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二年生になりました
第二十九話 見えていましたよ
しおりを挟む「…………それで落ち着いたのは分かった。分かったが、どうして、ここに奴がいる?」
不機嫌を全く隠そうともしてませんね、シオン様。地を這いそうな低い声で尋ねてきます。
奴とは、勿論ケルヴァン殿下のことだ。
大型犬の彼は私の後ろで尻尾をブンブン振っています。隣には従者君。従者君は真っ青な顔で子鹿のように小刻みに震えていますね。従者君の反応が普通なんですけどね
「剣を学ぶには実戦が一番ですからね」
私はニッコリと微笑みながら答えます。
「で、何故、セリアと一緒なんだ?」
実戦訓練を、ここで行うことにに関してしいないみたいですね。私と一緒というのが、シオン様にとって許せないことのようです。
愛されてますね。
「コンフォ伯爵。貴方が心配するようなことはないので、安心してもらいたい。
私がセリア様に抱いているのは、尊敬と友愛。謂わば、師匠と弟子。そこに愛情などありません」
いやいや、それってどうなの? 私たち同じ年ですよね。薄々分かっていましたが、言葉にされると中々危ないですよね。隣にいる従者君も大きく頷いていますし。……私、従者君に懐かれるようなこと言いましたか? 全く記憶にないのですが。
「……セリア様?」
あ……更にシオン様の機嫌が悪くなりましたわ。
「クラスメートで友人ですから」
(【訳】後ろめたいことなんて一切ありませんからね。これ以上の追求は受け付けませんよ)
ニコッと笑いながら圧を掛けます。勿論、圧の意味も気付いていることでしょう。
「……そうか。でも、セリアに付いて来れる程の実力があるのか?」
(【訳】折角のデートを邪魔するなら、それ相当のお礼をしなくてはいけないな)
かなりご立腹のようです。このままでは、ケルヴァン殿下と従者君は、明日を五体満足で迎えることが出来なさそうです。
「ならば、砦の兵士と一緒に訓練を受けてみて、実力を判断すればよいのでは?」
(【訳】私もシオン様とのデート楽しみにしてますの。邪魔者はご退場頂きましょう)
「ちょうど、兵士の訓練が始まるところだ。一回、参加してみたらどうだ? 自分の実力が分かるだろう」
(【訳】場は用意してやった。さっさと失せろ!! 邪魔だ)
ケルヴァン殿下と従者君には、全く副音声は聞こえていないでしょうね。言葉通りでしか受け取らない筈。
「よそ者の俺が参加してもいいんですか!? ありがとうございます!! コンフォ伯爵」
とても感謝してますね。シオン様にも尻尾振ってますよ。
本当、脳筋だけど、今まで会った脳筋とは全く違いますね。ああ……比べたらいけませんね。今まで会ったことがある脳筋は、ほぼ屑の部類に属していましたから。ケルヴァン殿下のような、愛されキャラではありませんでしたわ。
素直で、人の裏を読み取るのが苦手なタイプ。王族内で、真っ先に利用され、失脚させられるか殺されるタイプですね。まぁ実際、そうされてましたけど。でも案外、こういう人物が一皮剥けば一番怖いんですよ。
そんなことを考えていると、シオン様の目が一段と鋭くなっているのに気付きました。
私がケルヴァン殿下のことを考えているのも許せないようです。口には出しませんけどね。目が雰囲気が雄弁に語ってますよ、シオン様。
そうこうしているに、今まで遠巻きで見ていた兵士の一人が、シオン様と私に一礼をし、ケルヴァン殿下と従者君を連れて行きました。
ちょうど私の位置から見えてましたよ。
シオン様がちょうど兵士の訓練が始まるって口にした時、裏で皆でじゃんけんを始めたのを。
☆☆☆
【第十四回恋愛小説大賞】で激励賞を頂きました。
読者の皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございましたm(_ _)m
これからも、頑張って書いていきますね(。•̀ᴗ-)✧
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