婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

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また、乙女ゲームですか

第一話 見たことがある光景ですね

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 二年に進級した途端に、ちょっとした問題が起きましたけど、それも、それなりに落ち着くとこに落ち着きました。解決はしてませんけどね。中途半端感はいなめませんが。でもまぁ、よかったですわ。

 屑国のエルヴァン王国は内部紛争の真っ定中ですけどね。我がコンフォート皇国は、ケルヴァン殿下以外の火の粉は被ってないので、それなりに平和ですよ。

 でも……学園内はそうでもなさそうですね。

「…………ねぇ、リーファ。この場面、以前見た気がするのは、私の気のせいかしら?」

 久し振りにリーファと二人、学園のカフェで紅茶と新作ケーキを楽しんでいたら、一人の女子学生と、それを取り囲んでいる男子学生の一団が私たちの前を通り過ぎて行きます。

 淑女らしくありませんが、口元が引きつりましたわ。

「……そうね。以前見た光景とそっくりね」

 リーファはうんざりした顔で答えます。

 以前、学院からの留学生の中にエレノアという女子学生がいましたの。彼女とその取り巻きたちには、ほとほと手を焼きましたわ。リーファもね。

「新入生かしら? そういえば、聖教会縁の方が入学したと聞いてますが……彼女がそうみたいですね」

 シスター見習いと聞いてますが、全く違うようですね。シスターというより、結婚相手を見付けに来たみたいですわね。ここは勉強をする場所なのに、嘆かわしいですわ。にしても、一応、問題を起こす可能性が高い生徒を、前もってチェックしていてよかったですわ。

「そもそも、聖教会の人間が、何故学園に来たの?」

 リーファの疑問は尤もですわ。

 だって、聖教会の教えを我が国は信仰していませんもの。旧グリフィード王国も。周辺諸国も。

 反対に、毛嫌いしていますわね。当然ですわ。だって、聖教会の者たちは、魔物討伐で収益を得ている私たちを、穢れた者と呼んで蔑んでいますからね。なんでも、前世の行いが悪いから魔物と戦う羽目になったとか。嫌って当たり前ですわ。

「何でも、私たちにも救いの手を差し伸べるために留学されたとか。布教目的ですね」

 ほんと、呆れた留学動機ですわ。

「はぁ~~何それ? いらんお節介だわ」

「全く、同感ですわ」

「そもそも、何で試験に合格したのよ? 面接で落とさなかったの?」

 当然の疑問ですよね。

「筆記試験がほぼ満点だったとか。それに、治癒魔法がずば抜けていたそうですよ。なので、面接が最低点でも合格出来たみたいですね」

 完全に入学試験の盲点を突かれましたね。

「で、さっそく、布教活動に勤しんでいるわけね。特に男子学生ばかりだけど」

 確かに。苦笑が漏れます。

「それも、高位貴族ばかり。ユリウス殿下は大丈夫ですか?」

 幸い、まだ一年生しか声を掛けていないようですけど、あの勢いなら、上級生にも声を掛けそうですわ。

「大丈夫だと思うけど、念のために注意するよう伝えとくわ。勿論、もするようね」

 さすがリーファですわ。よく分かってらっしゃる。こちらも、後二つ程用意をしないといけませんね。誰の分かって? 勿論、ケルヴァン殿下と従者君の分ですわ。一応、王族ですからね。クラン君にも付けるよう言っとかないと。念には念をいれて。

 布教活動をなさるのはご自由ですが、度を超すならば、速やかにご退場頂きますよ。聖教会のシスターさん。



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