婚約破棄ですか。別に構いませんよ

これって、乙女ゲームのサブストーリーでしょうか

侍女の護衛日誌

　本日は快晴です。

　気温も暑過ぎず、まさに行楽日和。デート日和です。良かったですね、セリア様。日頃頑張っておいでなので、神様からのプレゼントですね。

　シスターの件も漸く片付き、主であるセリア様と婚約者であるコンフォ様が、二人仲良く屋台デートを楽しんでおられます。

　私ですか？　私は影から御二人を護衛している、しがない侍女の一人ですわ。

　侍女が護衛？　そもそも護衛が必要か？　まぁ確かに、私よりもお強い御二方ですが、世の中には万が一ということがあるのですよ。盾ぐらいにはなる自信はありますわ。貴方もでしょ。セリア様もコンフォ様もお許しなさらないと思いますが。

　まだ何か？　えっ、ペンと紙を持っての護衛など聞いたことがないと言われましても、これが私たちにとっての護衛スタイルなのです。次は貴方も持ってもらいますよ。分かりましたか。嫌ならば、その剣を置いて、さっさとこの場から立ち去りなさい。私は忙しいのです。休日のセリア様を目に焼き付けておかなければならないのですから。

「シオン様。これ、とても肉厚で美味しいですわ」

　セリア様が満面な笑みを浮かべて、愛する御方と戯れておいでです。

　セリア様、ナイスですわ。思わず、ガッツポーズをとってしまったわ。だって仕方ないでしょ。自分が食べていた串をコンフォ様に差し出たんですよ。真っ赤になるコンフォ様を幸せそうに見詰めるセリア様。本当にお幸せそうで、私は絶対にその幸せを守り通してみせます。ええ絶対に。そして引退する時は、セリア様に名付けをしてもらうのです。スミスのように。

　それにしても、屋台で売られている貝の串焼きを頬張る姿は、美の女神を有に超える美しさと可愛さを兼ね備えていらっしゃります。そう思いませんか？　あぁ……一生、その姿を見続けても飽きませんわ。

　そうそう。セリア様は意外と貝などの庶民料理を好まれます。皇女殿下なのですが。そこが、セリア様の魅力の一つですね。こっそりと、コック長に報告しなければ。貝も仕入れないといけませんね。早速メモしないと。

　何引いてらっしゃるのですか？　あぁ、コンフォ様のデレ具合にですか……砦での執務姿しか知らない方にとったら、かなり衝撃的な光景ですね。犯罪臭がするというか……まぁそれは慣れですね。慣れるしかありません。

　確かに犯罪臭はしますが、コンフォ様はセリア様に対して紳士的で且つ、情熱的ですよ。溺愛されてますわ。デロ甘ですわ。側近の方たちでさえも、稀に砂糖を吐いてますからね。

　そうそう、ご存知ですか？　今日が三か月振りの二人揃っての休みだと。それもかなり無理をして時間を作ったものなのだと。

　なので、御二方の幸せを、貴重な逢瀬の時間を阻もうとする輩は、私たちにとって敵なのです。徹底的に排除すべき存在です。暗殺者と匹敵する悪なのです。

　そう。あの方々のような恥知らずの輩をね。

　セリア様から恩情を与えられていながらも、また性懲りもなくこの場に留まり、コンフォ様に色目を使う盛りのついた雌猫は特にね。

　おや、どうしました？　震えてますね。風邪ですか？　自己管理はキチンとして下さいね。……騎士様、分かってますね。あの輩を御二方の視界に入れてはいけません。もし入れたら、これですからね。

　自分の首を軽く叩きます。益々、騎士様は震えました。激しく首を縦に振っています。ちょっと心配ですが大丈夫でしょう。

　宜しいですか。では、速やかに排除致しましょう。

　これが最も大事な護衛の仕事ですから。