしょうね。抱っこ攻撃と匂いクンクン攻撃は酷くなるでしょうね、絶対に。
はぁ~~。
溜め息が出ますわ。
もうこれ以上、砦の皆に生温かい目で見られたくないのです。
どっちにせよ、ケルヴァン殿下と従者君に渡した途端、多少の攻撃はくらうと思いますが、シオン様の目の前で渡せば、骨折レベルで済むでしょう。もし教室で渡したのなら、内臓破裂か全身複雑骨折でしょうね。冗談じゃなく。
ついでに言うなら、ケルヴァン殿下と従者君もそれなりの物理攻撃を受けるかも。しごきという名の。
精神的ダメージか肉体的ダメージかの差ですね。
さてと……勇気を出して渡すとしますか。
「セリア!! 来たのか。もう終わるから、そこで待っててくれ」
誰よりも早く私の存在に気付いたシオン様が、とても爽やかな男らしい笑顔を向けてきます。
本当に格好いいですわ。最高です!! でも、今は心を鬼にしないと。フラフラとシオン様に吸い寄せられてしまいますわ。
「その前に、ケルヴァン殿下と従者君にお話があるのです。宜しいですか? シオン様」
そう告げた途端、シオン様の眉間に深い深い皺が寄ります。
「ケルヴァンたちにか?」
低い声と同時に発せられる殺気。私に向かってではありませんよ。当然、ケルヴァン殿下と従者君に向かってです。
あら、倒れもしないし震えてもいない。短期間でよく成長したわね。並のハンターでも、震えるぐらいだからね。
「ええ」
とはいえ、さすがに動けなさそうなので、私からケルヴァン殿下と従者君の側に行きます。
「シオン様。殺気を抑えて下さいませ。会話が出来ませんわ」
そうお願いして、渋々殺気を抑えてくれました。
「大丈夫ですか? 二人とも」
途端に激しくむせる二人に私は声を掛けます。二人が落ち着くまで待ちます。ほんとに、シオン様は大人げないですよね。
「…………もう大丈夫だ。もしかして、兄上から連絡があったのか!?」
「いえ。違います」
「そうかぁ……」
分かりやすく気落ちするケルヴァン殿下。
「期待を持たせてすみません。ケルヴァン様」
「いや。俺が勝手に期待しただけだから、セリア様が気にすることはないぞ。こっちこそ、すまなかった。で、何か用か?」
「ええ。実はケルヴァン殿下と従者君に渡したい物があるのです」
背後からシオン様の圧が凄いです。無視して進みましょう。
「何だ?」
「渡したい物ですか?」
ケルヴァン殿下と従者君が尋ねます。
「これです」
精神関与、特に魅了から身を護る魔法具を取り出しました。ブレスレットの形になっています。
「これは、精神関与、特に魅了から身を護る魔法具ですわ」
二人とも首を傾げています。でしょうね。
「実は、今年入学して来た学生の中に、聖教会のシスターがいます。彼女の周りが少しきな臭いので、念のために。常に身に着けて下さいませ。絶対に外さないで下さい」
そう言いながら手渡すと、躊躇うことなくケルヴァン殿下と従者君は身に着けました。
信用してくれるのは嬉しいのですが、少しは疑いましょうよ。
「分かった」
「分かりました」
どことなく嬉しそうなケルヴァン殿下と従者君。背後からの圧は益々強くなってきます。
「一つ訊いてもいいか? 何で、聖教会のシスターが学園に留学して来たんだ? 俺たちのこと穢れた奴って言ってた奴らが」
ごもっともな疑問ですよね。
「布教のためだそうですわ。少しでも穢れを浄化したいんじゃないですか?」
そう答えると、ケルヴァン殿下と従者君の顔が険しくなります。ほんと、似た反応をしますわね。
「迷惑な話だな」
同感です。
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